【労働基準法】「時間単位年休」に関するQ&A

- 1. はじめに
- 2. 1時間未満の時間数を時間単位年休の取得単位とすることの可否
- 2.1. 質問
- 2.2. 回答
- 3. 1日の所定労働時間に1時間に満たない端数がある場合
- 3.1. 質問
- 3.2. 回答
- 4. 半日単位の年次有給休暇(半日年休)を取得した場合の管理
- 4.1. 質問
- 4.2. 回答
- 5. 時間単位年休を取得できる事業場から、できない事業場へ異動した場合
- 5.1. 質問
- 5.2. 回答
- 6. 年度の途中で所定労働時間が変更された場合
- 6.1. 質問
- 6.2. 回答
- 7. 時間単位年休の残日数(残時間)の管理の仕方
- 7.1. 質問
- 7.2. 回答
- 8. 協定時間を超える時間単位年休の取得の可否
- 8.1. 質問
- 8.2. 回答
- 9. 年5日を超える時間単位年休の請求がある場合
- 9.1. 質問
- 9.2. 回答
- 10. 1日の年次有給休暇を時間単位年休で取得することの可否
- 10.1. 質問
- 10.2. 回答
- 11. 時間単位年休の請求に対する時季変更権
- 11.1. 質問
- 11.2. 回答
- 12. 時間帯によって賃金額が異なる場合
- 12.1. 質問
- 12.2. 回答
はじめに
労働基準法では、年次有給休暇の取得の促進を図るために活用できる制度として、1時間単位で年次有給休暇を取得することができる制度(以下、「時間単位年休」といいます)が定められています。
本稿では、時間単位年休を導入・運用する際に、実務上、疑問が生じやすい点について、厚生労働省の「改正労働基準法に係る質疑応答」(2010(平成22)年4月1日施行時)を独自に編集したQ&A形式で解説します。
なお、制度の基本的な内容については、次の記事をご覧ください。
1時間単位の有給休暇(時間単位年休)とは?制度の内容・労使協定の記載例を解説
1時間未満の時間数を時間単位年休の取得単位とすることの可否
質問
例えば、15分や30分など、1時間未満の時間数を時間単位年休の取得単位とすることは可能でしょうか。
回答
時間単位年休の取得単位となる時間は、整数の時間数(1時間単位)を指し、1時間に満たないものは含まれないと解されます。
1日の所定労働時間に1時間に満たない端数がある場合
質問
時間単位年休においては、1日の所定労働時間のうち1時間に満たない時間数は、1時間に切り上げることとされていますが、例えば、1日の所定労働時間が7.25時間(7時間15分)の場合において、これを1日でみて8時間に切り上げるのではなく、5日分でみて計36.25時間(7.25時間×5日)を切り上げた「37時間」とすることは可能でしょうか。
回答
年次有給休暇は日単位(労働日単位)で付与され、取得することが原則であるため、1日分の年次有給休暇が、何時間分の時間単位年休に相当するかを労使協定で定めることが必要とされています。
その際、労使協定で定める時間数は、「1日の所定労働時間数を下回らないもの」とされていることから、1時間に満たない時間数については、1日ごとに、1時間に切り上げる必要があります(労働基準法施行規則第24条の4第一号)。
したがって、上記の事例では、1日の時間数を8時間に切り上げる必要があるため、5日分の合計時間は40時間となり、これを37時間として取り扱うことは適切ではありません。
半日単位の年次有給休暇(半日年休)を取得した場合の管理
質問
労働基準法では、行政通達に基づき、年次有給休暇を半日単位で取得すること(以下、「半日年休」といいます)が認められていますが、半日年休についても、時間単位年休と同様に、取得日数の上限を年5日以内としなければならないのでしょうか。
また、半日年休を取得した場合、時間単位年休の残りの時間数はどのように管理すればいいのでしょうか。
回答
半日年休は、時間単位年休とは異なり、取得日数の上限はありません。
また、基本的には、半日年休を取得しても、時間単位年休で取得できる時間数に影響を与えるものではありません。
例えば、年次有給休暇の残日数が20日(うち時間単位年休として5日)の場合において、半日年休を取得したときは、半日年休として0.5日分取得したものと捉え、年次有給休暇の残日数は「19.5日(うち時間単位年休として5日)」となります(時間単位年休で取得できる時間数は減らない)。
ただし、半日年休の運用については、事業場に委ねられているため、半日年休を取得した場合の時間数について、これと異なる運用を労使協定によって定めることは問題ないと解されます(ただし、法律を下回らないことが必要です)。
時間単位年休を取得できる事業場から、できない事業場へ異動した場合
質問
労働者が、時間単位年休を取得できる事業場から、取得できない事業場へ異動した場合、異動時点で残っている1日未満の時間単位年休はどのように取り扱えばいいのでしょうか。
回答
労使協定において、時間単位年休を事業場単位や部署単位で適用すること自体は、問題ありません。
ただし、労働者の年次有給休暇にかかる権利が阻害されないように、時間単位年休を取得できない事業場に異動した場合には、異動時点で残っている1日未満の時間単位年休は、1日単位の年次有給休暇に切り上げるなどの措置を講じることを、労使協定に定めておくことが望ましいと解されます。
また、時間単位年休の運用を終了する(当年度は労使協定が締結されたが、次年度に労使協定が締結されなかった場合)などの場合においても、同様です。
年度の途中で所定労働時間が変更された場合
質問
年度の途中で所定労働時間が変更された場合、時間単位で取得できる時間数はどうなるのでしょうか。
回答
年度の途中で所定労働時間が変更された場合、1日単位に満たず時間単位で保有している部分については、変更後の所定労働時間に比例して時間数が変更されることとなります。
例えば、時間単位年休が3日と3時間残っている状況において、年度の途中において、1日所定労働時間が8時間から4時間に変更された場合には、3日と「8分の3日」残っているものと捉え、所定労働時間に比例して(変更後の所定労働時間に8分の3を乗じて)変更します。
変更前 | 変更後 |
3日(1日あたりの時間数は8時間)と3時間 | 3日(1日あたりの時間数は4時間)と2時間(※) |
(※)4時間に8分の3を乗じると1.5時間となりますが、1時間未満の端数は切り上げます。
時間単位年休の残日数(残時間)の管理の仕方
質問
時間単位年休の管理の方法として、例えば、所定労働時間が8時間の事業場で、時間単位年休を5日分(計40時間分)と定めている場合において、1時間の時間単位年休を取得したときの残日数(残時間)は、【A】4日と7時間(日数+時間)、または、【B】39時間(時間のみ)のどちらで管理すべきでしょうか。
回答
時間単位年休を取得できる部分の日数であっても、日単位で取得するか時間単位で取得するかは請求時の労働者の意思によるため、考え方としては【A】(日数+時間)で管理すべきと解されます。
時間単位年休の残日数(残時間)の管理方法に関する詳細は、次の記事をご覧ください。
「時間単位年休」の残日数(残時間)管理と、繰り越し方法(端数の取り扱い)について解説【労働基準法】
協定時間を超える時間単位年休の取得の可否
質問
もし時間単位年休にかかる労使協定がない、または、労使協定で定めた限度を超える時間単位年休の申請があった場合、たとえ使用者が認めていたとしても、法的には年次有給休暇の取得として扱われないのでしょうか。
回答
使用者は、労使協定がない場合、または労使協定で定めた限度を超える場合には、たとえ労働者から請求があったとしても、労働基準法に抵触することから、時間単位年休を与えることは認められません。
年5日を超える時間単位年休の請求がある場合
質問
前年度からの繰越時間分の時間単位年休があるという理由で、繰越時間分を含めて5日を超える時間単位年休を労働者が請求した場合、使用者はこれを与えなければ違法となるのでしょうか。
回答
次年度に繰り越される年次有給休暇の残日数の中に、計算上、時間単位年休の残りが含まれるように見られる場合であっても、時間単位年休の取得が可能なのは、当該次年度においては合計5日以内の範囲です。
その範囲を超える時間単位年休を労働者が請求した場合は、法に定める5日以内の範囲を超えており、法律上与えることができないため、5日を超えた年次有給休暇を使用者が与えないとしても違法とはなりません。
なお、使用者が法定の付与日数を超える年次有給休暇を付与している場合には、当該部分については、法律の規制は及ばないことから、時間単位年休を与えることは可能です。
1日の年次有給休暇を時間単位年休で取得することの可否
質問
1日の年次有給休暇を取得する際には、原則として、時間単位ではなく日単位により取得するものであると解されますが、日によって所定労働時間が異なる労働者で、所定労働時間が2時間と8時間を交互に繰り返すような場合(時間単位年休の1日の時間数は5時間とする)、所定労働時間が2時間の日に1日の年次有給休暇を取得する場合、日単位ではなく時間単位で2時間の年次有給休暇を取得するという取り扱いは可能でしょうか。
回答
時間単位年休は日単位による取得の例外として認められるものであり、1日の年次有給休暇を取得した場合には、原則として1日の年次有給休暇が取得されたものとして取り扱うこととなります。
ただし、事例のような場合に1日の年次有給休暇を時間単位で取得させたとしても、労働者に不利益は生じず、むしろ有利に取り扱うものであることから、違法な取り扱いとはならないと解されます。
時間単位年休の請求に対する時季変更権
質問
例えば、午前9時から午前10時までの1時間の請求が行われた場合、事業運営に支障が生じることを理由として、使用者が時季変更権(労働基準法第39条第5項)を行使し、これを同じ日の午後1時から午後2時へ変更し、または翌日の午前9時から午前10時に変更することなどは可能でしょうか。
回答
時間単位年休についても、日単位の年次有給休暇と同様に、時季変更権を行使することは可能であると解されます。
ただし、使用者には他の日時を指定すべき義務はありません。
また、労働者には時季変更で指定された時季に時間単位年休を取得する義務が生じるものでもありませんので、新たに他の時間に時間単位年休を取得することができます。
時間帯によって賃金額が異なる場合
質問
時間帯で金額が異なる時間給で勤務する労働者がいる場合、時間単位年休の賃金については、時間単位年休を取得した時間帯の約定された時間給単価で計算することとなるのでしょうか。
回答
年次有給休暇を取得した際の賃金は、①平均賃金、②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、または③標準報酬日額に相当する金額のいずれかを、その日の所定労働時間数で除し、時間単位年休を取得した時間に応じて支払うこととなります(労働基準法第39条第7項、同施行規則第25条第2項・第3項)。
したがって、必ずしも時間単位年休を取得した時間帯の時間給単価によって計算することにはなりません。