【労働基準法】「宿日直許可」とは?許可基準、割増賃金、就業規則の規定例(記載例)などを解説
- 1. 宿日直業務と労働基準法
- 1.1. 宿日直業務(勤務)とは
- 1.2. 宿日直業務と労働基準法
- 1.3. 許可を得た宿日直業務に適用されない規定
- 1.4. 許可を得た宿直業務と割増賃金(残業代)
- 2. 宿日直勤務にかかる許可基準
- 2.1.1. 常態として、ほとんど労働をする必要がないこと
- 2.1.2. 支払われる宿日直手当が、基準で定める最低額を上回ること
- 2.1.3. 宿直勤務は週1回、日直勤務は月1回を限度とすること
- 3. 宿直勤務の前後の通常勤務の可否
- 3.1. 宿直勤務の前後の通常勤務の可否
- 3.2. 留意点
- 4. 宿日直勤務の許可を申請する際の提出書類
- 4.1.1. 労働の態様が分かる資料
- 4.1.2. 賃金台帳、宿日直手当算定書
- 4.1.3. シフト表
- 4.1.4. 睡眠場所の見取り図や写真(宿直勤務のみ)
- 4.1.5. 就業規則(該当箇所)
- 5. 宿直勤務に対する深夜割増賃金の支払いの必要性
- 6. 宿日直勤務に関する就業規則の規定例(記載例)
宿日直業務と労働基準法
宿日直業務(勤務)とは
「宿直業務(勤務)」とは、一般に、労働者が夜間に一定の場所で宿泊をしつつ、緊急電話の対応、定時的巡視、非常事態発生時の対応、外来者の対応、防犯モニターの監視などの特殊業務に従事することをいいます。
宿直業務(勤務)は、例えば、病院、福祉施設、ビルの警備、宿泊施設などで見られる勤務形態です。
また、「日直業務(勤務)」とは、一般に、宿直業務と同様の業務を、昼間の時間帯に行うことをいいます。
宿日直業務と労働基準法
労働基準法は、労働時間や休日など、労働者の労働条件について規制を設けることにより、過重労働から労働者を保護する役割を担っています。
一方、宿日直業務においては、労働の密度や態様が通常の労働と著しく異なり、厳密な労働時間管理になじまない場合があること、また、心身への負担が比較的少なく、労働時間を規制しなくても健康上支障がない場合があることから、労働基準法の規制を一律に適用することが適当でないことがあります。
そこで、労働基準法では、「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」(以下、「許可を得た宿日直業務」といいます)については、「労働時間」「休憩」「休日」に関する各規定を適用しないことを定めています(労働基準法第41条第三号)。
労働基準法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一、(略)
二、(略)
三、監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
許可を得た宿日直業務に適用されない規定
許可を得た宿日直業務には、主に次の規定が適用されません(これを「適用除外」といいます)。
許可を得た宿日直業務に適用されない規定(適用除外)
- 法定労働時間…労働時間を原則として1日8時間、1週40時間以内とする(労働基準法第32条)
- 休憩時間…労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は60分の休憩時間を確保する(同法第34条)
- 法定休日…原則として週に1日の休日を確保する(同法第35条)
許可を得た宿直業務と割増賃金(残業代)
法定労働時間に関する規定が適用されないということは、それに伴って、許可を得た宿日直業務には、時間外労働(法定労働時間を超えて働くこと)という概念がないことを意味します。
労働基準法では、労働者が時間外労働をした場合には、使用者はその時間に対して、原則として25%以上を割り増しした賃金(割増賃金)を支払う義務を負います(労働基準法第37条)。
一方、許可を得た宿日直業務については、法定労働時間に関する規定の適用が除外されることにより、時間外労働が発生しないため、使用者は宿日直業務の時間に対し、割増賃金を支払う必要がありません。
宿日直勤務にかかる許可基準
一般的な事業場(病院や福祉施設を除く)における宿日直勤務にかかる許可基準は、次のとおりです(昭和22年9月13日発基17号)。
宿日直許可にかかる許可基準
- 常態として、ほとんど労働をする必要がないこと
- 支払われる宿日直手当が、基準で定める最低額を上回ること
- 宿直勤務は週1回、日直勤務は月1回を限度とすること
- 宿直勤務については、相当の睡眠設備を条件として許可すること
常態として、ほとんど労働をする必要がないこと
「ほとんど労働をする必要がない」とは、例えば、緊急の文書または電話の収受、定時的巡視、非常事態に備えての待機などを目的とする働き方が対象となります。
したがって、宿日直勤務をしている時間帯に、通常の労働(例えば、顧客からの電話対応など)を継続して行う場合には、原則として許可の対象となりません。
また、宿日直許可を得た宿日直勤務中に、突発的な事故による緊急対応を行うなど、本来通常の勤務時間に従事するような業務が発生した場合には、たとえ許可を得た宿日直勤務中であっても、通常の勤務時間と同態様の業務に従事した時間については、労働基準法に基づく労働時間となり、また、当該時間に対して割増賃金を支払う必要があります。
支払われる宿日直手当が、基準で定める最低額を上回ること
宿日直手当の額(深夜割増賃金を含む)については、次のとおり最低額が定められています。
宿日直手当の最低額
当該事業場において、宿直または日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金の1人1日平均額×3分の1
宿直勤務は週1回、日直勤務は月1回を限度とすること
宿直勤務については週1回、日直勤務については月1回が限度となります。
ただし、例外として、下記の要件を満たす場合には、宿日直勤務の実態に応じて、当該回数を超えて許可を得ることができる場合があります。
- 事業場に勤務する18歳以上の者で、法律上宿日直勤務を行うことができる労働者が宿日直勤務をした場合でも、人数が不足する場合
- 勤務の労働密度が薄い場合
宿直勤務の前後の通常勤務の可否
宿直勤務の前後の通常勤務の可否
宿直勤務は、常態として、ほとんど労働する必要のない勤務を許可の対象とするものであることから、宿直勤務を行ったとしても、前日や翌日の勤務について、身体的に大きな負担はないものと考えられるため、法律上、宿直勤務の前後の通常勤務が禁止されるものではないと解されます。
したがって、宿直勤務の前後において、通常勤務をした後に宿直勤務をすることも、宿直勤務をした後に通常勤務をすることも、法律上は問題ありません。
この場合、通常の勤務を終えて宿直勤務をしても、労働時間等の規定が適用されないため、拘束時間が長くても時間外労働にはなりませんので、使用者は許可基準に基づき宿日直手当を支払えばよく、時間外労働に対する割増賃金を支払う必要はありません。
したがって、時間外労働の有無、およびそれに伴う割増賃金の支払い義務は、あくまで通常勤務部分の労働時間のみをもって、実働8時間を超えるか否かで判断することとなります。
留意点
通常の勤務の延長で(同じ勤務態様のまま)宿直勤務を行うこと(その逆も)は、そもそも宿直勤務の許可基準を満たしませんので、通常勤務と、宿直勤務の態様とは、明確に分けておく必要があることに留意する必要があります。
宿直勤務の時間中に引き続いて通常業務を行うなど、実態は宿直勤務ではなく、単なる夜勤であると認められる場合には、原則通り労働基準法が適用されるため、この場合には法定労働時間に基づき、日勤と夜勤の交替制などにする必要があります。
宿日直勤務の許可を申請する際の提出書類
宿日直勤務の許可を申請する際の提出書類は、主に次のとおりです。
宿日直勤務の許可を申請する際の提出書類
- 断続的な宿直または日直勤務許可申請書(様式第10号)
- 労働の態様が分かる資料
- 賃金台帳、宿日直手当算定書
- シフト表
- 睡眠場所の見取り図や写真(宿直勤務のみ)
- 就業規則(該当箇所)
労働の態様が分かる資料
ほとんど労働をしない勤務であることを証するために添付します。
例えば、タイムスケジュール、業務マニュアルなどが該当します。
賃金台帳、宿日直手当算定書
支払われる宿日直手当の額が、基準で定める最低額を下回らないことを証するために添付します。
シフト表
宿日直勤務の回数が基準(宿直勤務は週1回以下、日直勤務は月1回以下であること)を下回らないことを証するために添付します。
睡眠場所の見取り図や写真(宿直勤務のみ)
宿直勤務について、相当の睡眠設備を設置していることを証するために添付します。
なお、現地調査を行うかどうかは、行政の判断によります。
就業規則(該当箇所)
許可を得るために就業規則に記載しなければならない事項は特に定められていませんが、少なくとも、宿日直業務をする場合の労働時間(始業・終業時刻)や、宿日直手当に関する定めは必要と解されます。
宿直勤務に対する深夜割増賃金の支払いの必要性
許可を得た宿直勤務については、労働基準法の規定がすべて適用されない、ということはなく、労働基準法のうち適用されない規定は、あくまで「労働時間」「休憩」「休日」に関する規定のみであることに留意する必要があります。
例えば、深夜業務の割増賃金(午後10時から午前5時までの間に労働をした時間に対する割増賃金)にかかる規定は、許可を得た宿直業務にも適用されます(労働基準法第37条第3項)。
したがって、宿直勤務について、労働基準監督署の許可を得たとしても、深夜労働にかかる規定の適用は除外されないため、理論上は、深夜労働にかかる割増賃金の支払いが必要となります。
ただし、宿直勤務にかかる許可は、そもそも、ほとんど労働の必要がない勤務に対して認められるものであり、「実労働時間に対する賃金」という概念が希薄であることから、通常は、宿直手当などの支払いをもって、宿直勤務全体に対する評価としての賃金が支払われているものと解されます(そもそも労働時間の対価としての手当ではないため、深夜割増賃金を計算すること自体が困難といえます)。
別の言い方をすると、宿直手当は、その性質上、そもそも深夜割増賃金をも含めた手当として設計されるものである(深夜割増賃金が宿直手当に包含されている)といえ、当該手当の総額が、同種の労働者に対して支払われている賃金の1人1日平均額の3分の1を上回っていることが許可の基準とされているものです。
以上の理由から、宿直勤務をした場合には、深夜割増賃金を含めて宿直手当のみを支払えば足り、別に深夜割増賃金を計算して支払う必要はないと解されます。
宿日直勤務に関する就業規則の規定例(記載例)
宿日直勤務に関する就業規則の規定例(記載例)は、次のとおりです。
宿日直勤務に関する就業規則の規定例(記載例)
(宿日直勤務の始業・終業時刻)
第1条 宿直勤務または日直勤務を行う社員の始業・終業時刻は、次のとおりとする。
勤務形態 | 始業・終業時刻 | 回数 |
宿直勤務 | 午後8時から翌日午前8時まで (ただし、午後11時から翌日午前6時までを仮眠時間とする) | 1週に1回までとする |
日直勤務(休日) | 午前8時から午後8時まで | 1ヵ月に1回までとする |
2 前項に定める始業・終業時刻は、業務の都合その他の事情により、これを繰り上げ、または繰り下げることがある。
3 会社は、宿日直勤務にかかる勤務の割当について、輪番制によって決定し、原則として勤務日の2ヵ月前までに、社員に通知する。
4 会社は、宿日直勤務について、労働基準法第41条に基づき、所轄労働基準監督署の許可を得た場合には、当該勤務中においては、同法が定める労働時間、休憩および休日にかかる規制を適用しない。
(宿日直勤務中における職務)
第2条 宿日直勤務中における職務は、次のとおりとする。
一、施設の設備、備品、商品および書類等の監視保全
二、施設内の巡視(火気の始末、戸締まり等の点検)による火災、盗難等の防止
三、電話、郵便物等の収受および緊急の事項についての関係者への連絡
四、外来者への対応(顧客対応を除く)
五、火災、その他非常事態が生じた場合における緊急連絡対応
六、宿直者から日直者(または日直者から宿直者)への必要事項の引継ぎ
七、その他、前各号に付随する業務
2 宿日直勤務者の勤務場所は、会社が定める施設内とし、勤務中はみだりに勤務場所を離れないものとする。ただし、会社が別段の指示をした場合、または許可をした場合には、その場所とする。
3 宿日直勤務者は、火災、盗難その他の非常事態が発生した場合には、速やかに関係者および関係官庁に連絡するとともに、適切な処置を講じ、被害を最小限にとどめるよう努めるものとする。
4 宿日直勤務者は、勤務中に生じた事項を所定の報告書に記載し、勤務終了後、遅滞なく所属長に提出しなければならない。
(宿日直手当)
第3条 宿日直勤務に従事した社員に対しては、次のとおり宿日直手当を支給する。
一、宿直勤務…一勤務につき6千円(深夜労働にかかる割増賃金を含む)
二、日直勤務…一勤務につき5千円
2 前項の宿日直手当は、給与支給日に支払うものとする。