「職場における育児休業等に関するハラスメント」に関して必要な雇用管理上の措置を解説【育児・介護休業法】

はじめに

育児・介護休業法では、事業主に対し、職場における育児休業等に関するハラスメントを防止するために必要な雇用管理上の措置を講じることが義務付けられています。

本稿では、当該措置の内容について、厚生労働省の指針(子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針(厚生労働省告示第366号/令和3年9月30日改正)に基づき、解説します。

職場における育児休業等に関するハラスメントとは

「職場における育児休業等に関するハラスメント」とは

職場における育児休業等に関するハラスメント」とは、職場において、上司または同僚から行われる、その雇用する労働者に対する制度等の利用に関する言動により、就業環境が害されるものをいいます(育児・介護休業法第25条第1項)。

なお、業務分担や安全配慮などの観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものについては、職場における育児休業等に関するハラスメントには該当しません。

具体的には、次の制度等の利用に関する言動により、就業環境が害されるものをいいます(育児・介護休業法施行規則第76条第1号から第11号)。

「制度等」とは

  • 育児休業
  • 介護休業
  • 子の看護等休暇
  • 介護休暇
  • 所定外労働の制限
  • 時間外労働の制限
  • 深夜業の制限
  • 育児のための所定労働時間の短縮措置
  • 始業時刻変更等の措置
  • 介護のための所定労働時間の短縮措置
  • 柔軟な働き方を実現するための措置

また、制度等の利用に関する言動により就業環境が害されるものの典型的な例としては、次のとおりです。

制度等の利用に関する言動により就業環境が害されるものの典型的な例

  1. 解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの
  2. 制度等の利用の申出等または制度等の利用を阻害するもの
  3. 制度等の利用をしたことにより嫌がらせなどをするもの

1.解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの

労働者が、制度等の利用の申出等をしたい旨を上司に相談したこと、制度等の利用の申出等をしたこと、または制度等の利用をしたことにより、上司が当該労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いを示唆することをいいます。

2.制度等の利用の申出等または制度等の利用を阻害するもの

客観的にみて、言動を受けた労働者の制度等の利用の申出等または制度等の利用が阻害されるものが該当します。

ただし、労働者の事情やキャリアを考慮して、早期の職場復帰を促すことは、制度等の利用が阻害されるものに該当しません。

制度等の利用の申出等または制度等の利用を阻害するものの例

  • 労働者が制度等の利用の申出等をしたい旨を上司に相談したところ、上司が当該労働者に対し、当該申出等をしないように言うこと
  • 労働者が制度等の利用の申出等をしたところ、上司が当該労働者に対し、当該申出等を取り下げるように言うこと
  • 労働者が制度等の利用の申出等をしたい旨を同僚に伝えたところ、同僚が当該労働者に対し、繰り返しまたは継続的に、当該申出等をしないように言うこと(当該労働者がその意に反することを当該同僚に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む)
  • 労働者が制度等の利用の申出等をしたところ、同僚が当該労働者に対し、繰り返しまたは継続的に、当該申出等を撤回または取下げをするように言うこと(当該労働者がその意に反することを当該同僚に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む)

3.制度等の利用をしたことにより嫌がらせなどをするもの

客観的にみて、言動を受けた労働者の能力の発揮や就業の継続に重大な悪影響が生じるなど、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなものが該当します。

例えば、労働者が制度等の利用をしたことにより、上司または同僚が当該労働者に対し、繰り返しまたは継続的に嫌がらせ等(嫌がらせ的な言動、業務に従事させないことまたは専ら雑務に従事させることをいう)をすること(当該労働者がその意に反することを当該上司または同僚に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む)をいいます。

事業主が講ずべき雇用管理上の措置

育児・介護休業法では、事業主が職場における育児休業等に関するハラスメントを防止するために講ずべき雇用管理上の措置として、「労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と定められています(育児・介護休業法第25条第1項)。

具体的には、事業主は、次の措置を講じる必要があります。

事業主が講ずべき雇用管理上の措置

  1. 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場における育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
  4. 職場における育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置

1.事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発

方針の明確化・周知

事業主として、職場における育児休業等に関するハラスメントの内容、職場における育児休業等に関するハラスメントを行ってはならない旨の方針、制度等の利用ができる旨を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することが必要です。

周知の例としては、方針等を、①就業規則など服務規律を定めた文書に定めること、②社内報・パンフレット・社内ホームページなどに掲載すること、③研修・講習を実施することなどが考えられます。

加害者への対処方針

職場における育児休業等に関するハラスメントにかかる言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針および対処の内容(懲戒処分に関する規定など)を、就業規則などに定め、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することが必要です。

2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

相談窓口の設置・周知

例えば、①相談に対応する担当者をあらかじめ定めること、②相談に対応するための制度を設けること、③外部の機関に相談への対応を委託することなどが考えられます。

相談窓口の担当者による適切な対応

相談窓口が機能するためには、単に相談窓口を設置するだけでなく、相談窓口の担当者が、相談の内容や状況に応じて適切に対応できるようにすることが必要です。

例えば、①状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること、②あらかじめマニュアルを作成しておき、マニュアルに記載された留意点などに基づき対応すること、③相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うことなどが考えられます。

なお、事業主は、労働者が相談を行ったこと、または事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとされています(育児・介護休業法第25条第2項)。

望ましいとされる相談体制

職場における育児休業等に関するハラスメントは、職場における妊娠、出産等に関するハラスメント、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントなどと複合的に生じることも想定されることから、例えば、職場における育児休業等に関するハラスメントの相談窓口がセクシュアルハラスメントの相談窓口を兼ねるなど、職場における育児休業等に関するハラスメントの相談窓口を他のハラスメントの相談窓口と一体的に設置し、一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましいとされています。

3.職場における育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応

事実関係の把握

職場における育児休業等に関するハラスメントが発生した場合には、まず、事案にかかる事実関係を迅速かつ正確に確認することが必要です。

例えば、相談窓口の担当者、人事部門または専門の委員会などが、相談者および行為者の双方から事実関係を確認することが必要です。

被害者に対する配慮

被害の事実が確認された場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を講じることが必要です。

例えば、事案の内容や状況に応じて、①被害者の職場環境の改善または迅速な制度等の利用に向けての環境整備、②被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、③行為者の謝罪、④管理監督者または産業保健スタッフなどによる被害者のメンタルヘルス不調への相談対応などの措置を講じることなどが考えられます。

行為者に対する措置

職場における育児休業等に関するハラスメントの事実が確認できた場合には、行為者に対する措置を講じることが必要です。

例えば、就業規則の規定に基づき、行為者に対して必要な懲戒処分などの措置を講じることが必要です。

再発防止に向けた措置

被害の再発防止に向けて、改めて職場における育児休業等に関するハラスメントに関する方針を周知・啓発するなどの措置を講じることが必要です。

4.職場における育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置

事業主は、職場における育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するために、業務体制の整備など、事業主や制度等の利用を行う労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講じることが必要です。

なお、措置を講じるに当たっては、職場における育児休業等に関するハラスメントの背景には、労働者が所定労働時間の短縮措置を利用することで、短縮分の労務提供ができなくなることなどにより、周囲の労働者の業務負担が増大することもあることから、周囲の労働者の業務負担などにも配慮することが必要です。