「安全衛生委員会」の運営に関する社内規程の規定例(記載例)を解説

はじめに

労働安全衛生法では、事業場の業種および規模に応じ、安全衛生に関する調査・審議を行うための機関として、「委員会」の設置を義務付けています。

本稿では、労働安全衛生法が定める委員会について、「安全衛生委員会(安全委員会と衛生委員会を兼ねるもの)」の運営に関する社内規程の規定例(記載例)を解説します。

なお、委員会の設置要件など、基本的な内容については、次の記事をご覧ください。

【労働安全衛生法】「安全委員会」「衛生委員会」の設置要件、委員の構成、審議事項など、基本的な内容を解説

総則に関する規定例(記載例)

総則に関する規定例(記載例)

安全衛生委員会規程

(目的)

第1条 この規程は、株式会社●●(以下、「会社」という)における安全衛生委員会(以下、「委員会」という)の構成、運営、調査審議事項などを定めることにより、安全衛生管理活動の円滑な推進を図ることを目的とする。

(委員会の性格)

第2条 委員会は、安全衛生に関する調査審議機関とし、会社全般の安全衛生管理を円滑に推進する。

2 委員会は、安全衛生の水準向上のために必要と認める事項につき、議決を経て、会社に建議することができる。

(運営上の必要事項の決定)

第3条 労働安全衛生法などの関連諸法令および本規程に定めのない事項、その他委員会の運営に必要な事項は、委員会がこれを定める。

調査審議事項に関する規定例(記載例)

調査審議事項に関する規定例(記載例)

(委員会の調査審議事項)

第4条 委員会は、次の事項を調査審議するとともに、会社に対して必要な意見を提出するものとする。

一、従業員の危険および健康障害の防止の基本的な対策に関すること

二、労働災害の原因および再発防止対策に関することで、安全および衛生にかかるものに関すること

三、従業員の健康の保持増進を図るために必要な措置の実施計画の作成に関すること

四、安全衛生に関する規程の作成に関すること

五、危険性または有害性等の調査およびその結果に基づき講ずる措置で、安全および衛生にかかるものに関すること

六、安全衛生に関する計画の作成、実施、評価および改善に関すること

七、安全衛生教育の実施計画の作成に関すること

八、有害性の調査およびその結果に対する対策の樹立に関すること

九、作業環境測定の結果およびその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること

十、定期に行われる健康診断、臨時の健康診断、自発的健康診断およびその他に行われる医師の診断、診察または処置の結果に対する対策の樹立に関すること

十一、長時間労働による従業員の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること

十二、従業員の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること

十三、労働基準監督署長等から文書により命令、指示、勧告または指導を受けた事項のうち、従業員の危険および健康障害の防止に関すること

十四、リスクアセスメント対象物のばく露の程度の低減等のために講ずる措置に関すること

十五、その他安全衛生に必要と認められる重要な事項に関すること

(委員会の任務)

第5条 委員会は、次の事項を行わなければならない。

一、事業場を定期または随時に安全衛生の観点から巡視し、その結果を総括安全衛生管理者に報告すること

二、労働災害の原因および類似災害の防止対策について、必要と認めるときは当該現場の検証を行うこと

三、安全衛生に関し、労使協力の気運を醸成するための取り組みを行うこと

委員会の委員に関する規定例(記載例)

委員会の委員に関する規定例(記載例)

(委員会の構成)

第6条 委員会は、次の委員によって構成する【注1】

一、総括安全衛生管理者

二、安全管理者および衛生管理者のうちから、会社が指名した者

三、産業医のうちから、会社が指名した者

四、安全または衛生に関する経験を有する従業員から、会社が指名した者

2 委員会を統括管理する者として、委員会に委員長および副委員長をおく。委員長は会社が指名し、副委員長は委員長が指名する。

3 副委員長は委員長を補佐し、委員長に支障があるときはこれを代行する。

4 委員会の委員の数【注2】は、委員長の他、10名以上16名以下とする。

5 委員長を除く委員のうち、半数は会社が指名した者とし、その他の半数は、従業員の過半数を代表する者が推薦した者【注3】のうちから、会社が指名した者とする。

6 委員長は、委員会を統括するとともに、会議の議長を務め、委員会の付議事項およびその他必要な事項を処理する。

7 委員長は、委員会の運営上、必要と認めたときは、専門委員を指名し、委員長の指示により専門的な事項について調査を行うための専門部会を設けることができる。

8 委員長が必要と認めたときは、委員以外の者を委員会に出席させ、意見を聴取することができる。

9 委員は、委員会に出席し、第4条に定める事項について意見を述べるよう努め、常に職場環境や安全衛生に関する事項に留意し、安全衛生管理活動に寄与するよう努めるものとする。

(任期)

第7条 委員の任期【注4】は、毎年1月1日から12月31日までの1年間とする。ただし、再任を妨げないものとする。

2 委員の異動または退職等により、欠員が生じたときは、速やかに補充する。この場合において、補充委員の任期は、前任者の残任期間とする。

(証票の使用)

第8条 委員会の委員は、安全衛生にかかる業務の就業中は、委員たる証票(腕章)を使用しなければならない。

(会議の運営)

第9条 委員長は、委員会を毎月1回招集する【注5】ものとする。ただし、緊急性のある調査審議事項が発生したときであって、委員長が招集を必要と認めたとき、または委員3名以上の請求があったときは、臨時に招集することができる。

2 委員会は、委員の過半数の出席をもって成立する。

【注1】委員会の構成

委員会の委員は、次の者をもって構成する必要があります(労働安全衛生法第17条第2項、労働安全衛生法第18条第2項)。

委員安全委員会衛生委員会
総括安全衛生管理者(または当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者)
安全管理者
衛生管理者
産業医
当該事業場の労働者(安全に関し経験を有する者)
当該事業場の労働者(衛生に関し経験を有する者)

【注2】委員会の構成員の人数

委員会の構成員の人数については、法令上の定めはありませんので、事業の規模、作業の実態に即し、適宜決定して構いません。

【注3】委員の選任方法

議長以外の委員の半数については、労働者の過半数を代表する者(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合)の推薦に基づき指名する必要があります(労働安全衛生法第17条第4項、労働安全衛生法第18条第4項)。

【注4】委員の任期

委員の任期については、法令上の定めはありません。

【注5】委員会の開催頻度

事業者は、委員会を毎月1回以上開催する必要があります(労働安全衛生規則第23条第1項)。

事務局の設置に関する規定例(記載例)

事務局の設置に関する規定例(記載例)

(事務局の設置)

第10条 委員会は、事務局を総務部とし、事務局長を総務部長とする。

2 事務局は、主として次の事務を行う。

一、委員会の招集および付議

二、委員会に必要な資料の作成および配布

三、委員会の議事録の作成および保管

四、委員会の議事の概要の周知

五、前各号の他、委員長の指示に基づく事務

3 委員会は、事務局に所属する従業員のうち1名を委員として選任し、前項に定める事務を行わせるものとする。

(議事録に関する事務)

第11条 委員会に関する議事録および重要事項の記録は、事務局においてこれを3年間保存する【注6】ものとする。

2 事務局は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けることによって【注7】従業員に周知するものとする。

【注6】議事録の保管義務

事業者は、委員会の開催の都度、委員会の意見および当該意見を踏まえて講じた措置の内容など、委員会における議事で重要なものにかかる事項を記録し、これを3年間保存する必要があります(労働安全衛生規則第23条第4項)。

【注7】議事の概要の周知

事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を、次に掲げるいずれかの方法によって労働者に周知する必要があります(労働安全衛生規則第23条第3項)。

議事の概要の周知方法

  • 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けること
  • 書面を労働者に交付すること
  • 事業者の使用にかかる電子計算機に備えられたファイルまたは電磁的記録媒体(電磁的記録に係る記録媒体をいう。以下同じ)をもって調製するファイルに記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること