【ハラスメント】結局、企業は何を対策すればいいのか?ハラスメント対策として最低限行うべき4つの対応

はじめに
これまで、2017年1月1日施行に施行された育児休業等に関するハラスメントへの対応義務を皮切りに、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、カスタマーハラスメントなどについて、事業主に雇用管理上の措置を講じることが義務付けられてきました。
もっとも、実務上は、とくに人員に限りがある中小企業にとって、ハラスメントの種類ごとに、措置の内容を一から個別に検討し、規程やマニュアルを整備していくことは、大きな負担となります。
そこで本稿では、厚生労働省の各指針、および「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(厚生労働省/都道府県労働局雇用環境・均等部(室)作成)」の内容を踏まえ、各ハラスメントに共通して求められる措置を、企業が最低限講ずべき4つの対応として整理して解説します。
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事業主に対応が義務付けられているハラスメント
2026年10月1日時点において、法律上、事業主に雇用管理上の措置が義務付けられているハラスメントは、次のとおりです。
【事業主に対応が義務付けられているハラスメント】
| 種類 | 法律 | 施行日 |
| 職場における育児休業等に関するハラスメント | 育児・介護休業法 第25条 | 2017年1月1日 |
| 職場における妊娠・出産等に関するハラスメント | 男女雇用機会均等法 第15条 | 2017年1月1日 |
| 職場におけるパワーハラスメント | 労働施策総合推進法 第31条 | 2020年6月1日 |
| 職場におけるセクシュアルハラスメント | 男女雇用機会均等法 第11条 | 2020年6月1日 |
| 職場におけるカスタマーハラスメント | 労働施策総合推進法 第33条 | 2026年10月1日 |
| 求職活動等におけるセクシュアルハラスメント | 男女雇用機会均等法 第13条 | 2026年10月1日 |
これらは、根拠となる法律や細部の要件こそ異なりますが、いずれも、事業主に対し、「労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と定めている点で共通しています。
事業主が講ずべき措置の内容は、ハラスメントの種類が変わっても、基本的に共通していることから、まずは各ハラスメントに共通する部分を中心に整備することにより、ハラスメント対策の土台を構築できると考えます。
企業が最低限講ずべき4つの対応
厚生労働省の指針が求める措置を横断的に整理すると、事業主が最低限講ずべき対応は、次の4つに集約することができます。
企業が最低限講ずべき4つの対応
- 事業主の方針の明確化と周知・啓発
- 相談窓口の設置・周知
- 就業規則(懲戒規定)の整備
- 発生時の迅速な事後対応と再発防止
以下、順に解説します。
1.事業主の方針の明確化と周知・啓発
まず、事業主として、「ハラスメントを行ってはならない」旨の方針を明確化し、管理監督者を含むすべての労働者に周知・啓発することが必要です。
方針の周知方法の例
- 就業規則など服務規律を定めた文書に規定すること
- 社内報、パンフレット、社内ホームページなどに掲載すること
- 研修・講習を実施すること
方針を定めるだけでなく、実際に労働者一人ひとりに伝わっているかどうかが重要です。
定期的な発信や研修の実施などにより、周知を形骸化させない工夫が求められます。
なお、カスタマーハラスメントにおいては、加害者が社外の第三者(顧客等)であることから、自社の労働者への周知に加え、方針を顧客等に周知することも、被害防止の観点から効果的とされています。
また、カスタマーハラスメントにおいては、悪質なケースへの対処方針をあらかじめ定め、警察への通報や弁護士との連携、取引の停止、出入りの禁止などの対応を行う方針であることを社内外に周知しておくことも有用です。
2.相談窓口の設置・周知
相談窓口の設置・周知
ハラスメントに関する相談(苦情を含む)に対応するための窓口をあらかじめ定め、労働者に周知することが必要です。
窓口を形式的に設けるだけでは足りず、実質的に対応できる窓口であることが求められます。
窓口の設置方法としては、①相談に対応する担当者をあらかじめ定めること、②相談に対応するための制度を設けること、③外部の機関に相談対応を委託することなどが考えられます。
なお、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなど、複数のハラスメントの相談窓口を一体的に設置し、一元的に相談に応じることができる体制とすることが望ましいとされています。
窓口を一本化しておくことで、労働者にとっての分かりやすさと、担当者の負担軽減の両方につながります。
なお、相談窓口の周知は、基本的に社内向けに行うものですが、求職者等に対するセクシュアルハラスメントにおいては、被害者が社外の第三者(求職者等)であることから、社内周知のみでは適切に対応できません。
そこで、求職者等に対しては、相談窓口について、募集要項や採用ホームページなどに掲載するなどして、求職者等に周知する必要があります。
相談対応の体制整備
窓口を設置しても、担当者が状況に応じて適切に対応できなければ、実質的に機能しないことから、相談の内容や状況に応じて適切に対応できるよう、体制を整えておく必要があります。
具体的には、①相談窓口の担当者と人事部門とが連携できる仕組みをつくること、②あらかじめ対応マニュアルを作成しておくこと、③担当者に対する研修を実施することなどが考えられます。
また、ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、該当するか微妙な場合であっても、広く相談に応じることが求められます。
相談者が萎縮して相談をためらう例もあるため、相談者の心身の状況や受け止め方にも配慮した対応が必要です。
併せて、いわゆる二次被害(相談窓口の担当者の対応によって相談者がさらに傷つくこと)を防ぐことも重要なポイントです。
なお、労働者が相談を行ったこと、または相談対応に協力したことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないとされていますので、この点も周知しておく必要があります。
3.就業規則(懲戒規定)の整備
ハラスメントに係る言動を行った者については厳正に対処する旨の方針と、その具体的な対処内容(懲戒処分に関する規定など)を、就業規則その他の服務規律を定めた文書に規定し、労働者に周知・啓発することが必要です。
「相談窓口は設置しているが、違反した場合にどのような処分を受けるかが就業規則に定められていない」というケースは少なくありません。
方針の周知とあわせて、懲戒規定の整備を行っておく必要があります。
なお、就業規則に記載する必要はありませんが、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するために、面談の実施体制やSNSの利用ルールなど、求職者等と接する際のルールをあらかじめ明確化しておく必要があります。
4.発生時の迅速な事後対応と再発防止
ハラスメントに関する相談があった場合には、次のような一連の対応を、迅速かつ適切に行う必要があります。
発生時に必要な対応の流れ
- 事実関係の迅速かつ正確な確認(相談者・行為者双方から確認)
- 被害者に対する適正な配慮の措置(配置転換、行為者の謝罪、メンタルヘルス相談対応など)
- 行為者に対する適正な措置(就業規則に基づく懲戒処分の検討など)
- 再発防止に向けた措置(方針の再周知、研修の再実施など)
あわせて、相談者・行為者等のプライバシーを保護するための措置と、相談等を理由とする不利益取扱いを行わない旨についても、あらかじめ定め、周知しておく必要があります。
ハラスメントの事実が確認できなかった場合でも、これまでの防止対策に問題がなかったかを再点検し、あらためて周知を図ることが望ましいとされています。
余力があれば取り組みたいこと
厚生労働省は、上記の4つの対応に加え、次のような取り組みについても、望ましいものとして挙げています。
望ましいとされる取組の例
- ハラスメントの原因や背景となる要因(コミュニケーション不足、長時間労働など)を解消するための取り組み
- 労働者アンケートなどによる職場の実態把握
義務ではないものの、これらに取り組むことで、ハラスメントそのものの発生を未然に防ぐ効果が期待できます。
最低限の体制が整った後に行う対応として、ご検討ください。

