【2025年4月改正】「出生後休業支援給付金」とは?支給要件、支給額、支給日数などを解説(雇用保険法)

はじめに

雇用保険法の改正により、育児に伴う給付として、新たに「出生後休業支援給付金」および「育児時短就業給付金」が創設され、2025(令和7)年4月1日に施行されます(雇用保険法第61条の10、第61条の12)。

これにより、育児休業にかかる給付として、既存の「育児休業給付金」および「出生時育児休業給付金」と合わせて、4種類の給付金が設けられたことになります。

本稿では、出生後休業支援給付金について、支給要件や支給額などを解説します。

なお、育児時短就業給付金については、次の記事をご覧ください。

(準備中)

出生後休業支援給付金の定義(概要)

出生後休業支援給付金」とは、子の出産直後の一定期間内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、夫婦が共に14日以上の育児休業(出生後休業)を取得した場合において、最大で28日間、休業前の賃金の13%相当額を支給する給付金をいいます(雇用保険法第61条の10)。

これにより、既存の育児休業給付金または出生時育児休業給付金(いずれも休業前の賃金の67%相当額)と合わせて、休業前の賃金の80%相当額の給付率となり、手取りで10割相当を受給することができます。

出生後休業支援給付金は、夫婦が共に働き、育児を行う「共働き・共育て」を推進し、特に男性の育児休業の取得を促進することを目指して創設された制度です。

従業員が育児休業を取得した場合において、会社には、休業期間中の賃金を支払う義務がありません。

そこで、雇用保険法では、従業員の休業期間中の生活を保障するために給付を行うことによって、従業員の生活と雇用の安定を図っています。

出生後休業支援給付金の支給要件

支給要件【原則】

出生後休業支援給付金が支給されるための要件は、原則として、次の3つです(雇用保険法第61条の10第1項)。

出生後休業支援給付金の支給要件(原則)

  1. 原則として、出生後休業を開始した日前の2年間において、雇用保険のみなし被保険者期間が通算12ヵ月以上あること
  2. 被保険者が、対象期間内に取得した出生後休業の日数が、通算して14日以上であること
  3. 被保険者の配偶者が、子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内にした出生後休業の日数が、通算して14日以上であること

支給要件1

出生後休業支援給付金が支給されるためには、原則として、出生後休業を開始した日前の2年間において、雇用保険の被保険者であった期間(これを「みなし被保険者期間」といいます)が通算12ヵ月以上あることが必要とされています(雇用保険法第61条の10第4項)。

出生後休業」とは、雇用保険の被保険者が、対象期間内において子を養育するために取得する休業をいい、具体的には、育児休業給付金または出生時育児休業給付金の支給対象となる休業をいいます(「対象期間」については、後述します)(雇用保険法施行規則第101条の34)。

「出生後休業を開始した日」とは、育児休業または出生時育児休業を2回以上に分割して取得する場合には、初回の休業開始日をいいます。

「みなし被保険者期間」とは、雇用保険の被保険者であった期間をいい、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を、1ヵ月として数えます(雇用保険法第14条)。

支給要件2

雇用保険の被保険者本人(出生後休業支援給付金を受給する本人)が、対象期間内に取得した出生後休業の日数が、通算して14日以上であることが要件とされています。

支給要件3

出生後休業支援給付金の制度の目的は、両親が共に休業を取得することを促進することにあるため、原則として、両親が共に、出生後休業を取得することを前提としており、被保険者の配偶者も、通算14日以上の出生後休業を取得することが要件とされています。

ただし、子の出生後、父親はすぐに休業を開始することができますが、出産をした母親は、労働基準法に基づく産後休業を取得するため、養子の場合を除き、出産後すぐに休業することができません(労働基準法第65条)。

そのため、被保険者の配偶者が女性であって、産後休業を取得した場合には、例外的に支給要件3は適用されません(後述)。

支給要件【例外】

出生後休業支援給付金は、両親が共に育児休業を取得することを前提とする制度であるものの、配偶者が専業主婦(夫)の場合、一人親家庭の場合、配偶者が自営業・フリーランスの場合などで、雇用保険に加入していないことがあります。

そこで、家族構成等による不公平を解消するため、出生後休業支援給付金は、配偶者が出生後休業を取得できない次の場合には、支給要件3は適用されず、支給要件1と2を満たすことにより支給されます

例外的に支給要件3(配偶者の休業)が適用されない場合

  • (例外1)配偶者がいない場合
  • (例外2)配偶者が雇用保険の適用事業に雇用されていない場合
  • (例外3)配偶者が労働基準法に基づく産後休業をした場合
  • (例外4)配偶者が対象期間内に出生後休業をすることができない場合

(例外1)

例えば、ひとり親家庭である場合や、出生後休業にかかる子が被保険者の配偶者の子に該当しない場合などが該当します(雇用保険法施行規則第101条の37)。

(例外2)

例えば、被保険者の配偶者が、自営業やフリーランスの場合などが該当します。

(例外3)

出産をした母親は、労働基準法に基づく産後休業を取得するため、養子の場合を除き、出産後すぐに休業することはできないことから、支給要件3は適用されません。

(例外4)

例えば、被保険者の配偶者が日々雇用される者である場合、労使協定によって制度の適用が除外される場合など、育児休業または出生時育児休業の取得要件を満たさないことにより、出生後休業を取得できない場合などが該当します(雇用保険法施行規則第101条の38)。

出生後休業支援給付金の対象期間

出生後休業支援給付金は、「対象期間」内において、被保険者が14日以上の出生後休業を行うことが要件とされています。

出生後休業支援給付金の「対象期間」は、被保険者自身が産後休業を取得したか否かにより、次のとおり異なります(雇用保険法第61条の10第7項)。

雇用保険の被保険者が、産後休業を取得しなかったとき(主に男性のケース)

子の出生の日から起算して、「8週間」を経過する日の翌日までの期間

例えば、父親(被保険者)が、子の出生後、育児休業または出生時育児休業を取得する期間が該当します(男性は、子の出生後8週間は、育児休業と出生時育児休業のいずれかを選択して取得することができます)。

雇用保険の被保険者が、産後休業を取得したとき(出産した女性のケース)

子の出生の日から起算して、「16週間」を経過する日の翌日までの期間

出産した女性は、産後8週間は、原則として労働基準法に基づく産後休業を取得することから、実質的には、産後休業終了後の8週間が、出生後休業支援給付金の支給を受けるための対象期間とされています。

なお、実際の出産日が出産予定日より早まった場合、または遅れた場合の対象期間は次のとおりです。

出産予定日と出産日が異なる場合の対象期間

  • 出産予定日に子が出生した場合

子の出生の日から、出産予定日から起算して16週間が経過する日の翌日までの期間

  • 出産予定日に子が出生した場合

出産予定日から、出生の日から起算して16週間を経過する日の翌日までの期間

出生後休業支援給付金の支給日数と支給額

出生後休業支援給付金の支給日数

出生後休業支援給付金の支給対象となる日数は、「28日」が限度とされています(雇用保険法第61条の10第6項)。

また、育児休業や出生時育児休業は、休業を分割して取得することができますが、複数回の出生後休業を取得した場合でも、それらの日数を合算して、28日が限度となります。

出生後休業支援給付金の支給額

出生後休業支援給付金の支給額は、次の計算式に基づき算定します(雇用保険法第61条の10第6項)。

出生後休業支援給付金の支給額

休業開始時賃金日額(A)×対象期間内に休業をした日数(最大28日)(B)×支給率13%(C)

休業開始時賃金日額(A)

「休業開始時賃金日額」とは、被保険者が休業を開始した日を基準として算定した、賃金の日額をいいます。

休業開始時賃金日額は、「休業を開始する前6ヵ月間の賃金÷180」によって算定します(雇用保険法第17条)。

なお、賃金日額を算定する際の賃金は、賃金の総支給額であり(手取りではありません)、賞与は含まれません。

対象期間内に休業をした日数(B)

前述のとおり、出生後休業支援給付金の支給対象となる日数は、「28日」が限度とされています。

支給率(13%)(C)

出生後休業支援給付金は、休業1日あたり、休業開始時賃金日額の13%が支給されます

育児休業を取得した場合、育児休業給付金は、休業開始後180日までは休業開始時賃金日額の67%が支給されます(181日目以降は、休業開始時賃金日額の50%が支給される)。

また、出生時育児休業を取得した場合、出生時育児休業給付金は、28日を限度として、休業開始時賃金日額の67%が支給されます。

つまり、出生後休業支援給付金を、育児休業給付金または出生時育児休業給付金と合わせて受給することにより、休業を開始する前の賃金のおよそ80%相当の額を受給することができることになります。

そして、休業開始前の賃金の80%相当額は、手取りでみたときの全額に近い水準となります。

これは、通常の賃金からは税金と社会保険料が控除されますが、育児休業等にかかる給付金には所得税などが課税されず(雇用保険法第12条)、また、休業期間中は社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除されるためです。

出生後休業支援給付金の申請手続

出生後休業支援給付金の申請手続は、原則として、育児休業給付金または出生時育児休業給付金の申請手続と併せて行うこととされています(雇用保険法施行規則第101条の42)。

出生後休業支援給付金が不支給となる事由

従業員が次のいずれかに該当する出生後休業をしたときは、出生後休業支援給付金は支給されません(雇用保険法第61条の10第3項)。

  • 育児休業給付金または出生時育児休業給付金の支給の対象となる休業を、分割して取得した場合に該当しない場合における、2回目以後の出生後休業
  • 同一の子について、被保険者が5回以上の出生後休業をした場合における、5回目以後の出生後休業
  • 同一の子についてした出生後休業の日数の合計が、28日に達した日後の出生後休業