【2026年法改正】「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」対策の義務化について解説【男女雇用機会均等法】

はじめに

男女雇用機会均等法が改正され、事業主に対し、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントについて、雇用管理上の措置を講じることが義務付けられました。

本改正は、2026年10月1日に施行されます。

求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの定義

求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」とは、次の3つの要素をすべて満たすものをいいます(男女雇用機会均等法第13条第1項)。

求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの定義

  1. 求職活動等における行為であること【定義1】
  2. 性的な言動であること【定義2】
  3. 求職者等の求職活動等が阻害されること【定義3】

以下、順に解説します。

「求職活動等」とは【定義1】

求職活動等」とは、求職者等(求職者その他これに類する者として厚生労働省令で定める者をいう)が行う求職活動や、求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動を指し、例えば、以下のものが含まれます(求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針(以下、「指針」といいます))。

なお、SNSなどオンラインを介したものや、オンライン上で行われるものも含まれます。

また、事業主が雇用する労働者が通常就業している場所で行われるものに限りません。

求職活動等の例

  • 企業の採用面接への参加
  • 企業の就職説明会への参加
  • 企業の雇用する労働者への訪問(OB・OG訪問など)
  • インターンシップへの参加
  • 教育実習、看護実習などの実習の受講

「性的な言動」とは【定義2】

性的な言動」とは、「性的な内容の発言」および「性的な行動」をいいます。

「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布することなどが含まれます

また、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布することなどが含まれます

「求職者等の求職活動等が阻害される」とは【定義3】

求職者等の求職活動等が阻害される」とは、求職活動等において行われる求職者等の意に反する性的な言動により、求職者等の求職活動等が阻害され、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、当該求職者等が求職活動等を行う上で看過できない程度の支障が生じることをいいます

典型的な例として、次のようなものがあります。

求職者等の求職活動等が阻害される例

  • 少人数の説明会において、労働者が求職者等の腰や胸などに触ったため、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること
  • 企業が実施するインターンシップにおいて、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行ったため、当該求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと
  • 企業が実施するインターンシップにおいて、性的な内容を含むポスターの掲示や画面の表示等を行っているため、求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと
  • 面接中、面接官を務める労働者から性的な事実に関する質問を受け、求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること
  • 求職者等が労働者への訪問を行った際、当該労働者に性的な関係を求められ、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること
  • インターンシップ中に労働者が求職者等を執拗に私的な食事に誘い、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること

事業主が講ずべき雇用管理上の措置

男女雇用機会均等法では、事業主は、求職者等による求職活動等において行われる、当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により、当該求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、当該求職者等からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないと定められています(男女雇用機会均等法第13条第1項)。

具体的には、事業主は、次の措置を講じる必要があります。

事業主が講ずべき雇用管理上の措置

  1. 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  4. 1.から3.までの措置と併せて講ずべき措置

1.事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発

方針の明確化・周知

事業主として、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容、および求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することが必要です

周知の例としては、当該方針を、①就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に定めること、②社内報・パンフレット・社内ホームページなどに掲載すること、③トップメッセージとして社内に発信すること、④研修・講習を実施することなどが考えられます。

就業規則(服務規律)の整備

就業規則その他の職場における服務規律などを定めた文書において、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントにかかる性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発することなどが考えられます

求職活動等に関するルールの制定・周知・啓発

労働者に対しては、求職者等と面談などを行う際の規則を定める必要があります。

例えば、面談を行う時間や場所の指定、実施体制、求職者等との連絡のやり取りに用いるSNSの種類の指定などを行うことが考えられます。

そして、当該ルールを周知・啓発するための研修、講習などを実施することも必要です。

また、求職者等に対しては、上記の規則を踏まえ、面談時における留意事項を、会社のホームページや、パンフレット等の広報手段を用いて周知することが考えられます

2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

相談窓口の設置・周知

例えば、①相談に対応する担当者をあらかじめ定めること、②相談に対応するための制度を設けること、③外部の機関に相談への対応を委託することなどが考えられます。

また、求職者等に対し、パンフレット、ホームページ等によって、相談窓口を周知することが必要となります

相談窓口の担当者による適切な対応

相談窓口が機能するためには、単に相談窓口を設置するだけでなく、相談窓口の担当者が、相談の内容や状況に応じて適切に対応できるようにしておくことが必要です。

例えば、①状況に応じて、相談窓口の担当者と関係部門とが連携を図ることができる仕組みを整備すること、②あらかじめマニュアルを作成しておき、マニュアルに記載された留意点などに基づき対応すること、③相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うことなどが考えられます。

3.求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

事実関係の把握

求職活動等におけるセクシュアルハラスメントが発生した場合には、まず、事案にかかる事実関係を迅速かつ正確に確認することが必要です。

例えば、相談窓口の担当者、人事部門または専門の委員会などが、相談を行った求職者等(以下、「相談者」といいます)と、セクシュアルハラスメントにかかる性的な言動をした行為者(以下、「行為者」といいます)の双方から事実関係を確認することが必要です。

また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取するなどの措置を講ずることが必要です。

その際、事業主は、労働者が事実関係の確認など、事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとされています(男女雇用機会均等法第13条第2項)。

被害者に対する配慮

被害の事実が確認された場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うことが必要です。

例えば、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者を引き離すための対応、行為者の謝罪、人事担当者による被害者への相談対応などの措置を講ずることなどが考えられます。

加害者に対する措置

求職活動等におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者(加害者)に対する措置を適正に行う必要があります

例えば、就業規則などで定めた社内規定に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずることが必要です。

また、これと併せて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者を引き離すための対応、行為者の謝罪などの措置を講ずることが必要になることもあります。

再発防止に向けた措置

被害の再発防止に向けて、例えば、労働者に対して求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習などを改めて実施することなどが必要です。