「職場におけるセクシュアルハラスメント(セクハラ)」に関して必要な雇用管理上の措置を解説【男女雇用機会均等法】

はじめに

男女雇用機会均等法では、事業主に対し、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために必要な雇用管理上の措置を講じることが義務付けられています。

本稿では、当該措置の内容について、厚生労働省の指針(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針/厚生労働省告示第6号(令和2年1月15日改正)に基づき、解説します。

職場におけるセクシュアルハラスメントとは

「職場におけるセクシュアルハラスメント」とは

「職場におけるセクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる、次のものをいいます(男女雇用機会均等法第11条第1項)。

職場におけるセクシュアルハラスメントとは

  • 性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(対価型セクシュアルハラスメント)
  • 性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの(環境型セクシュアルハラスメント)

なお、職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれます。

「性的な言動」とは

「性的な言動」とは、「性的な内容の発言」および「性的な行動」をいいます。

「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布することなどが含まれます。

「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布することなどが含まれます。

また、性的な言動を行う者には、労働者を雇用する事業主、上司、同僚に限らず、取引先など他の事業主およびその雇用する労働者、顧客などもなり得ます。

「対価型セクシュアルハラスメント」とは

対価型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する当該労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給などの不利益を受けることをいい、例えば、次のような場合が該当します。

「対価型セクシュアルハラスメント」の例

  • 事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該労働者を解雇すること
  • 上司が労働者の腰、胸などに触ったが、抵抗されたため、当該労働者について不利益な配置転換をすること
  • 事業主が日頃から、労働者にかかる性的な事柄について、職場で公然と発言していたが、抗議されたため、当該労働者を降格すること

「環境型セクシュアルハラスメント」とは

環境型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、当該労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいい、例えば、次のような場合が該当します。

「環境型セクシュアルハラスメント」の例

  • 上司が労働者の腰、胸などに度々触ったため、当該労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること
  • 同僚が取引先において、労働者にかかる性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと
  • 労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと

事業主が講ずべき雇用管理上の措置

男女雇用機会均等法では、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために講ずべき雇用管理上の措置として、「労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と定められています(男女雇用機会均等法第11条第1項)。

具体的には、事業主は、次の措置を講じる必要があります。

事業主が講ずべき雇用管理上の措置

  1. 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場におけるセクシュアルハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応

1.事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発

方針の明確化・周知

事業主として、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容、および職場におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することが必要です。

周知の例としては、当該方針を、①就業規則など服務規律を定めた文書に定めること、②社内報・パンフレット・社内ホームページなどに掲載すること、③研修・講習を実施することなどが考えられます。

加害者への対処方針

職場におけるセクシュアルハラスメントにかかる性的な言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針および対処の内容(懲戒処分に関する規定など)を、就業規則などに定め、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することが必要です。

2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

相談窓口の設置・周知

例えば、①相談に対応する担当者をあらかじめ定めること、②相談に対応するための制度を設けること、③外部の機関に相談への対応を委託することなどが考えられます。

相談窓口の担当者による適切な対応

相談窓口が機能するためには、単に相談窓口を設置するだけでなく、相談窓口の担当者が、相談の内容や状況に応じて適切に対応できるようにすることが必要です。

例えば、①状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること、②あらかじめマニュアルを作成しておき、マニュアルに記載された留意点などに基づき対応すること、③相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うことなどが考えられます。

なお、事業主は、労働者が相談を行ったこと、または事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとされています(男女雇用機会均等法第11条第2項)。

望ましいとされる相談体制

職場におけるセクシュアルハラスメントは、職場におけるパワーハラスメント、妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントなどと複合的に生じることも想定されることから、例えば、職場におけるセクシュアルハラスメントの相談窓口がパワーハラスメントの相談窓口を兼ねるなど、職場におけるセクシュアルハラスメントの相談窓口を他のハラスメントの相談窓口と一体的に設置し、一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましいとされています。

3.職場におけるセクシュアルハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応

事実関係の把握

職場におけるセクシュアルハラスメントが発生した場合には、まず、事案にかかる事実関係を迅速かつ正確に確認することが必要です。

例えば、相談窓口の担当者、人事部門または専門の委員会などが、相談者および行為者の双方から事実関係を確認することが必要です。

被害者に対する配慮

被害の事実が確認された場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を講じることが必要です。

例えば、事案の内容や状況に応じて、①被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、②被害者と行為者を引き離すための配置転換、③行為者の謝罪、④被害者の労働条件上の不利益の回復、⑤管理監督者または産業保健スタッフなどによる被害者のメンタルヘルス不調への相談対応などの措置を講じることなどが考えられます。

行為者に対する措置

職場におけるセクシュアルハラスメントの事実が確認できた場合には、行為者に対する措置を講じることが必要です。

例えば、就業規則の規定に基づき、行為者に対して必要な懲戒処分などの措置を講じることが必要です。

再発防止に向けた措置

被害の再発防止に向けて、改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発するなどの措置を講じることが必要です。