【36協定】「土曜日出勤」は休日労働?36協定における休日労働とは何かを解説

はじめに

会社は、従業員が法定労働時間を超え、または、法定休日に働く場合には、従業員の過半数代表者との間で「36(さぶろく)協定」を締結し、その上限時間・日数を取り決める必要があります。

36協定は、正式名称は「時間外労働・休日労働に関する協定届」といい、当該協定が労働基準法第36条に定められている手続であることから、条文番号の「36」を用いた通称で呼ばれることが一般的です。

36協定では、「時間外労働」と「休日労働」について、それぞれの上限時間・日数を取り決めますが、特に「休日労働」とは何を意味するのか分かりにくく、一般的な週休2日制(例えば、土曜日・日曜日が休日の場合)において、はたして土曜日出勤は休日労働に含めて協定するべきかどうか、判断に迷う場合があります。

そこで、この記事では、36協定における「休日労働」について解説します。

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36協定における「休日労働」(休日出勤)とは?

「休日」とは?

36協定における「休日」とは、法律が定める「法定休日」をいいます

法律上、会社は従業員に対して、「毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」と定められており、この定めに基づいて与えられる、週に1日の休日のことを「法定休日」といいます(労働基準法第35条)。

したがって、36協定における「休日労働」とは、「法定休日に働くこと」を意味します。

「法定休日」と「所定休日(法定外休日)」

一方、法定休日以外の休日のことを、「所定休日(法定外休日)」といい、会社と従業員との間の労働契約によって取り決めた休日をいいます。

ただし、例えば、週休2日制の会社において、土曜日と日曜日を休日とした場合、どちらが法定休日となり、どちらが所定休日となるかは一概にはいえません。

どちらの休日を法定休日とするのかは、会社が就業規則などによって定める必要があるためです。

例えば、会社が「日曜日を法定休日とする」と定めたのであれば、日曜日が法定休日となり、土曜日は「所定休日(法定外休日)」となります

なお、法定休日と所定休日とは、下表のとおり取り扱いが異なります。

 所定休日
(法定外休日)
法定休日
定義会社と従業員との間の労働契約によって取り決めた休日法律により、原則として、毎週少なくとも1日与えなければならないとされる休日
割増賃金不要
(ただし、所定休日労働をしたことにより、週の法定労働時間を超える場合には、その超える時間について25%以上の割増賃金が必要)
(後述)
必要
(休日労働をした時間に対して35%以上の割増賃金が必要)
36協定における休日労働休日労働に該当しない
(協定を締結することは不要)
休日労働に該当する
(協定を締結することが必要)

36協定で休日労働を協定する趣旨

休日労働について、法律が36協定の締結を求める趣旨は、会社は本来、少なくとも週に1日の休日(法定休日)を確保すべきことを前提としつつ、もし週に1日の休日を確保できない場合には、従業員代表者との協議を通じて、従業員の意思を反映する必要があるためです。

したがって、36協定においては、「法定休日」に働くことについて協定することが目的であって、それ以外の所定休日(法定外休日)に働くとしても、それは「休日労働」には該当せず、36協定を締結する対象にはなりません。

結論として、所定休日労働については、「休日労働」として36協定を締結する必要はない、ということになります。

法定休日の定め方

法定休日の定め方

前述のとおり、36協定においては、法定休日労働について協定しますが、その前提として、「法定休日はいつなのか?」を的確に把握しておくことが必要となります。

ここからは、法定休日の特定方法について解説します。

特定の曜日を法定休日と定める場合

例えば、週休2日制の会社で、土曜日と日曜日を休日とする場合において、「日曜日を法定休日とする」と就業規則に明記されていれば、話は単純で、日曜日に出勤する日数をもって36協定を締結することとなります。

ただし、もし「日曜日を法定休日とする」と定めた場合には、その前後の出勤状況に関係なく(たとえ前後に休日があったとしても)、日曜日に出勤したことをもって、法定休日労働をしたことになります。

法定休日労働をすると、その時間に対しては、35%以上の割増賃金率で計算した割増賃金を支払う必要がありますが、土曜日に休んで日曜日に働くと、割増賃金が支給されるのに対して、土曜日に働いて日曜日に休むと、割増賃金が支給されず、休日出勤をした曜日によって不公平が生じる場合があります

特定の曜日を法定休日と定めない場合

そこで、実務上は、あえて法定休日を特定の曜日とはせずに、週の起算日を定めておいて、その週のすべての日に出勤した場合には、その週の最後の休日をもって、法定休日として取り扱うことがあります。

法定休日について、「具体的な日・曜日まで特定する必要があるか」という点については、必ずしも、日・曜日を決めていなくても、結果的に、1週間に1日の休日が確保されていれば、法違反とはならないと解されています(昭和23年5月5日基発682号・昭和63年3月14日基発150号)。

例えば、週休2日制(土曜日・日曜日が休日)の会社において、月曜日を週の起算日とする場合、月曜日から日曜日まですべて働いた場合には、最後の日曜日を法定休日とし、法定休日労働があったものとして取り扱う(もし土曜日に休んだ場合には、土曜日を法定休日として取り扱うため、日曜日は法定休日として取り扱わない)という運用をすることがあります。

変形休日制(例外)

法定休日は、必ずしも毎週1日、定期的に設ける必要はなく、例外的に、「4週間を通じて4日以上」の休日を与える場合には、毎週1日の休日を与える必要はなく、これを「変形休日制」といいます(労働基準法第35条第2項)。

変形休日制を採用する場合には、就業規則などで変形休日制を採用する旨を記載したうえで、4週間の起算日を明記する必要があります(労働基準法施行規則第12条の2第2項)。

なお、この場合、起算日からの4週間ごとに4日の休日があればよく、どの4週間を区切ってもその中に4日の休日がなければならない、とするものではありません(昭和29年9月20日基発1384号)。

休日労働の上限日数・上限時間(36協定の協定内容)

36協定の様式(第9号)では、「労働させることができる法定休日の日数」と、「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」を記入する欄が設けられています。

そこで、従業員が法定休日に出勤する日数の上限と、出勤する場合の始業・終業時刻(上限時間)を記載する必要があります。

まず、休日労働の日数については、上限日数は設けられていませんが、1ヵ月は4週間であるため、休日労働は必然的に月4日が上限となります。

ただし、例えば、「月に2日まで」と記載した場合には、もし月に3日以上の休日労働をした場合には、法違反となるため、上限日数については慎重に定める必要があります。

また、上限時間についても、特に定められていません。

ここでは、通常の所定労働日と同じ始業・終業時刻を協定しているケースが比較的多いのですが、任意の始業・終業時刻とすることも問題ありません。

休日とは、原則として暦日をいい、午前0時から午後12時までの24時間をいいますので、始業・終業時刻もその範囲内で定めていれば問題ありません。

なお、これは、時間外労働を協定する際には、取り決めることができる時間に上限(原則として月45時間以内、年360時間以内)が設けられていることと対照的です。

「土曜日出勤」(所定休日労働)の留意点

所定休日労働の36協定への影響

前述のとおり、所定休日労働は、36協定における休日労働には該当しないため、休日労働として36協定を締結する必要はありません。

ただし、所定休日労働は、場合によっては、36協定で取り決めるべき「時間外労働」に該当する可能性があるため、留意する必要があります。

法定労働時間と時間外労働

会社は、従業員の労働時間について、原則として、1日8時間、1週40時間以内に収める必要があり、これを「法定労働時間」といいます。

従業員が、法定労働時間を超えて働くことを「時間外労働」といい、会社は時間外労働を行う場合の手続として、従業員の過半数代表者との間で、36協定を締結し、その時間に対して割増賃金を支払う必要があります。

所定休日労働と時間外労働

所定休日労働をすることによって、1週40時間の法定労働時間を超える場合、その時間についても時間外労働として把握する必要があります

例えば、月曜日から金曜日を所定労働日、土曜日を所定休日、日曜日を法定休日として、1日の所定労働時間を8時間とした場合、月曜日から金曜日まで働くと、週の合計労働時間は40時間(1日8時間×5日)となります。

この場合、さらに所定休日の土曜日に出勤して8時間働くと、週の法定労働時間40時間を8時間オーバーするため、8時間の時間外労働が生じる(その時間に対して、36協定の対象になると共に、25%以上の割増賃金率で計算した割増賃金を支払う)ことになります。

したがって、所定休日の労働については、休日労働としては36協定の対象とはならない一方で、「時間外労働」として、36協定を締結する対象になる場合があることに留意する必要があります。