「ストレスチェック」とは?制度の内容・実施方法・実施後の措置(面接指導)などについて解説

ストレスチェックとは

ストレスチェックとは

ストレスチェック」(条文上は、「心理的な負担の程度を把握するための検査等」といいます)とは、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査の実施、その結果に基づく医師による面接指導、面接指導の結果に基づく就業上の措置、ストレスチェックの結果の集団ごとの集計・分析など、労働安全衛生法に基づく一連の取り組みをいいます(労働安全衛生法第66条の10)。

ストレスチェックは、労働安全衛生法の改正により、2015(平成27)年12月1日に施行されました。

ストレスチェックの目的

ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止すること(一次予防)を主な目的としています

ストレスチェックにより、労働者に対し、自身のストレスへの気付きを促すと共に、ストレスの原因となる職場環境の改善につなげることが期待されます。

なお、本制度は、事業主がメンタルヘルス不調の労働者を把握することを目的とした制度ではありません。

また、ストレスチェックおよび面接指導の費用については、法律が事業者にこれらの実施義務を課している以上、当然に事業者が負担すべきものであると解されます(平成27年5月1日基発0501第3号)。

ストレスチェックの実施義務

対象となる事業場

ストレスチェックは、「常時50人以上」の労働者を使用する事業場について、実施することが義務付けられています。

なお、常時50人未満の労働者を使用する事業場については、ストレスチェックの実施は当分の間、努力義務とされていましたが(労働安全衛生法附則第4条)、労働安全衛生法の改正(2025(令和7)年5月14日公布)により、実施義務の対象となることが予定されています(執筆時点で施行日は未定)。

対象となる労働者

ストレスチェックの対象者は、「常時使用する労働者」とされており、具体的には、次の要件をいずれも満たす者をいいます(平成27年5月1日基発0501第3号)。

ストレスチェックの対象者

  • 期間の定めのない労働契約により使用される者(契約期間が1年以上の者・契約更新により1年以上使用されることが予定されている者・1年以上引き続き使用されている者を含む)であること
  • 週労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること

上記の要件は、定期健康診断の対象となる労働者と同じです。

なお、法律上は、労働者に対してストレスチェックの受検を義務付けていません。

ただし、これはメンタルヘルス不調の治療中のため受検の負担が大きいなど、特別の事情がある労働者にまで受検を強要する必要がないためであり、特別な事情がない限り、すべての労働者がストレスチェックを受検することが望ましいと解されます。

ストレスチェックの実施者

ストレスチェックの実施者は、①医師、②保健師、③検査を行うために必要な知識についての研修(厚生労働大臣が定めるもの)を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士または公認心理師とされています(労働安全衛生規則第52条の10第1項)。

また、実施者の指示により、ストレスチェックの実施の事務(個人の調査票のデータ入力、結果の出力・保存など)に携わる者(実施事務従事者)を選任することができます。

なお、ストレスチェックを受ける労働者の解雇・昇進・異動に関して直接の権限を持つ管理監督者は、ストレスチェックの実施の事務に従事してはならないとされています(労働安全衛生規則第52条の10第2項)。

ストレスチェックの実施方法

ストレスチェックの実施内容

事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次に掲げる3つの領域について、調査票を用いて、ストレスチェックを行わなければならないとされています(労働安全衛生規則第52条の9)。

そして、労働者のストレスの程度を点数化して評価するとともに、その評価結果を踏まえて高ストレス者を選定し、医師による面接指導の要否を確認する必要があります。

ストレスチェックの実施領域

  1. 職場における労働者の心理的な負担の原因に関する項目
  2. 労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
  3. 職場における他の労働者による労働者への支援に関する項目

ストレスチェックの調査票

事業者がストレスチェックに用いる調査票は、上記の3つの領域に関する項目が含まれているものであれば、実施者の意見や衛生委員会での調査審議などを踏まえて、事業者の判断により選択できるものとされています(「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(平成30年8月22日改正)」(以下、「指針」といいます))。

ただし、3つの領域に関する項目を含まない調査票で検査を行うもの、または点数化せずに評価を行うものは、ストレスチェックには該当しないものと解されます(平成27年5月1日基発0501第3号)。

なお、事業者がストレスチェックに用いる調査票としては、「職業性ストレス簡易調査票」を用いることが望ましいとされています。

ストレスチェックの実施後における対応

労働者への結果の通知

ストレスチェックの結果は、実施者が、遅滞なく(ストレスチェックの結果が出力された後、速やかに)労働者に通知することとされています(労働安全衛生規則第52条の12)。

また、実施者は、労働者の同意がない限り、個々の労働者の結果を事業主に通知してはならないとされています(労働安全衛生法第66条の10第2項)。

また、労働者に対して通知すべきストレスチェックの結果は、次の事項を含むものでなければならないとされています(平成27年5月1日基発0501第3号)。

労働者に対する通知事項

  1. 個人ごとのストレスの特徴や傾向を数値、図表などで示したもの(3つの項目ごとの点数を含むもの)
  2. 個人ごとのストレスの程度を示したものであって、高ストレスに該当するかどうかを示した結果
  3. 面接指導の要否

また、指針では、上記に加えて、①労働者によるセルフケアに関する助言・指導、②面接指導の対象者については事業者への面接指導の申出窓口・申出方法、③ストレスチェック結果について相談できる窓口(面接指導の申出窓口以外のもの)に関する情報提供を通知することが望ましいとしています。

集団ごとの集計・分析の実施

事業者は、実施者に、ストレスチェックの結果を一定規模の集団ごとに集計・分析させ、その結果を勘案し、必要に応じて、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講じるように努めなければならないとされています(労働安全衛生規則第52条の14第1項)。

ストレスチェックの結果の集団ごとの集計・分析、およびその結果を踏まえた必要な措置は、努力義務とされています。

「一定規模の集団」とは、職場環境を共有し、かつ業務内容について一定のまとまりをもった部、課などの集団であり、集計・分析を行う集団の単位は、事業者が当該事業場の業務の実態に応じて判断することとされています(平成27年5月1日基発0501第3号)。

面接指導の実施

面接指導の対象となる労働者は、事業場のストレスチェック制度に関する規程などにおいて定めた基準・方法により高ストレス者として選定された者であって、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた者をいいます(労働安全衛生規則第52条の15)。

事業主は、面接指導の対象となる労働者に対して、その者の申し出により、医師による面接指導を行わせる必要があるとされています。

面接指導の結果についての医師からの意見聴取

事業者は、面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければならないとされています(労働安全衛生法第66条の10第5項)。

この意見聴取は、面接指導が行われた後、遅滞なく行われる必要があり、遅くとも面接指導を実施してから概ね1ヵ月以内に行うこととされています(労働安全衛生規則第52条の19)。

ただし、労働者の心理的な負担の程度等の健康状態から、緊急に就業上の措置を講ずべき必要がある場合には、可能な限り速やかに行う必要があります(平成27年5月1日基発0501第3号)。

適切な措置

事業者は、医師の意見を勘案して必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講ずる他、当該医師の意見の衛生委員会などへの報告その他の適切な措置を講じなければならないとされています(労働安全衛生法第66条の10第5項)。

結果の報告

事業主は、ストレスチェックの結果を、「心理的な負担の程度を把握するための検査等結果報告書(様式第6号の2)」により、所轄労働基準監督署長に提出しなければならないとされています(労働安全衛生規則第52条の21)

事業主が当該報告書の提出を怠った場合には、50万円以下の罰金の対象となります(労働安全衛生法第100条第1項、同第120条第5号)。