「一般事業主行動計画」とは?従業員数101人以上の企業の取り組み内容を解説【次世代育成支援対策推進法】

はじめに
次世代育成支援対策推進法では、常時雇用する労働者数が101人以上の企業に対して、「一般事業主行動計画」を策定し、都道府県労働局に届け出ることなどを義務付けています(次世代育成支援対策推進法第12条)。
本稿では、「一般事業主行動計画」について、企業が取り組むべき内容を解説します。
次世代育成支援対策推進法と一般事業主行動計画
次世代育成支援対策推進法
「次世代育成支援対策推進法」では、我が国における急速な少子化の進行、家庭および地域を取り巻く環境の変化にかんがみ、国、地方公共団体、事業主および国民に対して、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備などの取り組みを行う責務を定めています(次世代育成支援対策推進法第1条、第2条)。
次世代育成支援対策推進法は、2005(平成17)年4月1日に10年間の時限立法として施行され、その後の法改正により、現在は2035(令和17)年3月31日まで延長されています。
一般事業主行動計画
次世代育成支援対策推進法は、一般事業主(※1)のうち、常時雇用する労働者の数(※2)が100人を超えるものに対し、「一般事業主行動計画」を策定し、その旨を都道府県労働局に届け出ると共に、これを公表しなければならないとしています(次世代育成支援対策推進法第12条)。
なお、100人以下の事業主は、努力義務とされています(次世代育成支援対策推進法第12条第5項)。
(※1)「一般事業主」とは、国および地方公共団体以外の事業主をいいます。
(※2)正社員、パート、アルバイトなどの名称にかかわらず、①期間の定めなく雇用されている者、②過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者、③雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者のいずれかに該当する労働者をいいます。
一般事業主行動計画の内容
一般事業主行動計画においては、次に掲げる事項を定めるものとされています(次世代育成支援対策推進法第12条第2項)。
一般事業主行動計画の内容
- 計画期間
- 次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標
- 実施しようとする次世代育成支援対策の内容およびその実施時期
1.計画期間
一般事業主行動計画の計画期間については、各企業の実情に応じて、次世代育成支援対策を効果的かつ適切に実施することができる期間とすることが必要であり、2025(令和7)年度から2034(令和16)年度までの10年間を、おおむね2年間から5年間までの範囲に区切り、計画を策定することが望ましいとされています(行動計画策定指針五の2(3))。
2.次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標
状況の把握・分析と数値目標の設定
2025(令和7)年4月1日施行の法改正により、常時雇用する労働者数が101人以上の企業は、一般事業主行動計画の策定時において、直近の事業年度における「男性労働者の育児休業等の取得状況」および「労働時間の状況」を把握した上で、当該状況に関する数値目標を設定することが義務付けられています(次世代育成支援対策推進法第12条第3項)。
なお、「直近の事業年度」において配偶者が出産した男性労働者がいない場合も、上記の状況を把握し、改善すべき事情を分析する必要があります。
この場合、策定・変更する前の一般事業主行動計画期間など、「直近の事業年度」より前の状況を把握・分析することが考えられます。
状況の把握・分析
育児休業等の取得状況
「育児休業等の取得状況」とは、男性労働者の「育児休業等取得率(※1)」または男性労働者の「育児休業等および育児目的休暇の取得率(※2)」の状況をいいます。
(※1)「育児休業等」とは、育児・介護休業法に定める①育児休業、②出生時育児休業、③3歳未満の子を育てる労働者を対象とした育児休業(育児のための所定労働時間の短縮措置を講じない場合)、④育児・介護休業法第24条第1項に規定する小学校就学前の子を育てる労働者を対象とした育児休業をいいます。
(※2)小学校就学の始期に達するまでの子を養育する男性労働者を雇用する事業主が講ずる育児を目的とした休暇制度であり、育児休業等、子の看護等休暇、養育両立支援休暇、年次有給休暇を除きます。
分析の観点としては、「男女がともに育児休業等、育児目的休暇制度等を取得できる状況にあるか」、「希望どおりの期間が取得できる状況にあるか」、「周囲に気兼ねなく育児休業等を取得できるよう、業務体制の見直しや代替業務に対応する体制の整備等が行われているか」といった観点から行います(行動計画策定指針五の2(4))。
労働時間の状況
「労働時間の状況」とは、フルタイム労働者一人当たりの各月ごとの法定時間外労働および法定休日労働の合計時間数等の状況をいいます。
対象となる労働者の範囲は、事業主が雇用する労働者のうち、短時間労働者を除いたすべての労働者です。
また、管理監督者や事業場外みなし労働時間制の適用を受ける労働者等であって、労働時間管理の方法が他の労働者と異なっている労働者も、把握の対象となります。
この場合、その他の労働者とは分けて把握することが考えられます。
分析の観点としては、「長時間労働ゆえに仕事と家庭の両立が困難となっていないか。また、子育てを行う労働者のみならず、すべての労働者について長時間労働になっていないか」、「長時間労働が、個々の職場だけでなく、組織全体の問題として対応されているか」といった観点から行います(行動計画策定指針五の2(4))。
数値目標の設定
常時雇用する労働者数が101人以上の企業は、2025(令和7)年4月1日以降に策定または変更する行動計画から、自社の課題解消のための目標設定に加え、「育児休業等の取得状況」および「労働時間の状況」にかかる数値目標を設定することが求められています。
数値目標は、実数、割合、倍数など、数値を用いるものであればいずれでも構いません。
育児休業等の取得に係る数値目標の例
- 計画期間における男性の平均育児休業取得率を●%以上とする
- 男性の育児休業取得期間2週間以上の割合を●%以上とする
- 男性労働者で育児休業を取得した者をそれぞれ●名以上とする
労働時間の状況に係る数値目標の例
- フルタイム労働者一人当たりの各月ごとの法定時間外労働・法定休日労働の合計時間数を●時間未満とする(または●%削減する)
- フルタイム労働者のうち、25歳~39歳の労働者の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月●時間未満とする(または●%削減する)
3.実施しようとする次世代育成支援対策の内容およびその実施時期
現状把握・分析により得られた情報を踏まえて、行動計画の内容およびその実施時期を設定します。
行動計画の届出・公表・周知
行動計画を策定・変更した場合、「一般事業主行動計画策定・変更届」を都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に届け出る必要があります。
さらに、行動計画を策定・変更した場合、外部に公表するとともに、すべての労働者に周知する必要があります(行動計画策定指針五の2(6))。
外部への公表については、厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」や、自社のホームページにおいて公表するなど、適切な方法で公表する必要があります。
また、労働者への周知については、すべての労働者が知り得るように、書面の交付や電子メールによる送付など、適切な方法で周知するとともに、啓発資料の作成・配布、研修・講習の実施などを併せて行うことが望ましいとされています。
計画の点検・目標達成
計画の実施状況の点検
一般事業主行動計画の推進に当たっては、定期的に、数値目標の達成状況や計画の実施状況の点検・評価を実施し、その結果をその後の対策や計画に反映させる、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のサイクル(PDCAサイクル)を確立することが重要です。
さらに、一般事業主自らがPDCAサイクルの中で、実効性のある対策の実施や計画の見直しなどを行うことを通じて、下記の目標の達成にかかる認定の取得に至ることが期待されています。
認定の取得
企業の自発的な次世代育成支援に関する取り組みを促すため、行動計画に定めた目標を達成したなど一定の基準を満たした企業は、申請することにより、「くるみん認定」、「トライくるみん認定」、「プラチナくるみん認定(特例認定)」を受けることができます。
認定を受けた企業は、子育てサポート企業として、「認定マーク(愛称:くるみん、トライくるみん)」、「特例認定マーク(愛称:プラチナくるみん)」を商品や求人広告などに付けることで、子育てサポート企業であることをPRすることができます。
罰則
一般事業主が、一般事業主行動計画の届出または公表をしない場合には、厚生労働大臣は、当該事業主に対し、相当の期間を定めて届出または公表をすべきことを勧告することができるとされています(次世代育成支援対策推進法第12条第7項)。
なお、届出・公表義務に違反した場合でも、罰則はありません。

