「リファラル採用」とは?制度導入時の留意点と就業規則の規定例(記載例)を解説

はじめに
人手不足が続くなか、採用手法として、従業員の知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」に取り組む会社が増えています。
採用に至った場合には、紹介した従業員に紹介料や報奨金などの名目で報酬を支払うことがありますが、報酬の支払い方によっては、職業安定法に抵触するおそれがあります。
本稿では、リファラル採用の制度を導入する際の留意点と、就業規則の規定例(記載例)を解説します。
リファラル採用とは
リファラル採用とは
「リファラル採用」とは、一般に、従業員が、自社に合うと思われる知人・友人などを会社に紹介し、会社が選考を行って採用する手法をいいます。
紹介による場合でも、選考は通常の採用基準により行い、紹介者は合否に関与しないことが一般的です。
リファラル採用のメリットとして、募集にかかる採用コストを抑えやすい、紹介者が職場の実情や雰囲気に合うと思われる候補者を紹介するため、ミスマッチを防ぎやすいことなどが挙げられます。
リファラル採用の導入状況(統計)
東京商工リサーチが2026年6月に実施した『企業の「採用」に関するアンケート調査』によると、リファラル採用を制度として導入している会社は、全体の49.2%でした(有効回答6,475社)。
また、規模別では、大企業が60.4%、中小企業が48.3%となっており、ほぼ半数の会社で導入されています。
職業安定法との関係
リファラル採用では、採用に至った場合に、紹介者に対して、紹介料、報奨金などの名目で報酬を支払うことがあります。
報酬を支払う際には、職業安定法との関係に留意する必要があります。
職業安定法における労働者の募集
職業安定法において、「労働者の募集」とは、労働者を雇用しようとする者が、自らまたは他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することをいいます(職業安定法第4条第5項)。
会社が従業員に友人や知人への声かけを呼びかけることは、会社が従業員に委託して勧誘させることになりますので、「労働者の募集」にあたると解されます。
そして、職業安定法では、労働者の募集を行う者は、その従業員で募集に従事するものに対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合などを除き、報酬を与えてはならないと定めています(職業安定法第40条)。
これに違反した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています(職業安定法第65条第6号)。
この定めは、募集に従事する者への報酬が応募者の人数に比例して支払われると、応募者を増やそうとして不適切な勧誘が行われやすくなるという弊害を防ぐ趣旨とされています。
このことから、紹介の報酬は、「賃金」等として支給するのであれば問題ありませんが、それ以外の形で支給すると、職業安定法に抵触するおそれがあります。
対応上のポイント
実務上は、職業安定法に抵触しないよう、紹介を「従業員の業務」の一環と位置づけたうえで、報酬を賃金として支給する方法がとられます。
具体的には、次のような対応が考えられます。
対応のポイント
- 紹介を従業員の業務(会社の採用活動への協力)の一環として位置づける
- 報酬を紹介活動の対価としての「賃金」と位置づけ、支給条件(要件・金額・時期など)を、就業規則(賃金規程)など社内規程で定める
- 報酬を給与明細書にも明示し、通常の賃金と同様に取り扱う
- 報酬額を他の特別手当等との均衡を失する高額にしない ・紹介人数のノルマを設けない
なお、紹介を業務とする以上、勤務時間外に候補者と面談した場合の取り扱い、費用の精算、活動中の事故の労災の取り扱いなども、あらかじめ決めておく必要があります。
なお、筆者が確認した範囲では、リファラル採用の報酬と職業安定法第40条との関係を直接示した行政通達や裁判例は見当たらず、上記の実務は、条文の文言を踏まえた解釈によるものです。
形式的に「賃金」と定めておけば何でも許されるということではなく、報酬額が社会通念上高額でないかなど、運用の実態も問われると考えます。
制度を導入する際には、念のため、所轄の労働局等に確認しておくことをお勧めします。
報酬額の目安(統計)
報酬額について、法律上の決まりはありませんが、前述の東京商工リサーチの調査では、リファラル採用を取り入れている会社が、紹介者が採用に至った際に、紹介した従業員に支払う報酬(1人あたりの最大額)は、次のとおりです。
【表】リファラル採用の報酬(1人あたりの最大額)
| 報酬額 | 割合 |
| 報酬は支払っていない | 40.9% |
| 1万円~10万円未満 | 20.7% |
| 10万円~20万円未満 | 9.8% |
| 20万円~30万円未満 | 4.3% |
| 100万円以上 | 0.8% |
| 明確な規定はない | 20.4% |
「報酬は支払っていない」会社が最も多く、支払っている会社では、「1万円~10万円未満」が最多でした。
筆者の実務上の感覚でも、報酬額を1件の紹介につき10万円程度に設定している実例が多いと感じます。
また、基本額を設定しておき、特に管理職や専門性の高い職種では増額し、パートなどの非正規雇用では減額する例もあります。
高額にするほどよいものではなく、高額にし過ぎると金銭目的の紹介が増えて、ミスマッチにつながるおそれもあります。
報酬を支給する際の留意点
社会保険上の留意点
会社が制度として定めて支給する報酬は、労働の対償として、社会保険において、通常の給与・賞与と同様に、社会保険料の対象となります。
特に、支給回数に留意する必要があります。
健康保険・厚生年金保険では、「賞与」とは、年3回以下の支給のものをいい、年4回以上支給されるものは、賞与ではなく「報酬」として、標準報酬月額の対象となります。
そのため、紹介に対する報酬を「賞与」として支給する場合でも、通常の賞与と合わせて、年間の支給回数が4回以上になると、社会保険上は「報酬」として扱われ、毎月の社会保険料に影響する可能性があります。
例えば、紹介に対する報酬を複数回に分けて支給する場合や、複数名を紹介した従業員がいる場合に留意する必要があります。
労働基準法上の留意点
紹介に対する報酬は「賃金」にあたり、通常の賃金と同様に、労働基準法の賃金支払いのルールが適用されます。
例えば、候補者が早期に退職した場合に、紹介者に支給済みの報酬の返還を求める定めは、賠償予定の禁止に抵触するおそれがあります(労働基準法第16条)。
このことから、候補者の行為について、紹介者に責任を問うことは、原則としてできないと考えます。
制度設計・運用のポイント
一般に、リファラル採用の制度を設計・運用する際には、次の点に留意する必要があります。
リファラル採用の制度設計・運用のポイント
- ノルマ・不利益取り扱いの禁止
- 選考の公正(紹介者を採否に関与させない)
- 個人情報の保護(候補者本人の同意を得て、必要最小限の情報のみ取得する)
- 労働条件の明示(会社が行う)
- 不採用時の配慮
- 禁止事項の明確化(応募の強要、優越的地位の利用、前職の秘密情報の持込みの要求など)
- 定期的な周知・見直し
ノルマ・不利益取り扱いの禁止
紹介人数のノルマを設けたり、紹介しないことを理由に不利益な取り扱いをしたりすることは行わないようにします。
また、紹介した人が不採用になったことや、入社後に期待どおり活躍しないことを理由に、紹介者の評価を下げる、責任を追及するといった対応も行わないようにします。
労働条件の明示
募集条件の認識のずれによるトラブルを防止するために、業務内容や労働条件の明示は、会社が書面等により行い、紹介者に説明を任せないようにします(職業安定法第5条の3)。
定期的な周知・見直し
実務上、制度の導入当初は紹介があっても、しばらく経つと、紹介があまり行われなくなる例も少なくありません。
制度や求める人材像を定期的に周知し、紹介件数、採用実績、定着状況などを確認して、制度を見直すことが重要です。
リファラル採用の就業規則の規定例(記載例)
報酬を、賃金として就業規則(賃金規程)に定める場合の規定例(記載例)は、次のとおりです。
リファラル採用の規定例(記載例)
(紹介活動)
第1条 従業員が、採用候補者を会社に紹介する活動(以下、「紹介活動」という)は、会社の採用活動への協力として、従業員の業務の一環として行うものとする。
2 紹介活動を行うか否か、および紹介する人数は、従業員の自由意思に委ねるものとし、会社は、紹介人数のノルマを設けない。
3 会社が事前に承認した紹介活動に要した時間は、労働時間として取り扱い、必要かつ相当な費用は、会社の定めるところにより精算する。
(紹介にかかる報酬)
第2条 会社は、従業員が紹介した候補者が採用され、次の各号の時点で引き続き在籍している場合、紹介活動の対価として、紹介した従業員に対して報酬(賞与)を支給する。
(1)候補者が入社したとき…5万円
(2)候補者が入社後1年を経過したとき…5万円
2 報酬は、前項各号の時点が属する月の翌月の給与支払日に支給する。
3 紹介した従業員が、第1項各号の時点で在籍していない場合は、当該時点の報酬を支給しない。ただし、定年退職の場合は、この限りでない。
(不支給)
第3条 紹介した従業員または候補者に、虚偽の申告その他の不正な行為があった場合は、報酬を支給しない。
(不利益取り扱いの禁止)
第4条 会社は、従業員が紹介活動を行わないこと、または紹介した候補者が採用に至らなかったこと、もしくは退職したことを理由として、当該従業員に不利益な取り扱いをしない。

