【労働基準法】休憩時間の長さ(45分・60分)と与え方(途中付与・一斉付与・自由利用)に関するルールを解説
- 1. はじめに
- 2. 休憩時間とは(定義)
- 3. 休憩時間の長さに関するルール(6時間ルール・8時間ルール)
- 3.1. 与えるべき休憩時間
- 3.2. 休憩時間の上限
- 3.3. 残業(時間外労働)をした場合の休憩時間
- 4. 休憩時間の与え方に関する3つの原則
- 5. 休憩時間の途中付与の原則
- 6. 休憩時間の一斉付与の原則
- 6.1. 一斉付与の原則とは
- 6.2. 1.労使協定を締結した場合
- 6.2.1. 労使協定の内容
- 6.2.2. 労使協定の規定例(記載例)
- 6.3. 2.法律による特例が適用される業種である場合
- 7. 休憩時間の自由利用の原則
- 7.1. 自由利用の原則とは
- 7.2. 自由利用の原則の例外①
- 7.3. 自由利用の原則の例外②
- 8. 休憩時間の分割の可否
- 9. 休憩のための休憩所・休憩室の設置
- 10. 休憩付与の例外
- 11. 罰則
はじめに
労働基準法では、休憩時間の長さと与え方について定められており、何時間働いたら何分の休憩を与えるべきか、というだけでなく、どのように休憩させるかについても留意する必要があります。
この記事では、休憩時間について、その長さと与え方に関する労働基準法上のルールを解説します。
休憩時間とは(定義)
「休憩時間」とは、従業員の権利として、労働から離れることを保障されている時間をいいます(昭和22年9月13日発基17号)。
そして、単に作業に従事しない手待時間については、休憩時間に含まれないと解されます。
「手待時間」とは、具体的な指示がないため待機しているものの、会社から指示があれば、直ちに業務を行わなければならない時間をいいます。
例えば、従業員が休憩時間中に、電話対応や来客対応をするためにデスクで待機していて、その場から離れることができない(拘束されている)のであれば、当該時間は、法的には休憩時間とはいえず、労働時間となります。
なお、休憩時間に関する法律は、雇用形態を問わず適用されますので、正社員、アルバイト、パートなどの雇用形態に関わらず、会社は従業員の労働時間に応じて休憩を与える必要があります。
休憩時間の長さに関するルール(6時間ルール・8時間ルール)
与えるべき休憩時間
会社が従業員に対して、最低限与えなければならないとされる休憩時間は、労働基準法によって、次のとおり定められています(労働基準法第34条第1項)。
労働時間 | 休憩時間 |
6時間以内 | 与えなくてもよい |
6時間超・8時間以内 | 45分以上 |
8時間超 | 60分以上 |
労働時間が6時間以内(6時間ちょうどを含む)であれば、法律上、休憩時間を与える必要はありません。
そして、労働時間が6時間を超えた時点(1分でも超えると該当する)で、初めて45分以上の休憩時間を与える必要が生じます。
これは労働時間が8時間の場合でも同様であり、労働時間が8時間以内(8時間ちょうどを含む)までは休憩時間は45分以上で足り、8時間を超えた時点(1分でも超えると該当する)で、60分以上の休憩時間を与える必要が生じることとなります。
休憩時間の上限
休憩時間は法律上、45分以上または60分以上と、最低限与えるべき時間が定められているのみで、休憩時間の上限は定められていません。
そこで、例えば、4時間労働をして、3時間休憩し、また4時間労働するといった働き方も可能です(長めの休憩時間を与え、その間に外出や帰宅を認める休憩を、「中抜け休憩」ということがあります)。
この場合、拘束時間は長くなりますが、法定労働時間とされる1日8時間は、実労働時間の上限であり、拘束時間には上限がないことから、このような働き方をすることは問題ありません。
残業(時間外労働)をした場合の休憩時間
従業員が残業をした場合、それによって会社が与えるべき休憩時間が変わるケースがあります。
例えば、所定労働時間が9時から17時45分、実労働時間が8時間、休憩時間が45分の場合、従業員が1分でも残業をすると、労働時間が8時間を超えることになるため、会社には追加で15分の休憩時間を与える義務が生じます。
そこで、このケースで従業員が残業をする場合、まず17時45分から15分の休憩時間を与え、18時から残業を開始するといった運用が考えられます(または、あらかじめ残業を見据えて、休憩時間を1時間とすることも考えられます)。
他にも、もともと所定労働時間が6時間ちょうど(休憩時間は不要)である場合、残業によって6時間を超えることとなった場合には、追加で45分の休憩時間を与える必要があります。
休憩時間の与え方に関する3つの原則
労働基準法では、休憩時間の与え方について、3つの原則が定められています。
休憩時間の与え方に関する3つの原則
- 途中付与の原則
- 一斉付与の原則
- 自由利用の原則
なお、労働基準法の基準を上回って与えられる休憩時間については、上記の3つの原則は適用されません。
例えば、法律上、最低60分の休憩時間を与えるべきところ、会社が90分の休憩時間を与えている場合には、法律を上回る30分の休憩時間については、必ずしも労働時間の途中に与え、または一斉に与える必要はありません。
休憩時間の途中付与の原則
法律により、休憩時間は、労働時間の途中に与えなければならないとされています(労働基準法第34条第1項)。
このことを、休憩時間の「途中付与の原則」といいます。
したがって、休憩時間を最初(始業前)または最後(終業後)に与えることは認められません。
例えば、午前9時から午後4時まで働き(実働7時間)、午後4時から45分の休憩を与えてから帰宅させるといった運用は認められません。
休憩時間の一斉付与の原則
一斉付与の原則とは
休憩時間は、その事業場の従業員について、一斉に与えなければならないとされています(労働基準法第34条第2項)。
このことを、休憩時間の「一斉付与の原則」といいます。
しかし、実際には、会社の組織事情や業務内容などによって、全員を一斉に休憩させることが困難な場合があります。
そこで、次の場合には、例外的に、一斉に休憩時間を与えないことが認められています。
一斉付与の原則の例外
- 労使協定を締結した場合
- 法律による特例が適用される業種である場合
1.労使協定を締結した場合
労使協定の内容
労使協定とは、会社と従業員の代表者との間で、労働条件について取り決めることをいいます。
労使協定では、次の内容を定めておく必要があります(労働基準法施行規則第15条)。
労使協定の内容
- 一斉に休憩を与えないこととする従業員の範囲(部署・業務内容など)
- その従業員に対する休憩時間の与え方
なお、この労使協定は、労働基準監督署に届け出る必要はありません。
労使協定の規定例(記載例)
参考に労使協定の規定例(記載例)をご紹介します。
労使協定の規定例(記載例)
一斉休憩の適用除外に関する労使協定書
株式会社●●●●と、その従業員代表●●●●は、休憩時間の適用について、下記のとおり協定する。
記
第1条 営業課で営業の業務に従事する従業員については、班別に交代して休憩時間を与えるものとする。
第2条 各班の休憩時間は、次に定めるとおりとする。
一班:午前11時から正午
二班:正午から午後1時
三班:午後1時から午後2時
第3条 出張、外回りなどの外勤のため、前条に定める時間帯に休憩時間を与えることができない場合には、所属長が個別に休憩時間を指定するものとする。
第4条 本協定は●年●月●日から効力を発する。ただし、本協定の有効期間満了日の1ヵ月前までに、会社または従業員代表者のいずれからも異議の申し出がないときは、本協定はさらに1年間有効期間を延長するものとし、以降も同様とする。
●年●月●日
株式会社●●●● 代表取締役 ●●●● 印
従業員代表:営業部 ●●●● 印
2.法律による特例が適用される業種である場合
一斉付与の原則には、法律によって特例が認められる業種が定められてます(労働基準法第40条、労働基準法施行規則第31条)。
次の業種に該当する場合には、法律上、休憩時間を一斉に与える必要がなく(労使協定の締結は不要)、業務の繁閑に応じて交替で休憩させることができます。
一斉付与の原則に対する特例業種
- 道路、鉄道、軌道、索道、船舶または航空機による、旅客または貨物の運送の事業(労働基準法別表第一第四号)
- 物品の販売、配給、保管もしくは賃貸または理容の事業(同表第八号)
- 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内または広告の事業(同表第九号)
- 映画の製作または映写、演劇その他興行の事業(同表第十号)
- 郵便、信書便または電気通信の事業(同表第十一号)
- 病者または虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業(同表第十三号)
- 旅館、料理店、飲食店、接客業または娯楽場の事業(同表第十四号)
- 官公署の事業
休憩時間の自由利用の原則
自由利用の原則とは
休憩時間は、従業員に自由に利用させなければならないとされています(労働基準法第34条第3項)。
このことを、休憩時間の「自由利用の原則」といいます。
これは、休憩時間の意義である、「労働から離れること」を保障するための原則といえます。
自由利用の原則の例外①
法律により、次の業種については、自由利用の原則が適用されません(労働基準法施行規則第33条)。
自由利用の原則が適用されない業種
- 警察官、消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員、および児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
- 乳児院、児童養護施設、および障害児入所施設に勤務する職員で、児童と起居をともにする者(その員数、収容する児童数および勤務の態様について、あらかじめ所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合)
- 児童福祉法第6条の3第11項に規定する居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者として保育を行う者
自由利用の原則の例外②
会社は、休憩時間を完全に自由に利用させなければならないものではなく、職場の規律を保持するために必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り差支えないと解されます(昭和22年9月13日基発17号)。
例えば、従業員が休憩時間中に外出することについて、所属長の許可を受けさせることとしても、職場内で自由に休憩することを保障している限り、必ずしも違法になるものではないと解されます(昭和23年10月30日基発1575号)。
休憩時間の分割の可否
休憩時間を分割して与えてはならない、とする法律上の規制はありません。
したがって、例えば、60分の休憩時間を二分割して、30分ずつ休憩時間を与えることとしても問題ありません。
ただし、極端な話ですが、60分の休憩時間を12分割して、5分ずつ休憩時間を与えるとなると、問題がある運用と考えます。
休憩時間を与える趣旨は、心身を休めて疲労を回復させることにあるため、5分など短時間では休憩の目的を果たせないと解されますので、最低限のまとまった休憩時間は確保すべきと考えます。
休憩のための休憩所・休憩室の設置
休憩室など従業員が休憩するための場所の確保については、法律により、会社は従業員が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならないことが定められているのみで、あくまでも会社の努力義務という位置付けにあります(労働安全衛生規則第613条)。
これと混同しやすいものとして、休養室があります。
法律では、会社は、常時50人以上の従業員、または常時30人以上の女性従業員を使用するときは、従業員が、が床(横になる、という意味)することのできる休養室または休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならないことを定めています(労働安全衛生法618条)。
上記の要件を満たす場合には、会社は、体調不良の従業員が横になって休むことができる場所を設置する義務があります。
休憩付与の例外
法律上、次の業務に従事する従業員については、休憩時間に関するルールが適用されず、休憩時間を与えなくてもよいとされています(労働基準法施行規則第32条)。
休憩付与の例外
- 法別表第1第4号に掲げる事業(運輸交通業)、または郵便もしくは信書便の事業に使用される従業員のうち、列車、気動車、電車、自動車、船舶または航空機に乗務する機関手、運転手、操縦士、車掌、列車掛、荷扱手、列車手、給仕、暖冷房乗務員および電源乗務員(以下、「乗務員」といいます)で長距離(巡行の所要時間が6時間を超える区間)にわたり継続して乗務する者
- 乗務員で1.に該当しないもの(長距離にわたり乗務しない者)について、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が労働基準法第34条第1項に規定する休憩時間に相当するとき
- 法別表第1第11号に掲げる事業(通信の事業)に使用される従業員で、屋内勤務者30人未満の日本郵便株式会社の営業所(簡易郵便局法(昭和24年法律第213号)第2条に規定する郵便窓口業務を行うものに限る)において、郵便の業務に従事する者
罰則
会社が休憩時間に関する法律の定めに違反した場合には、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります(労働基準法第119条第一号)。