【2024年改正】運送・物流業の改善基準告示(タクシー・トラック・バス)の改正と2024年問題について解説

改善基準告示の改正

「改善基準告示」とは?

改善基準告示」とは、正式には「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」をいい、タクシー・トラック・バスなどの自動車運転者について、労働時間などの労働条件の向上を図るため、1989(平成元)年に大臣告示として制定された基準をいいます(平成元年労働省告示第7号)。

改善基準告示では、すべての事業に共通して適用される労働基準法だけでは規制することが難しい、自動車運転業務に特有の拘束時間、休息期間、および運転時間などに関する基準を定めています。

改善基準告示の遵守状況

労働基準監督署によって2021(令和3)年度に実施された、自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導(計3,770件)では、改善基準告示の違反率は53.3%と高い水準にあり、労働時間など労働環境の改善が急務となっています。

なお、主な改善基準告示の違反内容は、第一に最大拘束時間(39.1%)、第二に総拘束時間(29.7%)、第三に休息期間(27.5%)でした。

改善基準告示の施行日

改善基準告示の改正内容は、2022(令和4)年12月23日に公布され、2024(令和6)年4月1日に施行されます。

タクシー・トラック・バスの業態の違いによって、改正内容は異なりますが、共通した内容としては、概ね拘束時間が短縮され、休息期間が延長されています。

違反時の罰則

改善基準告示に違反することにより、直接的な罰則(懲役や罰金など)はありません。

ただし、労働基準監督署の監督・指導や、国土交通省の行政処分を受ける可能性がありますので、十分に注意する必要があります。

運送・物流業の「2024年問題」とは?

2024年問題」とは、2023年4月と2024年4月に施行される、労働時間や割増賃金に関する一連の法改正の影響により、運送・物流業において生じ得る諸問題を意味します。

具体的には、自動車運転者の労働時間に罰則付きで上限が設定されることや、割増賃金が引き上げられることによって、会社の売上・利益が減少し、それに波及して自動車運転者の収入の減少や離職が生じるなどの問題が生じることが懸念されています。

中小企業の割増賃金率の引き上げ

2023(令和5)年4月1日施行の労働基準法の改正により、中小企業においては、1ヵ月60時間を超える法定時間外労働に対する割増賃金率が、現行の25%以上から50%以上に引き上げられます(労働基準法第37条)。

大企業においては、2010(平成22)年4月1日の法改正により、すでに法律が適用されていましたが、中小企業においては、当分の間、その適用が猶予されていました。

2023(令和5)年4月1日以降は、会社の業種・規模・従業員数などを問わず、同じ割増賃金率が適用されることとなります。

時間外労働の上限規制の適用(2024年4月1日)

時間外労働の上限に関する一般原則(一般の業種)

労働基準法の定める法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超える法定時間外労働は、36(さぶろく)協定を締結することにより、原則として月45時間以内・年360時間以内を上限として行うことが認められます。

ただし、臨時的な特別の事情がある場合には、月100時間未満(休日労働を含む)、2~6ヵ月平均で80時間以内(休日労働を含む)、年720時間以内(休日労働を含まない。月45時間を超えることができるのは、1年のうち6ヵ月以内)を上限に働くことが認められます。

運送業における上限規制の適用

時間外労働の上限規制については、運送業では2024(令和6)年3月31日までは適用が猶予されていましたが、2024(令和6)年4月1日以降は、運送業においても、上限規制が適用されることとなります。

ただし、その内容は、一般の業種と比べて異なります。

 一般の業種運送業(自動車運転者)
原則・月45時間以内
・年360時間以内
・月45時間以内
・年360時間以内
特別条項・月100時間未満(休日労働を含む)
・2~6ヵ月平均で80時間以内(休日労働を含む)
・年720時間以内(休日労働を含まない)
・月45時間超は6ヵ月まで
年960時間以内
(休日労働を含まない)

運送業の年間の上限時間(960時間)については、一般の業種と異なり、月45時間超の時間外労働を6ヵ月までとする規制は適用されません。

なお、運送業であっても、運行管理者、事務職、整備・技能職、倉庫作業職等、ドライバー以外の業務に従事する従業員は、一般の業種の上限規制に従う必要があります。

改善基準告示の改正(2024年4月1日)

タクシー・トラック・バスのそれぞれの改正内容(主に拘束時間・休息期間の改正)について後述します。

タクシー(日勤)の拘束時間・休息期間

日勤

項目改正前改正後
1ヵ月の拘束時間月299時間以内月288時間以内
1日の拘束時間(※)1日原則13時間以内
(最大16時間)
1日原則13時間以内
(最大15時間/14時間超は週3回までが目安)
1日の休息期間(※)継続8時間以上継続9時間以上
(11時間以上与えるよう努める)

(※)拘束時間と休息期間の関係

「1日」とは、始業時刻から起算して24時間をいいます。

また、「拘束時間」とは、始業から終業までの時間(休憩時間や仮眠時間を含む)をいい、「休息期間」とは、勤務と勤務の間(終業後から次の始業までの間)の自由な時間(睡眠時間を含む従業員の生活時間)をいいます。

したがって、拘束時間と休息期間は表裏一体のものであり、「1日(始業時刻から24時間)=拘束時間(最大16時間以内)+休息期間(8時間以上)」の関係性にあります。

日勤【車庫待ちの特例】

「車庫待ち」とは、常態として車庫で待機しておき、顧客の電話や乗り込みに応じて出庫する就労形態をいいます。

項目改正前改正後
1ヵ月の拘束時間(※1)月322時間以内月300時間以内
1日の拘束時間(※2)1日24時間まで延長できる左に同じ(改正なし)

(※1)1ヵ月の拘束時間について、車庫待ちの特例を適用するためには、会社と従業員の過半数代表者との間で、労使協定を締結する必要があります。

(※2)1日の拘束時間について、車庫待ちの特例を適用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 勤務終了後に、継続20時間以上の休息期間を与えること
  • 1日の拘束時間が16時間を超える回数が、1ヵ月に7回以内であること
  • 1日の拘束時間が18時間を超える場合には、夜間に4時間以上の仮眠時間を与えること

トラックの拘束時間・休息期間・運転時間

拘束時間

項目改正前改正後
1年の拘束時間年3,516時間以内年3,300時間以内(※1)
1ヵ月の拘束時間月293時間以内月284時間以内(※1)
1日の拘束時間1日原則13時間以内
(最大16時間/15時間超は週2回まで)
1日原則13時間以内
(最大15時間/14時間超は週2回までが目安)
[長距離貨物運送の例外あり(※2)]
1日の休息期間継続8時間以上継続9時間以上
(11時間以上与えるよう努める)
[長距離貨物運送の例外あり(※3)]

(※1)1年・1ヵ月の拘束時間の延長

会社は、従業員の過半数代表者との間で労使協定を締結し、一定の要件を満たす場合には、次のとおり1年・1日の拘束時間を延長することができます。

項目一般延長(労使協定)
1年の拘束時間年3,300時間以内年3,400時間以内
1ヵ月の拘束時間月284時間以内月310時間以内
(ただし、年に6ヵ月まで)

上記の延長が認められるための要件は、次のとおりです。

  • 月284時間を超えることができるのは、連続3ヵ月までとすること
  • 1ヵ月の時間外労働・休日労働の時間数が100時間未満となるように努めること

(※2)長距離貨物運送の例外(1日の拘束時間)

宿泊を伴う長距離貨物運送の場合には、1日の拘束時間を16時間まで延長することが認められます(ただし、延長できるのは1週間に2回まで)

なお、「宿泊を伴う長距離貨物運送」とは、1週間における運行がすべて長距離貨物運送(一の運行の走行距離が450km以上の貨物運送)で、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合をいいます。

(※3)長距離貨物運送の例外(1日の休息期間)

宿泊を伴う長距離貨物運送の場合には、1日の休息期間を継続8時間以上とする(拘束時間は最大16時間)ことが認められます(ただし、1週間について2回まで)。

ただし、運行終了後に、継続12時間以上の休息期間を与える必要があります。

運転時間

項目改正前改正後
1日の運転時間2日平均で9時間以内左に同じ(改正なし)
1週間の運転時間4週平均で1週44時間以内左に同じ(改正なし)
連続運転時間4時間以内
(運転の中断は1回10分以上、合計30分以上の運転離脱)
・左に同じ(改正なし)
(運転の中断は1回が概ね10分以上で、合計30分以上の原則休憩)
・SA・PA等に駐停車できない場合、4時間30分まで延長できる

トラックの運転中断時間について、改正前は単に運転を離脱していれば、運転以外の作業(荷下ろしなど)や待機などの労働が可能でしたが、改正後は「原則休憩」に変更されました。

一方で、運転中断時間については、「1回10分以上」から「1回が概ね10分以上」の表現に変更されており、10分未満の運転の中断が3回以上連続しないようにする必要があります。

さらに、トラックについては、サービスエリア・パーキングエリアなどに駐停車スペースがなく、やむを得ず連続運転時間が4時間を超えてしまうケースがあることから、運送現場の実情を考慮して、このような場合には連続運転時間を4時間30分まで延長することを認めました。

バスの拘束時間・休息期間・運転時間

拘束時間・休息期間

項目改正前改正後
1年の拘束時間(4週平均の拘束時間を年換算すると年3,380時間)年3,300時間以内【新設】
(※1)(※2)
1ヵ月の拘束時間(4週平均の拘束時間を月換算すると月281時間)月281時間以内【新設】
(※1)(※2)
4週平均の拘束時間4週平均で1週65時間以内・52週で3,300時間以内
・4週平均で1週65時間以内
(※1)(※2)
1日の拘束時間1日原則13時間以内
(最大16時間/15時間超は週2回まで)
1日原則13時間以内
(最大15時間/14時間超は週3回までが目安)
1日の休息期間継続8時間以上継続9時間以上
(11時間以上与えるよう努める)

(※1)拘束時間

拘束時間については、次の①②のいずれかの基準を選択します。

  • ①年3,300時間以内、かつ、月281時間以内
  • ②52週で3,300時間以内、かつ、4週で平均1週65時間以内

(※2)貸切バス等の乗務者の例外

貸切バス等の乗務者(貸切バス、乗合バス(一時的需要に応じて運行されるもの)、高速バスなど)については、会社は、従業員の過半数代表者との間で労使協定を締結することにより、次のとおり延長することができます。

項目原則例外(労使協定)
1年の拘束時間年3,300時間以内年3,400時間以内
1ヵ月の拘束時間月281時間以内・294時間以内(ただし、年に6ヵ月まで)
・281時間を超えるのは連続4ヵ月まで
4週平均の拘束時間・52週で3,300時間以内
・4週平均で1週65時間以内
・52週で3,400時間以内
・4週平均で1週68時間以内(ただし、52週のうち24週まで)
・65時間超は連続16週まで

運転時間

項目改正前改正後
1日の運転時間2日平均で9時間以内左に同じ(改正なし)
1週間の運転時間4週平均で1週40時間以内左に同じ(改正なし)
(※1)
連続運転時間4時間以内左に同じ(改正なし)
(※2)

(※1)貸切バス等の乗務者の例外

貸切バス等の乗務者については、労使協定により、4週平均で1週44時間まで延長することが認められます(ただし、52週のうち16週まで)。

(※2)貸切バス等の乗務者の例外

高速バス・貸切バスの高速道路の実車運行区間の連続運転時間は、おおむね2時間までとするように努めることとされています。