「日またぎ勤務(2暦日にまたがる勤務)」をした場合の割増賃金と年次有給休暇の取り扱いを解説

はじめに
労務管理では、労働者の労働時間を適切に把握し、時間外労働や休日労働に対する割増賃金を適正に支払う必要があります。
このとき、労働者が午前0時(午後12時)をまたいで、2暦日にわたって労働した場合(以下、「日またぎ勤務」といいます)に、割増賃金や年次有給休暇をどのように取り扱えばよいのか、問題になることがあります。
本稿では、日またぎ勤務をした場合の割増賃金と年次有給休暇の取り扱いを解説します。
日またぎ勤務と法定労働時間
日またぎ勤務と法定労働時間
労働基準法は、法定労働時間として、「1日8時間」および「1週40時間」を定めています(労働基準法第32条)。
そして、法定労働時間を超えて時間外労働をした場合には、その時間に対して、割増賃金(通常の賃金に25%以上を割り増しする)を支払う必要があります(労働基準法第37条)。
【事例1】(所定労働時間の途中で日をまたぐ場合)
次の事例のように、所定労働時間の途中で日またぎ勤務を行った場合、法定労働時間の「1日」はどのように把握すべきでしょうか。
【事例1】
- 所定労働時間:午後8時から(翌日の)午前5時まで(途中で1時間の休憩)
- 所定時間外労働:午前5時から午前7時まで
行政通達では、継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも一勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「1日」の労働とすることとされています(昭和63年1月1日基発1号)。
上記の事例では、法定労働時間は始業時刻の午後8時から起算して「1日」を把握すべきであり、午前0時(午後12時)をもってリセットされません。
すると、翌日の午前5時をもって8時間(法定労働時間)に達することから、午前5時から午前7時までが法定労働時間を超える時間外労働となり、割増賃金の対象となります。
なお、午後10時から午前5時までの間は、深夜労働の割増賃金が加算されます。
| 労働時間 | 時間外労働 (25%) | 深夜労働 (25%) |
| 午後8時から午後10時まで | - | - |
| 午後10時から午前5時まで | - | ○ |
| 午前5時から午前7時まで | ○ | - |
【事例2】(時間外労働が翌日に及んだ場合)
次の事例のように、法定労働時間を超える時間外労働が日をまたいで行われた場合、どこまでが時間外労働になるでしょうか。
【事例2】
- 所定労働時間:午前9時から午後6時まで(途中で1時間の休憩)
- 時間外労働:午後6時から(翌日の)午前2時まで
上記の事例では、前掲の行政通達により、始業時刻の午前9時から起算して、翌日の午前2時までを1勤務として把握すべきであり、午前0時(午後12時)をもってリセットされません。
すると、午後6時をもって8時間(法定労働時間)に達することから、午後6時から(翌日の)午前2時までが時間外労働となり、割増賃金の対象となります。
なお、午後10時から午前2時までの間は、深夜労働の割増賃金も加算されます。
| 労働時間 | 時間外労働 (25%) | 深夜労働 (25%) |
| 午前9時から午後6時まで | - | - |
| 午後6時から午後10時まで | ○ | - |
| 午後10時から午前2時まで | ○ | ○ |
【事例3】(時間外労働が翌日の所定労働時間に及んだ場合)
次の事例のように、時間外労働が日をまたいで行われ、かつ、翌日の所定労働時間以降も労働した場合、どこまでが時間外労働になるでしょうか。
【事例3】
- 所定労働時間:午前9時から午後6時まで(途中で1時間の休憩)(翌日の所定労働時間も同じ)
- 時間外労働:午後6時から(翌日の)午前11時まで
行政通達では、時間外労働が継続して翌日の所定労働時間に及んだ場合には、翌日の所定労働時間の始期までの割増賃金を支払えば法違反にはならないとされています(平成11年3月31日基発168号)。
上記の事例では、時間外労働に伴う割増賃金が発生するのは、翌日の所定労働時間の始期である午前9時までであり、午前9時以降に行われた2時間の労働は、通常の労働時間として取り扱い、割増賃金を支払う必要はありません。
| 労働時間 | 時間外労働 (25%) | 深夜労働 (25%) |
| 午前9時から午後6時まで | - | - |
| 午後6時から午後10時まで | ○ | - |
| 午後10時から午前5時まで | ○ | ○ |
| 午前5時から午前9時まで | ○ | - |
| 午前9時から午前11時まで | - | - |
日またぎ勤務と休日労働
労働基準法では、原則として、毎週少なくとも1回(1日)の休日を与えなければならないと定めており(週休制の原則)、この休日のことを、「法定休日」といいます(労働基準法第35条第1項)。
そして、法定休日に労働した場合には、その時間に対して、割増賃金(通常の賃金に35%以上を割り増しする)を支払う必要があります(労働基準法第37条)。
法定休日は、1暦日(午前0時から午後12時まで)であることから、日付が変わる午前0時(午後12時)を境に、暦日で切り分けて割増賃金率を適用します。
例えば、法定休日を日曜日と定める会社では、法定休日でない日(土曜日)に勤務を開始し、日をまたぎ、法定休日(日曜日)に勤務が及ぶ場合(【事例4】のケース)、法定休日(日曜日)に勤務を開始し、日をまたぎ、法定休日でない日(月曜日)に勤務が及ぶ場合(【事例5】のケース)のいずれの場合にも、午後12時(午前0時)を境に割増賃金率が変わります。
【事例4】(法定休日でない日に勤務を開始し、日をまたぎ、法定休日に勤務が及ぶ場合)
次の事例のように、法定休日でない日に勤務を開始し、日をまたぎ、法定休日に勤務が及ぶ場合は、どこまでが法定休日労働になるでしょうか。
【事例4】
- 所定労働時間:午前9時から午後6時まで(途中で1時間の休憩)
- 時間外労働:午後6時から(翌日の)午前2時まで(翌日は法定休日とする)
行政通達では、法定休日は、1日単位で与える必要があり、ここでいう「1日」とは、原則として、午前0時から午後12時までの1暦日をいうとされています(昭和23年4月5日基発535号)。
なお、例外として、自動車運転手や旅館の事業のように、番方編成による交替制(8時間3交替勤務など)が就業規則などで制度化され、交替時間が規則的に定められている場合には、連続24時間の休息を休日として与えることが認められることがあります(昭和63年3月14日基発150号)。
上記の事例では、午後6時から午後12時までは、時間外労働として、25%以上の割増率で計算した割増率を支払い(うち午後10時から午後12時までは、深夜労働として割増率25%を加算する)、午前0時から午前2時までは法定休日労働として、35%以上の割増率で計算した割増賃金(深夜労働として25%の割増率も加算する)を支払う必要があります。
| 労働時間 | 時間外労働 (25%) | 深夜労働 (25%) | 休日労働 (35%) |
| 午前9時から午後6時まで | - | - | - |
| 午後6時から午後10時まで | ○ | - | - |
| 午後10時から午後12時まで | ○ | ○ | - |
| 午前0時から午前2時まで | - (※) | ○ | ○ (※) |
(※)時間外労働と休日労働の割増賃金が同時に発生することはありません。
【事例5】(法定休日に勤務を開始し、日をまたぎ、法定休日でない日に勤務が及ぶ場合)
次の事例のように、法定休日に勤務を開始し、日をまたぎ、法定休日でない日に勤務が及ぶ場合は、どこまでが法定休日労働になるでしょうか。
【事例5】
- 休日労働:午後6時から(翌日の)午前2時まで
- 翌日の所定労働時間:午前9時から午後6時まで(途中で1時間の休憩)
上記の事例では、前掲の行政通達に基づき、午後6時から午後12時までは休日労働として、35%以上の割増率で計算した割増賃金(午後10時以降は深夜労働として25%の割増率を加算する)を支払い、午前0時から午前2時までは、翌日の所定労働時間に対する時間外労働として、25%以上の割増率で計算した割増賃金を支払う(深夜労働として割増率25%も加算する)必要があります。
| 労働時間 | 時間外労働 (25%) | 深夜労働 (25%) | 休日労働 (35%) |
| 午後6時から午後10時まで | - | - | ○ |
| 午後10時から午後12時まで | - | ○ | ○ |
| 午前0時から午前2時まで | ○ | ○ | - |
日またぎ勤務と年次有給休暇の取得
原則
労働基準法では、「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と定めています(労働基準法第39条第1項)。
そして、行政通達では、労働基準法第39条の「労働日」は、原則として暦日計算によるべきものであるとされていますので、午前0時から午後12時までの暦日24時間をもって、1労働日の年次有給休暇として扱われます(昭和63年3月14日基発150号)。
例えば、一昼夜交替制(一般に、24時間勤務して24時間休むサイクルを繰り返す勤務形態をいいます)など、1勤務の所定労働時間が2暦日に及ぶ場合には、年次有給休暇を取得すると、原則として「2労働日」の年次有給休暇を取得したことになります。
例外
一方で、暦日計算の原則をそのまま適用すると、例えば、1日8時間の所定労働時間が2暦日にわたるような働き方(所定労働時間が、午後9時から(翌日)午前5時までなど)の場合、不合理な結果になることもあります。
そこで、行政通達では、交替制(8時間3交替制勤務など)における2日にわたる1勤務、および常夜勤勤務者の1勤務については、当該勤務時間を含む継続24時間を1労働日として取り扱って差支えないとされています(昭和63年3月14日基発150号)。

