【2025年4月改正】「子の看護休暇」の改正を踏まえた育児・介護休業規程の規定例(記載例)を解説
はじめに
育児・介護休業法が改正され、2025(令和7)年4月1日(一部は同年10月1日)に施行されます。
改正内容の一つとして、子の看護休暇制度が見直され、従業員の権利を拡大する方向で改正されました。
本稿では、法改正を受けて実務上対応が必要となる、育児・介護休業規程の規定例(記載例)について解説します。
なお、子の看護休暇に関する育児・介護休業法の改正内容については、次の記事をご覧ください。
【2025年4月改正】「子の看護休暇」に関する育児・介護休業法の改正内容(対象となる子の範囲の拡大、取得事由の追加など)を詳しく解説
現行法に基づく育児・介護休業規程の規定例(記載例)
本稿では、現行法(2025(令和7)年3月31日まで適用される育児・介護休業法をいう。以下同じ)に基づく育児・介護休業規程の規定例(記載例)として、厚生労働省が公開している、「育児・介護休業等に関する規則の規定例[詳細版](令和6年1月作成)」をベースに、法改正に伴う規定の変更点を解説します。
現行法に基づく育児・介護休業規程の規定例(記載例)
(子の看護休暇)【要変更点①】
第●条 小学校就学の始期に達するまでの子【要変更点②】を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、負傷し、または疾病にかかった当該子の世話をするために、または当該子に予防接種や健康診断を受けさせるために【要変更点③】、就業規則第●条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。 ただし、会社は、労使協定によって除外された次の従業員からの子の看護休暇の申出は拒むことができる。【注1】
一、入社6ヵ月未満の従業員【要変更点④】
二、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
2 子の看護休暇は、時間単位で始業時刻から連続または終業時刻まで連続して取得することができる。
3 子の看護休暇を取得しようとする者は、原則として、子の看護休暇申出書(社内様式●)を事前に人事部労務課に届け出るものとする。
4 本制度の適用を受ける間の給与については、別途定める給与規定に基づき、労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した額を支給する。【注2】
5 賞与については、その算定対象期間に本制度の適用を受ける期間がある場合においては、労務提供のなかった時間に対応する賞与は支給しない。
6 定期昇給および退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間を通常の勤務をしているものとみなす。
【注1】
上記の規定例(記載例)は、労使協定の締結により、一定の要件に該当する従業員を除外する場合の規定です。
労使協定を締結していない(除外しない)場合には、当該規定は不要です(法改正に伴う変更も不要です)。
【注2】
上記の規定例(記載例)は、子の看護休暇を取得した日(または時間)について、無給(賃金を支給しない)とする場合の規定です。
育児・介護休業法は、子の看護休暇を取得した日(または時間)について、賃金を支給する義務を定めていないことから、原則して当該日(または時間)は無給となります。
法改正を踏まえた変更後の規定例(記載例)
2025(令和7)年4月1日施行の育児・介護休業法の改正を受け、育児・介護休業規程において、次のように変更を行う必要があります。
法改正を踏まえた変更後の規定例(記載例)
(子の看護等休暇)【要変更点①】
第●条 小学校第3学年修了前の子【要変更点②】を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、当該子について次の各号に定める事由に該当するときは【要変更点③】、就業規則第●条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護等休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
一、負傷し、または疾病にかかった子の世話をするため
二、子に予防接種や健康診断を受けさせるため
三、感染症の流行に伴う学校(保育所等を含む)の休業、出席停止、学級閉鎖その他これに準ずる事由に伴い子の世話をするため【要変更点③】
四、子の入園式、卒園式または入学式に参加するため【要変更点③】
2 前項の定めに関わらず、会社は、労使協定によって除外された次の従業員からの子の看護等休暇の申出は拒むことができる。
一、(削除)【要変更点④】
二、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
(以下の規定は変更を要しないため、省略)
【要変更点①】制度の名称変更
法改正により、子の看護休暇の取得事由が追加されることに伴い、制度の名称が「子の看護等休暇」に変更されます。
これに伴い、規程に記載されている制度名を変更する必要があります。
【要変更点②】制度の対象となる子の年齢の延長
子の看護休暇の対象となる子の年齢は、現行法では、「小学校就学の始期に達するまでの子」とされていますが、法改正により、対象となる子の年齢が延長され、「9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子(小学校第3学年修了前の子)」と定められました(改正後の育児・介護休業法第16条の2第1項)。
規定上は、「小学校第3学年修了前の子」、あるいは、端的に「小学校3年生までの子」などと定める方が、分かりやすいと思います。
【子の看護休暇の対象となる子の年齢】
現行法 (2025(令和7)年3月31日まで) | 法改正後 (2025(令和7)年4月1日以降) |
小学校就学の始期に達するまでの子 | 9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子 (小学校第3学年修了前の子) |
【要変更点③】子の看護休暇の取得事由の追加
法改正により、子の看護休暇の取得事由が拡大され、次の2つの事由が追加されました(改正後の育児・介護休業法第16条の2第1項)。
法改正により追加される取得事由
- 学校保健安全法第20条の規定による学校の休業、その他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事由に伴う子の世話を行うため
- 子の教育もしくは保育にかかる行事のうち、厚生労働省令で定めるものへの参加をするため
「学校保健安全法第20条の規定による学校の休業」とは、学校の設置者が、感染症の予防上必要があると判断するときにおいて、学校の全部または一部について行う臨時休業をいいます。
例えば、感染症の流行に伴う学級閉鎖があった場合などが該当します。
また、「これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事由」とは、厚生労働省令により、「学校保健安全法第19条の規定による出席停止」、および、「保育所等その他の施設または事業における、学校保健安全法第20条の規定による学校の休業に準ずる事由、または学校保健安全法第19条の規定による出席停止に準ずる事由」と定められています(改正後の育児・介護休業法施行規則第33条第一号、第二号)。
「子の教育もしくは保育にかかる行事のうち厚生労働省令で定めるもの」とは、厚生労働省令により、「入園、卒園または入学の式典その他これに準ずる式典とする」と定められています(改正後の育児・介護休業法施行規則第33条の2)。
「式典」とは、一般に、行事ごとを行う式を意味しますので、例えば、運動会や授業参観などの日常的な学校行事に参加する目的で、子の看護休暇を取得することは認められないものと解されます。
【子の看護休暇の取得事由】
現行法 (2025(令和7)年3月31日まで) | 法改正後 (2025(令和7)年4月1日以降) |
負傷・疾病の世話 予防接種・健康診断 | 負傷・疾病の世話 予防接種・健康診断 感染症の流行に伴う学級閉鎖など【追加】 入学式などへの参加【追加】 |
【要変更点④】労使協定により除外できる者
子の看護休暇は、日々雇用される者を除き、原則としてすべての従業員が制度の対象となります。
ただし、現行法では、会社は、従業員の過半数を代表する者(従業員の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合)との間で労使協定を締結することによって、「入社後6ヵ月未満の者」および「1週間の所定労働日数が2日以下の者」については、子の看護休暇の対象から除外することができるとされていました。
法改正により、1.の「入社後6ヵ月未満の者」を廃止し、2.の「1週間の所定労働日数が2日以下の者」のみが労使協定による除外対象となりますので、規定のうち、1.にかかる定めを削除する必要があります(改正後の育児・介護休業法第16条の3第2項、育児・介護休業法第6条第1項、育児・介護休業法施行規則第8条第二号、平成23年3月18日厚生労働省告示第58号)。
【労使協定により除外できる者】
法改正前 (2025(令和7)年3月31日まで) | 法改正後 (2025(令和7)年4月1日以降) |
入社後6ヵ月未満の者 1週間の所定労働日数が2日以下の者 | 1週間の所定労働日数が2日以下の者 |
労使協定の変更点
労使協定によって、子の看護休暇の対象者を除外している場合には、法改正に伴い、労使協定の内容を変更し、協定を締結し直す必要があります。
労使協定の規定例(記載例)【現行】
労使協定の規定例(記載例)【現行】
育児・介護休業等に関する労使協定
●●株式会社(以下、「会社」という)とその従業員の過半数を代表する者は、育児・介護休業等に関し、次のとおり協定する。
(子の看護休暇の申出を拒むことができる従業員)
第●条 会社は、次の従業員から子の看護休暇の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。
一、入社6ヵ月未満の従業員【要変更点⑤】
二、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
労使協定の規定例(記載例)【法改正後】
(子の看護等休暇の申出を拒むことができる従業員)
第●条 会社は、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員【要変更点⑤】から子の看護等休暇の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。
【要変更点⑤】労使協定による除外対象者
【要変更点④】に記載のとおり、「入社後6ヵ月未満の者」にかかる記載を削除する必要があります。