【2025年4月改正】介護に関する「個別周知・意向確認」のための書式のひな型(書式例)を解説

はじめに

育児・介護休業法の改正により、事業主に対し、新たに、介護を必要とする労働者に対して介護に関する制度等の個別周知・意向確認を行うことが義務付けられました。

改正後の育児・介護休業法は、2025(令和7)年4月1日に施行されます。

本稿では、育児・介護休業法が定める「介護に関する制度等の個別周知・意向確認」に関する法改正について、書式のひな型(書式例)と共に解説します。

なお、「介護」に関するその他の法改正については、次の記事をご覧ください。

【2025年4月改正】「介護」に関する育児・介護休業法の改正(介護両立支援制度の個別周知・意向確認の義務化、情報提供の義務化など)を解説

介護に関する制度等の個別周知・意向確認の義務化(法改正の概要)

育児・介護休業法の法改正により、労働者が事業主に対し、対象家族が介護を要する状況に至ったことを申し出たときは、事業主は、介護に関する制度および介護両立支援制度等について、当該労働者に対して個別に案内して知らせる(個別周知)と共に、これらの制度の利用について、意向を確認するための措置を講じる(意向確認)ことが義務付けられます(育児・介護休業法第21条第2項)。

施行日は2025(令和7)年4月1日です。

個別周知をする事項

事業主が労働者に対し、介護について個別周知をしなければならない事項は、次のとおりです(育児・介護休業法施行規則第69条の7、同第69条の8)。

個別周知をする事項

  1. 介護休業に関する制度
  2. 介護両立支援制度等
  3. 介護休業および介護両立支援制度等の申出先
  4. 介護休業給付金に関する事項

2.の「介護両立支援制度等」とは、労働者が就業しながら介護について利用できる、次の制度をいいます(育児・介護休業法施行規則第69条の7)。

介護両立支援制度等

  • 介護休暇に関する制度
  • 所定外労働の免除に関する制度
  • 時間外労働の制限に関する制度
  • 深夜業の制限に関する制度
  • 介護のための所定労働時間の短縮等の措置

「介護両立支援制度等の個別周知・意向確認」に関する書式のひな型(書式例)

個別周知をしなければならない事項を盛り込んだ、介護に関する制度等の個別周知・意向確認のための書式のひな型(書式例)は、次のとおりです。

「介護両立支援制度等の個別周知・意向確認」に関する書式のひな型(書式例)

【介護休業制度・介護両立支援制度等に関するご案内】

当社において、家族を介護する必要がある従業員が利用できる制度は、以下のとおりです。

Ⅰ.介護休業および介護両立支援制度等

1.介護休業

(1)要介護状態にある対象家族を介護する方は、通算93日の範囲内で、対象家族1人につき3回まで、介護休業を取得することができます。

「対象家族」とは、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹および孫のことをいいます(以下、2.から6.に同じ)。

(2)介護休業を取得しようとするときは、休業開始予定日の2週間前までに、「介護休業申出書」を総務部人事課に提出してください。

(3)制度の詳細については、育児・介護休業規程の第●条をご確認ください。

2.介護休暇

(1)要介護状態にある対象家族を介護する方は、例えば、次のような場合に、介護休暇を取得することができます。

・対象家族の介護をするとき ・対象家族の通院等の付き添いをするとき

・対象家族が介護サービスの提供を受けるための手続の代行をするとき

・その他、対象家族に必要な世話等をするとき

(2)介護休暇は、1年間(4月1日から3月31日まで)につき、5日間(対象家族が2人以上の場合は10日間)まで取得することができます。また、介護休暇は1時間単位で取得することができます。

(3)介護休暇を取得した日(または時間)は、無給となります。

(4)介護休暇を取得しようとするときは、原則として、事前に、「介護休暇申出書」を総務部人事課に提出してください。

(5)制度の詳細については、育児・介護休業規程の第●条をご確認ください。

3.介護短時間勤務

(1)要介護状態にある対象家族を介護する方は、1日の所定労働時間を6時間とする短時間勤務の制度を利用することができます。

(2)介護短時間勤務の制度を利用することができる期間は、対象家族1人につき、介護短時間勤務を開始しようとする日から連続する3年間であり、2回まで申出をすることができます。

(3)介護短時間勤務制度を利用しようとするときは、利用開始予定日の2週間前までに、「介護短時間勤務申出書」を総務部人事課に提出してください。

(4)制度の詳細については、育児・介護休業規程の第●条をご確認ください。

4.所定外労働の免除

(1)要介護状態にある対象家族を介護する方は、申出により、所定労働時間を超える労働(残業)の免除を受ける措置を利用できます。

(2)所定外労働の免除を希望するときは、免除開始日の1ヵ月前までに、「介護のための所定外労働の免除申出書」を総務部人事課に提出してください。

(3)制度の詳細については、育児・介護休業規程の第●条をご確認ください。

5.時間外労働の制限

(1)要介護状態にある対象家族を介護する方は、申出により、1ヵ月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働を制限する措置を利用できます。

(2)時間外労働の制限を希望するときは、制限開始日の1ヵ月前までに、「介護のための時間外労働の制限申出書」を総務部人事課に提出してください。

(3)制度の詳細については、育児・介護休業規程の第●条をご確認ください。

6.深夜業の制限

(1)要介護状態にある対象家族を介護する方は、申出により、深夜(午後10時から午前5時まで)の勤務をしないこととすることができます。

(2)深夜業の制限を希望するときは、制限を開始しようとする日の1ヵ月前までに、「介護のための深夜労働の制限申出書」を総務部人事課に提出してください。

(3)制度の詳細については、育児・介護休業規程の第●条をご確認ください。

Ⅱ.介護休業中に受け取ることができる給付金

(1)Ⅰ.1.の介護休業期間中は、受給資格を満たしている場合には、雇用保険から、「介護休業給付金」が支給されます。

(2)介護休業給付金の支給額は、概ね休業開始時の賃金の67%です。

(3)支給対象となる方には、総務部人事課より、休業前に必要提出書類をご案内します。

(4)介護休業給付金は、介護休業(複数回取得した場合は各休業)終了後に申請します。

Ⅲ.介護休業時の社会保険料

育児休業を取得した場合と異なり、介護休業を取得した場合には、社会保険料(健康保険および厚生年金保険)の免除を受けることはできません。 介護休業を取得したことにより、給与から社会保険料を控除することができない場合には、後日、会社から社会保険料の請求を行います。

Ⅳ.申出および相談窓口

介護に関する制度の申出および相談窓口は、次のとおりです。

【申出・相談窓口】総務部人事課(担当:●●●●)

Ⅴ.その他

当社では、従業員が介護休業等の制度について申出または利用したことを理由として、不利益な取り扱いをすることはありません。

また、介護休業等に関するハラスメント行為を許しません。

Ⅵ.介護休業等の制度の取得意向に関する確認

介護休業等の制度の取得意向について、次の項目のうち該当するものにチェックし、このページのコピーを2週間以内に総務部人事課まで提出してください。

□ 介護休業を取得予定(取得予定時期:   年   月頃)

□ 介護両立支援制度等を利用する予定(利用予定の制度:         )

□ 介護休業を取得する予定はない

□ 介護両立支援制度等を利用する予定はない

□ 検討中

□ 担当者に相談したい

提出日:   年   月   日

所 属:   部   課   係

氏 名:

個別周知の実施方法

事業主が行う労働者に対する個別周知は、次のいずれかの方法によって行う必要があります(育児・介護休業法施行規則第69条の6、同第69条の3)。

個別周知の方法

  • 面談による方法
  • 書面を交付する方法
  • ファックスを利用して送信する方法(労働者が希望する場合に限る)
  • 電子メール等を送信する方法(労働者が希望する場合に限り、かつ当該労働者が電子メール等の記録を出力することにより、書面を作成することができるものに限る)

なお、「面談による方法」については、オンラインによる面談でも差支えありません。

介護両立支援制度等の早期の情報提供の義務化

法改正により、前述の個別周知・意向確認とは別に、年齢が40歳に達した労働者に対しては、介護休業に関する制度や介護両立支援制度等の利用について、労働者の理解と関心を深めるために、情報を提供することが義務付けられます(育児・介護休業法第21条第3項)。

情報提供を行う内容は、個別周知をしなければならない事項と同じですので、基本的には、上記と同様の書式を用いて情報提供を行えばよいと考えます(育児・介護休業法施行規則第69条の10)。

なお、事業主が情報提供を行うタイミングは、次の期間のうち、いずれかとされています(育児・介護休業法施行規則第69条の11)。

情報提供の時期

  • 40歳に達した日が属する年度の、初日から末日までの期間
  • 40歳に達した日の翌日から起算して1年間