【2025年4月改正】「子の看護休暇」に関する育児・介護休業法の改正内容(対象となる子の範囲の拡大、取得事由の追加など)を詳しく解説
- 1. はじめに
- 2. 「子の看護休暇」とは
- 3. 子の看護休暇の対象となる子の年齢【改正点】
- 4. 子の看護休暇の取得日数(改正なし)
- 5. 子の看護休暇の取得事由【改正点】
- 5.1. 子の看護休暇の取得事由(現行法)
- 5.1.1. 【取得事由1】
- 5.1.2. 【取得事由2】
- 5.2. 子の看護休暇の取得事由の追加【改正点】
- 5.2.1. 【取得事由3】
- 5.2.2. 【取得事由4】
- 6. 子の看護休暇の取得単位(改正なし)
- 6.1. 子の看護休暇の取得単位
- 6.2. 1時間単位の取得による中抜け
- 7. 子の看護休暇の申請方法・申請期限(改正なし)
- 7.1. 申請方法
- 7.2. 申請期限
- 8. 子の看護休暇を取得した日の賃金(改正なし)
- 9. 労使協定により除外できる者【改正点】
- 9.1. 法改正前(現行法)
- 9.2. 労使協定により除外できる者の縮小【改正点】
- 9.3. (参考)1時間単位で取得する子の看護休暇(改正なし)
- 10. 育児・介護休業法に違反した場合の罰則(改正なし)
- 11. 【参考】子の看護休暇の法改正の履歴
はじめに
育児・介護休業法が改正され、2025(令和7)年4月1日(一部は同年10月1日)に施行されます。
改正内容の一つとして、子の看護休暇制度が見直され、従業員の権利を拡大する方向で改正されました。
本稿では、育児・介護休業法が定める子の看護休暇について、制度の基本的な内容を踏まえながら、法改正の内容を詳しく解説します。
なお、法改正を受けて変更が必要となる、社内規程(育児・介護休業規程など)の規定例(記載例)については、次の記事をご覧ください。
【2025年4月改正】「子の看護休暇」の改正を踏まえた育児・介護休業規程の規定例(記載例)を解説
「子の看護休暇」とは
現行法(2025(令和7)年3月31日まで適用される育児・介護休業法をいう。以下同じ)に基づくと、「子の看護休暇」とは、小学校入学前の子を養育する従業員について、病気・けがをした子の看護のため、または子に予防接種・健康診断を受けさせるために取得する休暇をいいます(現行の育児・介護休業法第16条の2)。
なお、今回の法改正により、子の看護休暇の取得事由が追加されることに伴い、制度の名称が、「子の看護等休暇」に変更されます(本稿では、現行法に基づき、「子の看護休暇」と記載します)。
子の看護休暇の対象となる子の年齢【改正点】
子の看護休暇の対象となる子の年齢は、現行法では、「小学校就学の始期に達するまでの子」とされています(現行の育児・介護休業法第16条の2第1項)。
法改正により、対象となる子の年齢が延長され、「9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子(小学校第3学年修了前の子)」と定められました(改正後の育児・介護休業法第16条の2第1項)。
【子の看護休暇の対象となる子の年齢】
現行法 (2025(令和7)年3月31日まで) | 法改正後 (2025(令和7)年4月1日以降) |
小学校就学の始期に達するまでの子 | 9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子 (小学校第3学年修了前の子) |
子の看護休暇の取得日数(改正なし)
子の看護休暇は、対象となる子が1人の場合は、1年度につき5日を限度として取得することができ、対象となる子が2人以上の場合は、1年度につき10日を限度として取得することができます(育児・介護休業法第16条の2第1項)。
1年度につき10日を限度として取得できるのは、子が2人「以上」の場合と定められているため、例えば、対象となる子が3人以上いる場合でも、子の看護休暇を取得できる日数は、あくまで10日が限度となります。
なお、「1年度」とは、会社が特に定めをしなければ、原則として、4月1日から翌年3月31日までの1年間をいいます(育児・介護休業法第16条の2第4項)。
子の看護休暇の取得事由【改正点】
子の看護休暇の取得事由(現行法)
子の看護休暇の取得事由は、現行法では、次のとおり定められています(現行の育児・介護休業法第16条の2第1項)。
現行法が定める取得事由
- 負傷し、もしくは疾病にかかった子の世話を行うため【取得事由1】
- 疾病の予防を図るために必要なものとして、厚生労働省令で定める子の世話を行うため【取得事由2】
【取得事由1】
病気やけがの種類、症状の重さなどについて、法律上の制限は特にありません。
例えば、短期間で治癒する軽い病気やけがであっても、看護が必要であれば、子の看護休暇を取得することができます。
【取得事由2】
「疾病の予防を図るために必要なものとして、厚生労働省令で定める子の世話」とは、厚生労働省令により、「当該子に予防接種または健康診断を受けさせること」と定められています(育児・介護休業法施行規則第32条)。
子の看護休暇の取得事由の追加【改正点】
法改正により、子の看護休暇の取得事由が拡大され、次の2つの事由が追加されました(改正後の育児・介護休業法第16条の2第1項)。
法改正により追加される取得事由
- 学校保健安全法第20条の規定による学校の休業、その他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事由に伴う子の世話を行うため【取得事由3】
- 子の教育もしくは保育にかかる行事のうち、厚生労働省令で定めるものへの参加をするため【取得事由4】
【取得事由3】
「学校保健安全法第20条の規定による学校の休業」とは、学校の設置者が、感染症の予防上必要があると判断するときにおいて、学校の全部または一部について行う臨時休業をいいます。
例えば、感染症の流行に伴い、学級閉鎖があった場合などが該当します。
また、「これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事由」とは、厚生労働省令により、「学校保健安全法第19条の規定による出席停止」、および、「保育所等その他の施設または事業における、学校保健安全法第20条の規定による学校の休業に準ずる事由、または学校保健安全法第19条の規定による出席停止に準ずる事由」と定められています(改正後の育児・介護休業法施行規則第33条第一号、第二号)。
(参考)学校保健安全法
(出席停止)
第19条 校長は、感染症にかかっており、かかっている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令(※)で定めるところにより、出席を停止させることができる。
(臨時休業)
第20条 学校の設置者は、感染症の予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる。
(※)学校保健安全法施行令(政令)
(出席停止の指示)
第6条 校長は、法第19条の規定により出席を停止させようとするときは、その理由及び期間を明らかにして、幼児、児童又は生徒(高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。以下同じ。)の生徒を除く。)にあってはその保護者に、高等学校の生徒又は学生にあっては当該生徒又は学生にこれを指示しなければならない。
2 出席停止の期間は、感染症の種類等に応じて、文部科学省令で定める基準による。
【取得事由4】
「子の教育もしくは保育にかかる行事のうち、厚生労働省令で定めるもの」とは、厚生労働省令により、「入園、卒園または入学の式典その他これに準ずる式典とする」と定められています(改正後の育児・介護休業法施行規則第33条の2)。
「式典」とは、一般に、行事ごとを行う式を意味しますので、例えば、運動会や授業参観などの日常的な学校行事に参加する目的で、子の看護休暇を取得することはできないものと解されます。
【子の看護休暇の取得事由】
現行法 (2025(令和7)年3月31日まで) | 法改正後 (2025(令和7)年4月1日以降) |
負傷・疾病の世話 予防接種・健康診断 | 負傷・疾病の世話 予防接種・健康診断 感染症の流行に伴う学級閉鎖など【追加】 入学式などへの参加【追加】 |
子の看護休暇の取得単位(改正なし)
子の看護休暇の取得単位
子の看護休暇は、1日または1時間単位で取得することができます(育児・介護休業法第16条の2第2項、育児・介護休業法施行規則第34条第1項)。
なお、子の看護休暇を1時間単位で取得する場合において、1日の所定労働時間に1時間未満の時間がある場合には、1時間未満の端数を1時間に切り上げる(例えば、所定労働時間が7時間30分である場合には、8時間とする)必要があります(育児・介護休業法施行規則第34条第2項)。
1時間単位の取得による中抜け
子の看護休暇を1時間単位で取得する場合には、始業時刻の最初から連続して取得するか、または終業時刻の最後まで連続して取得することとされています。
したがって、所定労働時間の途中で1時間単位の子の看護休暇を取得する(例えば、始業・終業時刻が午前9時から午後5時までの会社で、午後1時から午後2時までの間だけ休暇を取得するなど。いわゆる「中抜け」)ことは認められません。
子の看護休暇の申請方法・申請期限(改正なし)
申請方法
従業員が子の看護休暇の申し出をする際は、次の事項を会社に対して明らかにすることによって、行わなければならないとされています(育児・介護休業法第16条の2第3項、改正後の育児・介護休業法施行規則第35条第1項)。
申し出事項
- 申し出をする従業員の氏名
- 申し出にかかる子の氏名・生年月日
- 子の看護休暇を取得する年月日(子の看護休暇を1時間単位で取得する場合は、開始・終了時刻)
- 看護休暇の申し出にかかる子が負傷・疾病にかかっている事実、予防接種・健康診断を受けるために子の世話を行う旨、感染症に伴う学級閉鎖などに伴い子の世話を行う旨、入学式などの行事に参加をする旨
上記の申し出事項の4.について、取得事由の追加(法改正)に伴う変更があります(下線部分)。
なお、法律上は、書面で申し出る必要はなく、口頭で申し出ることは差支えありませんが、社内手続として申請書の様式や申請先を定めている場合には、当該社内手続に従うこととなります。
また、会社は、子の看護休暇の申し出があったときは、当該看護休暇の申し出をした従業員に対して、申し出事項の4.に掲げる事実を証明することができる書類の提出を求めることができるとされています(育児・介護休業法施行規則第35条第2項)。
申請期限
子の看護休暇には、申請期限は特に設けられていません。
なお、これと対比して、育児休業(1歳に満たない子を養育するために取得する休業)では、休業開始予定日の1ヵ月前までに申請することと定められています。
子の看護休暇を取得した日の賃金(改正なし)
育児・介護休業法は、子の看護休暇を取得した日(または時間)について、賃金を支給する義務を定めていないことから、原則して当該取得日(または時間)は「無給」となります。
賃金を支給するかどうか(有給か、無給か)は会社の判断によりますので、会社が子の看護休暇を取得した日(または時間)について賃金を支給する旨を定めない限り、子の看護休暇を取得した日(または時間)の賃金は支給されません。
労使協定により除外できる者【改正点】
法改正前(現行法)
子の看護休暇は、日々雇用される者を除き、原則として、すべての従業員が制度の対象となります。
ただし、会社は、従業員の過半数を代表する者(従業員の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合)との間で労使協定を締結することによって、次の者について、子の看護休暇の対象から除外することができるとされています(現行の育児・介護休業法第16条の3第2項)。
労使協定により除外できる者(現行法)
- 入社後6ヵ月未満の者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の者
労使協定により除外できる者の縮小【改正点】
法改正により、1.の「入社後6ヵ月未満の者」を廃止し、2.の「1週間の所定労働日数が2日以下の者」のみが労使協定による除外対象となります(改正後の育児・介護休業法第16条の3第2項、育児・介護休業法第6条第1項、育児・介護休業法施行規則第8条第二号、平成23年3月18日厚生労働省告示第58号)。
したがって、法改正後は、入社して間もない従業員であっても、子の看護休暇を取得することが可能となります。
なお、これと対比して、労働基準法が定める年次有給休暇は、原則として、入社日から6ヵ月が経過するまでは取得できません。
【労使協定により除外できる者の縮小】
法改正前 (2025(令和7)年3月31日まで) | 法改正後 (2025(令和7)年4月1日以降) |
入社後6ヵ月未満の者 1週間の所定労働日数が2日以下の者 | 1週間の所定労働日数が2日以下の者 |
(参考)1時間単位で取得する子の看護休暇(改正なし)
上記に加え、1時間単位で取得する子の看護休暇については、労使協定を締結することによって、一定の業務に就く従業員に限り、対象から除外する旨を定めることが認められています(育児・介護休業法第16条の3第2項)。
「一定の業務」とは、業務の性質または実施体制に照らして、1時間単位で子の看護休暇を取得することが困難な業務をいい、例えば、次の業務が該当するとされています(子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成21年厚生労働省告示第509号))。
1時間単位で子の看護休暇・介護休暇を取得することが困難と認められる業務の例
- 国際路線等に就航する航空機において従事する客室乗務員等の業務等であって、所定労働時間の途中まで、または途中から子の看護休暇を取得させることが困難な業務
- 長時間の移動を要する遠隔地で行う業務であって、時間単位の子の看護休暇を取得した後の勤務時間または取得する前の勤務時間では処理することが困難な業務
- 流れ作業方式や交替制勤務による業務であって、時間単位で子の看護休暇を取得する者を勤務体制に組み込むことによって業務を遂行することが困難な業務
育児・介護休業法に違反した場合の罰則(改正なし)
会社が子の看護休暇を取得させなかったとしても、育児・介護休業法には、違反に対する直接的な罰則は特に定められていないため、当該行為をもって直ちに罰則が科せられることはありません。
ただし、会社が育児・介護休業法に違反している場合には、厚生労働大臣は会社に対して、報告を求め、または違反を是正するように勧告することができるとされています(育児・介護休業法第56条)。
そして、この報告の求めに対して、会社が虚偽の報告をし、または報告を怠った場合には、最大で20万円の過料を課すこととし、また、勧告に会社が従わない場合は、厚生労働大臣は企業名を公表することができるとされています(育児・介護休業法第66条、第56条の2)。
【参考】子の看護休暇の法改正の履歴
法改正の施行日 | 法改正の内容 |
2002(平成14)年4月1日 | 子の看護休暇の創設(努力義務) |
2005(平成17)年4月1日 | 子の看護休暇の義務化 |
2010(平成22)年6月30日 | 子の看護休暇の付与日数の変更 (2人以上の子を養育する場合には、年10日の休暇を取得することが可能となる) |
2017(平成29)年1月1日 | 子の看護休暇の半日単位の取得 (1日単位での取得から、半日単位で取得することが可能となる) |
2021(令和3)年1月1日 | ・子の看護休暇の1時間単位の取得が可能となる(半日単位は廃止) ・子の看護休暇の対象範囲が拡大され、1日の所定労働時間が4時間以下の者は子の看護休暇を取得できないとする要件を廃止 |
2025(令和7)年4月1日 | ・「子の看護等休暇」に名称変更 ・対象となる子の年齢が、小学校第3学年修了前までに延長 ・子の看護休暇の取得事由の追加(感染症の流行に伴う学級閉鎖、入学式などへの参加) ・労使協定により対象から除外できる者について、「入社後6ヵ月未満の者」を廃止 |