【労働基準法】「法定休日」とは?労務管理における法定休日の留意点(休日労働、特定の必要性など)を解説
- 1. 法定休日とは
- 1.1. 休日とは
- 1.2. 法定休日とは
- 1.3. 法定休日の単位
- 1.4. 法定休日と曜日との関係
- 1.5. 適用除外
- 1.6. 罰則
- 2. 法定外休日とは
- 2.1. 法定外休日とは
- 2.2. 所定休日とは
- 3. 法定休日の例外(変形休日制)
- 3.1. 変形休日制とは
- 3.2. 変形休日制による場合の手続
- 4. 法定休日労働をする場合の手続(36協定・割増賃金)
- 4.1. 36協定の締結
- 4.2. 法定時間外労働の上限規制と、法定休日労働
- 4.3. 割増賃金
- 4.4. 法定休日労働と「代休」との関係
- 5. 法定休日の特定の要否
- 5.1. 法定休日を特定する必要性
- 5.2. 法定休日を特定しない場合の取り扱い
- 5.3. 法定休日を特定する場合の取り扱い
法定休日とは
休日とは
「休日」とは、労働契約に基づき、従業員が労働する義務を負わない日のことをいいます。
休日には労働義務がないことが前提であることから、労務管理においては、休日をどのように特定するか、または休日に労働させることができるのはどのような場合か、といったことが問題となります。
なお、同じく従業員が労働義務を負わない日として「休暇」がありますが、休暇は、その当日は本来従業員が労働義務を負う日(就業日)であるものの、会社が個別的に労働義務を免除する点で、休日と異なります。
法定休日とは
労働基準法では、原則として、毎週少なくとも1回(1日)の休日を与えなければならないと定めており(週休制の原則)、この休日のことを、「法定休日」といいます(労働基準法第35条第1項)。
つまり、法定休日とは、労働基準法が定める、最低限与えるべき休日といえます。
法定休日の単位
法定休日は、1日単位で与える必要があり、ここでいう「1日」とは、午前0時から午後12時までの1暦日をいいます(昭和23年4月5日基発535号)。
単に24時間空けて休んだだけでは、原則として、法定休日とは認められないことに留意する必要があります。
ただし、例外として、自動車運転手や旅館の事業のように、番方編成による交替制(8時間3交替勤務など)が就業規則などで制度化され、交替時間が規則的に定められている場合には、連続24時間の休息を休日として与えることが認められることがあります(昭和63年3月14日基発150号)。
法定休日と曜日との関係
法定休日は、日曜日や国民の祝日など、曜日とは関係ありません。
毎週少なくとも1日の休日を与えている限り、日曜日や国民の祝日などを必ずしも法定休日にする必要はなく、平日を法定休日として定めることも可能です(昭和41年7月14日基発739号)。
適用除外
法定休日に関する規制については、①農業および水産業の事業に従事する者、②管理・監督の地位にある者または機密の事務を取り扱う者、③監視・断続的労働に従事する者については、適用されません(労働基準法第41条)。
罰則
会社が法定休日を与えなかった場合には、罰則として、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています(労働基準法第119条第1項)。
法定外休日とは
法定外休日とは
「法定外休日」とは、一般に、法定休日に加えて与えられる休日(法律上の義務に基づかない休日)のことをいい、法定休日と区別する意味で用いられます。
例えば、毎週土曜日と日曜日を休日とする、いわゆる完全週休2日制の会社においては、いずれか1日が法定休日、もう1日が法定外休日となります。
このとき、土曜日と日曜日のいずれが法定休日となるのかは、就業規則など、労働契約に基づき決定されます(後述)。
法定休日か法定外休日かの区別は、休日労働をするための手続(36協定の締結、割増賃金の支払い義務など)に影響するため、重要です。
所定休日とは
「所定休日」とは、会社と従業員との間の労働契約に基づき、休日として定められた日のことをいいます。
つまり、所定休日には、法定休日と法定外休日が含まれることとなります。
なお、所定休日は、従業員にとって重要な労働条件であることから、労働条件通知書における絶対的明示事項とされている(労働基準法施行規則第5条第1項第2号)とともに、就業規則における絶対的記載事項(労働基準法第89条第1号)とされています。
法定休日の例外(変形休日制)
変形休日制とは
法定休日は、原則として、毎週少なくとも1日の休日を与える必要がありますが、例外として、「4週間を通じて4日以上」の休日を与える場合には、毎週少なくとも1日の休日を与える必要はないとされています(労働基準法第35条第2項)。
このような法定休日の与え方を、「変形休日制」といいます。
変形休日制による場合の手続
変形休日制を採用する場合には、就業規則などで変形休日制を採用する旨を記載したうえで、4週間の起算日を明記する必要があります(労働基準法施行規則第12条の2第2項)。
この場合、起算日からの4週間ごとに4日の休日があればよく、どの4週間を区切ってもその中に4日の休日がなければならない、とするものではありません(昭和23年9月20日基発1384号)。
法定休日労働をする場合の手続(36協定・割増賃金)
36協定の締結
従業員が法定休日に働く場合(法定休日労働をする場合)には、事前に労使協定(以下、「36(さぶろく)協定」といいます)を締結することが必要です(労働基準法第36条第1項)。
「36協定」とは、会社と従業員の過半数代表者(従業員の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合)との間で、法定時間外労働と法定休日労働に関する事項を取り決めることをいいます。
さらに、締結した36協定は、管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
36協定の書面は、所定の様式(様式第9号)で作成する必要があり、法定休日労働に関しては、「労働させることができる法定休日の日数」と「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」について協定します。
「労働させることができる法定休日の日数」の記入欄には、例えば「1ヵ月に1日」などのように記載します。
「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」の記入欄には、例えば「9時から18時」などのように、法定休日における始業・終業時刻を記載します。
法定時間外労働の上限規制と、法定休日労働
法定休日労働は、原則として、法定時間外労働としての取り扱いを受けないため、労働基準法が定める法定時間外労働の上限時間(原則として、1ヵ月45時間・1年間360時間)について、法定休日労働をした時間数は含まれません。
ただし、36協定の特別条項を適用した場合において適用される、単月の上限時間(1ヵ月100時間未満)、および複数月平均(2ヵ月ないし6ヵ月の平均)の上限時間(1ヵ月80時間以内)については、法定休日労働をした時間数を含める必要があります。
割増賃金
会社は、法定休日労働をした従業員に対しては、通常の賃金に3割5分以上の賃金を上乗せした割増賃金を支払う義務があります(労働基準法第37条第1項)。
なお、法定外休日については、通常の時間外労働と同様に取り扱い、法定労働時間(原則として、1日8時間・1週40時間)を超える場合には、通常の賃金に2割5分以上の賃金を上乗せした割増賃金を支払う義務があります(労働基準法第37条第1項)。
法定休日労働と「代休」との関係
「代休」とは、従業員が法定休日労働をした場合において、その代償として、会社が別の労働日を休日として指定することをいいます。
会社が代休を与えた場合でも、「法定休日労働をした」という事実に変わりはないことから、会社は法定休日労働に対する割増賃金の支払い義務を免れることはできません。
したがって、代休を与えた場合には、通常の賃金(所定労働時間に対する賃金)の部分については相殺されますが、その割増部分(35%)は支払い義務が残る(割増部分まで相殺することはできない)こととなります。
なお、従業員が法定休日労働をしたとしても、会社は当該労働に対して、代休を与えるべき義務はありません。
法定休日の特定の要否
法定休日を特定する必要性
「休日」については、就業規則の絶対的必要記載事項とされており、就業規則にその内容を必ず記載する必要があります(労働基準法第89条)。
この点について、就業規則においては、休日の「日数」と「与え方」を定める必要があると解されており、休日を特定すること(「毎週土曜日と日曜日を休日とする」など)まで会社に義務付けていません。
つまり、法定休日の特定は法律上の義務ではないことから、法定休日の曜日を決めていないとしても、結果的に1週間に1日の休日が確保されていれば、問題ありません。
例えば、接客・サービス業などでは、予約などの状況に応じてシフトを決定し、その都度法定休日を指定することがあります。
ただし、休日がいつになるのか、従業員にとってまったく予測できないことは不利益が大きいことから、行政通達では、次のとおり、できる限り法定休日を特定することが望ましいとしています(昭和23年5月5日基発682号、昭和63年3月14日基発150号)。
法定休日の特定(行政通達)
法第35条は必ずしも休日を特定すべきことを要求していないが、特定することがまた法の趣旨に沿うものであるから、就業規則の中で単に1週間につき1日といっただけではなく、具体的に一定の日を休日と定める方法を規定するよう指導されたい。
法定休日を特定しない場合の取り扱い
会社が法定休日を特定しない場合には、基本的には、暦週(日曜日から起算し、土曜日までの1週間をいう)のうち、日曜日と土曜日の両方に労働した場合は、当該暦週において後順に位置する土曜日における労働を法定休日労働として取り扱うべきと解されています(平成21年10月5日「改正労働基準法に係る質疑応答(厚生労働省)」)(昭和63年1月1日基発1号)。
なお、裁判例では、会社には毎週1回の休日を与える義務があることから、暦週でみて、日曜日から土曜日までの間に1日も休日がない場合には、歴週の最終日である土曜日を法定休日とみなすことが妥当であると判断したものがあります(日本マクドナルド事件/東京地方裁判所平成20年1月28日判決)。
一方、別の裁判例では、土曜日と日曜日を休みとする週休2日制で法定休日を特定していなかった会社について、暦週の後順の土曜日が法定休日だと主張した会社に対して、「旧来からの休日である日曜が法定休日であると解するのが一般的な社会通念に合致する」として、日曜日を法定休日と判断した事例もあります(HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド賃金等請求事件/東京地方裁判所平成23年12月27日判決)。
したがって、法定休日はできる限り特定しておく方が、紛争防止の観点からは望ましいといえます。
法定休日を特定する場合の取り扱い
例えば、就業規則において、「毎週、日曜日を法定休日とする」と定めた場合には、従業員が日曜日に出勤したことをもって、法定休日労働をしたことになり、割増賃金の支払い義務が生じます。
この結果は、たとえ前日の土曜日が所定休日であり、土曜日に休日が確保できていたとしても異なりません。
労務管理を簡便にし、給与計算のミスなどを防止する観点からは、法定休日を一定の曜日に特定しておく方が有効ですが、一方で、会社にとっては、法定休日を特定しない場合よりも、割増賃金を多く支払う必要があることから、これらのメリット・デメリットを勘案して判断する必要があります。