「介護」と仕事の両立のための制度(介護休業・介護休暇・所定外労働の制限・時間外労働の制限・深夜業の制限・短時間勤務等の措置)を解説【育児・介護休業法】

はじめに

育児・介護休業法では、従業員が、仕事と介護を両立しながら働き続けることを支援するための制度として、介護休業、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、短時間勤務等の措置が定められています。

家族の介護を行う従業員は、これらの制度の内容を理解しておき、仕事の状況や、利用する介護サービスなどを考慮しつつ、適切に制度を選択していくことが必要となります。

介護休業

介護休業とは

介護休業」とは、従業員が、「要介護状態」にある「対象家族」を介護するために取得する休業をいいます(育児・介護休業法第11条)。

要介護状態

要介護状態」とは、負傷、疾病、または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にあることをいいます。

対象家族

対象家族」とは、介護休業を取得する従業員と、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫の関係にある者をいいます。

取得回数・期間

介護休業は、対象家族1人につき3回まで取得することができ、通算93日まで休業することができます。

「介護休業」とは?要件(対象者・対象家族)や取得日数・回数など、制度をわかりやすく解説

介護休暇

介護休暇とは

介護休暇」とは、要介護状態にある対象家族の介護や世話をするための休暇をいいます(育児・介護休業法第16条の5)。

要介護状態と対象家族の定義は、介護休業と同じです。

介護休暇の取得日数

介護休暇は、対象家族が1人の場合は年5日まで、対象家族が2人以上の場合は年10日まで取得することができます。

介護休暇の取得単位

介護休暇は、1日または1時間単位で取得することができます。

介護休業と、介護休暇の比較

 介護休業介護休暇
制度の内容要介護状態にある対象家族を介護するために取得する休業要介護状態にある対象家族の介護や世話をするために取得する休暇
取得回数・期間・対象家族1人につき3回まで
・通算93日まで
・対象家族が1人の場合は年5日まで
・対象家族が2人以上の場合は年10日まで
取得単位1日1日または1時間
申請期限開始予定日の2週間前までなし
対象外の従業員(原則)・日々雇用される者
・休業開始予定日から起算して、93日を経過する日から6ヵ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかな者
・日々雇用される者
対象外の従業員(労使協定を締結した場合)・入社1年未満の者
・申出の日から93日以内に雇用期間が終了する者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者
・入社6ヵ月未満の者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者

所定外労働の制限

所定外労働の制限とは

所定外労働の制限」とは、従業員が要介護状態にある対象家族を介護するために申請をした場合に、会社が所定外労働(残業)を免除することをいいます(育児・介護休業法第16条の9)。

要介護状態と対象家族の定義は、介護休業と同じです。

「所定外労働」とは、いわゆる「残業」であり、就業規則などで定められている勤務時間(始業時刻から終業時刻まで働いた時間、いわゆる「定時」)を超える時間に労働することをいいます。

利用期間

1回につき、1ヵ月以上1年以内の期間について利用することができます。

利用回数

利用回数の制限はありません。

申請期限

所定外労働の制限は、原則として、開始予定日の1ヵ月前までに、書面によって請求する必要があります。

時間外労働の制限

時間外労働の制限とは

時間外労働の制限」とは、従業員が要介護状態にある対象家族を介護するために申請をした場合、会社は1ヵ月について24時間、1年について150時間を超える法定時間外労働をさせてはならないことをいいます(育児・介護休業法第18条)。

要介護状態と対象家族の定義は、介護休業と同じです。

「時間外労働」とは、労働基準法で定める法定労働時間(原則として1日8時間、1週間40時間)を超える時間に労働することをいいます。

利用期間

1回につき、1ヵ月以上1年以内の期間について利用することができます。

利用回数

利用回数の制限はありません。

申請期限

時間外労働の制限は、原則として、開始予定日の1ヵ月前までに、書面によって請求する必要があります。

深夜業の制限

深夜業の制限とは

深夜業の制限」とは、従業員が要介護状態にある対象家族を介護するために申請をした場合、会社は深夜の時間帯について労働をさせてはならないことをいいます(育児・介護休業法第20条)。

要介護状態と対象家族の定義は、介護休業と同じです。

「深夜業」とは、労働基準法で定める深夜の時間帯(午後10時から午前5時まで)に労働することをいいます。

利用期間

1回につき、1ヵ月以上6ヵ月以内の期間について利用することができます。

利用回数

利用回数の制限はありません。

申請期限

深夜業の制限は、原則として、開始予定日の1ヵ月前までに、書面によって請求する必要があります。

所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限の比較

 所定外労働の制限時間外労働の制限深夜業の制限
制度の内容所定外労働(定時を超える労働)をさせない法定時間外労働(1日8時間・1週40時間を超える労働)をさせない深夜の時間帯(午後10時から午前5時まで)に労働させない
利用期間1回につき、1ヵ月以上1年以内の期間1回につき、1ヵ月以上1年以内の期間1回につき、1ヵ月以上6ヵ月以内の期間
利用回数制限なし制限なし制限なし
申請期限開始予定日の1ヵ月前まで開始予定日の1ヵ月前まで開始予定日の1ヵ月前まで
対象外の従業員(原則)・日々雇用される者・日々雇用される者
・入社1年未満の者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者
・日々雇用される者
・入社1年未満の者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者
・所定労働時間の全部が深夜にある者
対象外の従業員(労使協定を締結した場合)・入社1年未満の者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者

短時間勤務等の措置(所定労働時間の短縮等の措置)

短時間勤務等の措置とは

「短時間勤務等の措置」とは、従業員が、要介護状態にある対象家族を介護することができるように、会社が所定労働時間を短縮するなどの措置を講じることをいいます(育児・介護休業法第23条第3項)。

要介護状態と対象家族の定義は、介護休業と同じです。

「短時間勤務等の措置」は、次の中から会社が選択することとされており、会社によって利用できる制度が異なります(育児・介護休業法施行規則第74条第3項)。

なお、「措置を講じている」とは、短時間勤務制度が就業規則等に規定されるなど、制度化された状態になっていることをいい、単に運用されているだけでは不十分と解されます。

短時間勤務等の措置

  1. 短時間勤務の制度(1日、週または月の所定労働時間を短縮する制度、従業員が個々に勤務しない日または時間を請求することを認める制度)
  2. フレックスタイムの制度
  3. 始業・終業の時刻を繰り上げ・繰り下げる制度(時差出勤の制度)
  4. 従業員が利用する介護サービスの費用の助成(その他これに準ずる制度)

対象者

対象家族を介護する従業員であれば、日々雇用される者を除き、制度の対象者となります。

ただし、会社が労使協定を締結している場合には、次の従業員が対象外となる場合があります。

  • 入社1年未満の者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の者

利用期間・利用回数

対象家族1人につき、利用開始の日から連続する3年以上の期間で2回以上、当該制度を利用することができます(育児・介護休業法施行規則第74条第3項)。

連続する3年間以上の期間は、従業員が短時間勤務制度等の利用を開始する日として申し出た日から起算します。

例えば、2022年2月20日に、同年3月20日から短時間勤務を利用したい旨を申し出た場合には、3月20日から起算して3年、つまり2025年3月19日を超えて利用できる制度である必要があります。

なお、会社は、当該制度について、要介護状態にある対象家族1人につき、介護休業をした日数と合わせて少なくとも93日間は利用することができるようにする必要があります。

転勤に対する配慮

会社は、従業員について就業場所の変更を伴う配置の変更を行おうとする場合には、その就業場所の変更によって、介護が困難になる従業員がいるときは、当該従業員の介護の状況に配慮しなければなりません(育児・介護休業法第26条)。

不利益取扱いの禁止

会社は、介護休業に関連する制度の申出や取得を理由として、従業員に対して解雇などの不利益な取り扱いをしてはなりません(育児・介護休業法第16条など)。