【育児・介護休業法】「労使協定」によって制度の対象から除外することが認められる者について、整理して解説

はじめに

育児・介護休業法では、育児休業や介護休業を始め、仕事と育児・介護との両立に関する様々な制度を定めていますが、一部の者については、「労使協定」を締結することによって、制度の適用を除外することが認められています

ただし、「労使協定」を締結することによって、制度の対象から除外することが認められる者は、制度ごとに異なるため、整理して理解しておく必要があります。

本稿では、育児・介護休業法について、「労使協定」を締結することによって制度の対象から除外することが認められる者について、整理して解説します。

労使協定によって制度の対象から除外することが認められる者(まとめ)

育児・介護休業法が定める制度ごとに、労使協定を締結することによって制度の対象から除外することが認められる者を整理すると、次の表のとおりです。

表のうち、丸印が付されている箇所は、事業主と労働者の過半数を代表する者(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合)との間で労使協定を締結することによって、制度の対象から除外することが認められる(労働者から制度の利用について申し出があっても、事業主がそれを拒むことができる)ことを意味します。

【労使協定によって制度の対象から除外することが認められる者(まとめ)】

 制度の名称入社後1年未満の者入社後6ヵ月未満の者1週間の所定労働日数が
2日以下の者
その他の者
育児休業
[法6Ⅰ①]

[規8②]

(※1)
出生時育児休業
[法9の3Ⅱ]

[規21の3②]

(※2)
子の看護等休暇
(※3)

[法16の3Ⅱ]

(※4)
所定外労働の制限
(育児・介護共通)

[法16の8Ⅰ①]

[規44]
時間外労働の制限
(育児・介護共通)

(※5)

(※5)
深夜業の制限
(育児・介護共通)

(※5)

(※5)
所定労働時間の短縮措置
(育児・介護共通)

[法23Ⅰ①]

[規73]

(※6)
柔軟な働き方を実現するための措置
[法23の3Ⅲ①]

[規75]

(※7)
介護休業
[法12Ⅱ]

[規24②]

(※8)
10介護休暇
(※9)

[規42]

(※10)

(※1)育児休業の対象者(その他)

子が1歳に達するまでに行う育児休業については、申出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな者、子が1歳に達した日以降に行う育児休業については、申出の日から6ヵ月以内に雇用関係が終了することが明らかな者について、労使協定を締結することによって、育児休業の対象から除外することが認められています(育児・介護休業法第6条第1項第2号、育児・介護休業法施行規則第8条第1号)。

(※2)出生時育児休業の対象者(その他)

出生時育児休業の申出の日から起算して、8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな者については、労使協定を締結することによって、出生時育児休業の対象から除外することが認められています(育児・介護休業法第9条の3第2項、育児・介護休業法施行規則第21条の3第1号)。

(※3)子の看護等休暇の対象者

従来は、「入社後6ヵ月未満の者」について、労使協定によって適用を除外することが認められていましたが、2025年4月1日の法改正により、廃止されました(育児・介護休業法第16条の3第2項)。

(※4)子の看護等休暇の対象者(その他)

子の看護等休暇は、1時間単位で取得することが認められていますが、1時間単位で取得する子の看護等休暇については、労使協定を締結することによって、一定の業務に就く労働者に限り、制度の対象から除外する旨を定めることが認められています(育児・介護休業法第16条の3第2項)。

「一定の業務」とは、業務の性質または実施体制に照らして、1時間単位で子の看護等休暇を取得することが困難な業務をいい、例えば、次の業務が該当するとされています(平成21年厚生労働省告示第509号)。

1時間単位で子の看護等休暇を取得することが困難と認められる業務の例

  • 国際路線等に就航する航空機において従事する客室乗務員等の業務等であって、所定労働時間の途中まで、または途中から子の看護等休暇を取得させることが困難な業務
  • 長時間の移動を要する遠隔地で行う業務であって、時間単位の子の看護等休暇を取得した後の勤務時間または取得する前の勤務時間では処理することが困難な業務
  • 流れ作業方式や交替制勤務による業務であって、時間単位で子の看護等休暇を取得する者を勤務体制に組み込むことによって業務を遂行することが困難な業務

(※5)時間外労働の制限・深夜業の制限の対象者

時間外労働の制限および深夜業の制限については、法律上、原則として(労使協定が締結されていなくても)、「入社後1年未満の者」と「1週間の所定労働日数が2日以下の者」は、制度の対象者とはならないとされていますので、別途、労使協定を締結する必要はありません(育児・介護休業法第17条第1項、第19条第1項、育児・介護休業法施行規則第52条、第61条第1号)。

(※6)短時間勤務制度の対象者(その他)

「業務の性質または業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する者」については、労使協定を締結することによって、制度の対象から除外することが認められています(育児・介護休業法第23条第1項第3号、平成21年厚生労働省告示第509号第2の9(3))。

業務の内容については、(※4)の1時間単位で子の看護等休暇を取得することが困難な業務と同じです。

ただし、当該業務に従事することを理由に、労使協定により短時間勤務制度の適用を除外した労働者に対しては、その代替措置として、育児休業に関する制度に準ずる措置、在宅勤務等の措置、始業時刻変更等の措置(フレックスタイムの制度、始業・終業の時刻を繰り上げ・繰り下げる制度(時差出勤))、労働者の3歳に満たない子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与のうち、いずれかを講じなければなりません(育児・介護休業法第23条第2項、育児・介護休業法施行規則第74条第2項)。

(※7)柔軟な働き方を実現するための措置の対象者(その他)

事業主が、「柔軟な働き方を実現するための措置(事業主は、法令が定める措置の中から、2つ以上の措置を選択しなければならない)」として、「労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇を与えるための措置」を選択した場合には、原則として、当該休暇は、1時間単位で取得できるようにする必要があります。

ただし、「1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務」については、労使協定を締結することによって、当該業務に従事する者を制度の対象から除外することが認められています。

「1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務」とは、業務の性質または実施体制に照らして、時間単位で休暇を取得することが困難な業務をいい、(※4)の1時間単位で子の看護等休暇を取得することが困難な業務と同じです(平成21年厚生労働省告示第509号第2第10の2(9))。

(※8)介護休業の対象者(その他)

介護休業の申出の日から起算して、93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者については、労使協定を締結することによって、介護休業の対象から除外することが認められています(育児・介護休業法第12条第2項、育児・介護休業法施行規則第24条第1号)。

(※9)介護休暇の対象者

従来は、「入社6ヵ月未満の者」について、労使協定によって適用を除外することが認められていましたが、2025年4月1日の法改正により、廃止されました(育児・介護休業法第16条の6第2項)。

(※10)介護休暇の対象者(その他)

介護休暇は、1時間単位で取得することが認められていますが、1時間単位で取得する介護休暇については、労使協定を締結することによって、一定の業務に就く労働者に限り、制度の対象から除外する旨を定めることが認められています(育児・介護休業法第16条の6第2項)。

「一定の業務」とは、業務の性質または実施体制に照らして、1時間単位で介護休暇を取得することが困難な業務をいい、その業務は、(※4)の子の看護等休暇の業務と同じです(平成21年厚生労働省告示第509号)。

労使協定のひな型(基本型)

上記の内容を踏まえた労使協定にかかる基本的なひな型は、次のとおりです。

育児・介護休業等にかかる労使協定のひな型(基本型)

育児・介護休業等にかかる労使協定

株式会社●●(以下、「会社」という)と、その従業員の過半数を代表する者は、会社における育児・介護休業等に関して、次のとおり協定する。

(育児休業の申出を拒むことができる従業員)

第1条 会社は、次の従業員から1歳に満たない子(育児・介護休業法が定める要件に該当する場合は1歳6ヵ月または2歳)を養育するための育児休業の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。

一、入社後1年未満の者

二、申出の日から1年以内(1歳以降の休業の申出にあっては6ヵ月)に雇用関係が終了することが明らかな者

三、1週間の所定労働日数が2日以下の者

(出生時育児休業の申出を拒むことができる従業員)

第2条 会社は、次の従業員から出生時育児休業の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。

一、入社後1年未満の者

二、申出の日から8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな者

三、1週間の所定労働日数が2日以下の者

(介護休業の申出を拒むことができる従業員)

第3条 会社は、次の従業員から介護休業の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。

一、入社後1年未満の者

二、申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな者

三、1週間の所定労働日数が2日以下の者

(子の看護等休暇の申出を拒むことができる従業員)

第4条 会社は、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員から子の看護等休暇の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。

(介護休暇の申出を拒むことができる従業員)

第5条 会社は、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員から介護休暇の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。  

(所定外労働の制限の申出を拒むことができる従業員)

第6条 会社は、次の従業員から所定外労働の制限の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。

一、入社後1年未満の者

二、1週間の所定労働日数が2日以下の者

(育児短時間勤務の申出を拒むことができる従業員)

第7条 会社は、次の従業員から育児短時間勤務の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。

一、入社後1年未満の者

二、1週間の所定労働日数が2日以下の者

(介護短時間勤務の申出を拒むことができる従業員)

第8条 会社は、次の従業員から介護短時間勤務の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。

一、入社後1年未満の者

二、1週間の所定労働日数が2日以下の者

(柔軟な働き方を実現するための措置の申出を拒むことができる従業員)

第9条 会社は、次の従業員から柔軟な働き方を実現するための措置の申出があったときは、その申出を拒むことができるものとする。

一、入社後1年未満の者

二、1週間の所定労働日数が2日以下の者

(従業員への通知)

第10条 会社は、第1条から前条までのいずれかの規定により従業員の申出を拒むときは、その旨を従業員に通知するものとする。

(有効期間)

第11条 本協定の有効期間は、●年●月●日から●年●月●日までとする。

2 前項の有効期間満了の1ヵ月前までに、会社または従業員代表者のいずれからも申出がないときには、本協定は更に1年間有効期間を延長するものとし、以降も同様とする。

協定日:●年●月●日

株式会社●●●●

代表取締役社長 ●●●● 印

従業員代表者  ●●●● 印