就業規則の届出手続(労働者代表の選出、意見書、届出方法など)を解説

はじめに

事業場の就業規則を作成または変更した場合には、その就業規則を遅滞なく所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

その際、単に就業規則を提出するのではなく、労働基準法が定める一連の手続を行う必要があります。

本稿では、就業規則を届け出る際の手続について解説します。

なお、就業規則の基本的な内容については、以下の記事をご覧ください。

「就業規則」とは?就業規則の作成義務・記載内容など基本を解説

就業規則の届出義務と手続

届出義務

法律上、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成したとき、または変更したときは、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています(労働基準法第89条)。

就業規則を労働基準監督署に届け出る必要はありますが、内容について許可を得る必要まではありません。

労働基準監督署の窓口では、必要書類の記載の不備などがない限り受理されますが、内容が法令に反する場合は変更命令があり得ます(労働基準法第92条第2項)。

届出が受理された際には、就業規則に労働基準監督署の受付印(受領印)が押印されますが、これは提出された書類を、労働基準監督署が「確かに受け付けた」という事実を示すものです。

したがって、受付印があるからといって、「適法な就業規則である(労働基準法に適合している)」というお墨付き(保証)をもらえるものではありません。

就業規則の届出手続

就業規則の届出手続については、労働基準法によって、次のとおり定められています。

労働基準法第90条(作成の手続)

使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

以下、順に説明します。

労働者の過半数を代表する者の意見書

労働者の過半数を代表する者

就業規則を届け出る際には、労働者の過半数を代表する者(以下、「労働者の過半数代表者」といいます)を選出し、その者の意見を聴く手続を経る必要があります(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その意見を聴きます。以下同じ)。

労働者の過半数代表者は、作成または変更される就業規則の内容について、労働者の代表として、使用者に対して意見を述べる役割を担います。

なお、「過半数」とは、その事業場で働くすべての労働者の過半数とされているため、その母数には正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員などを含みます。

選出要件

労働者の過半数代表者に選出されるための要件や、その選出方法については、次のとおり定められています(労働基準法施行規則第6条の2第1項)。

労働者の過半数代表者の選出要件

  • 労働基準法第41条第2号に規定する監督・管理の地位にある者でないこと
  • 労働基準法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと

「監督・管理の地位にある者」とは、通称「管理監督者」といい、労働基準法の一部(労働時間、休憩、休日)の適用が除外される労働者をいいます。

管理監督者に該当するかどうかの判断要素について、ここでは説明を割愛しますが、一般的には、部長職など、経営幹部に近い立場で働く労働者がこれに該当します(ただし、名称ではなく、職務内容・権限・待遇などの実態で判断されます)。

また、労働者の過半数代表者は、投票など民主的な手続によって選出する必要があります。

例えば、使用者が一方的に任命したり、選出手続が何年も行われず同じ者が代表者になっているなど、選出方法が適切でない場合には、就業規則が適法に届け出られたものと認められない可能性があります。

なお、「投票、挙手等」の「等」の意味について、行政通達では、労働者同士の話し合いや持ち回り決議など、労働者の過半数が代表者の選任を支持していることが明確になるような、民主的な手続が該当するとしています(平成11年3月31日基発169号)。

意見書とは

就業規則の作成または変更の届出に際しては、労働者の過半数代表者の意見を記した「意見書」を添付する必要があります。

意見書には、決まった様式はありませんので、任意に作成したもので構いません。

なお、この手続はあくまでも労働者の過半数代表者の「意見」を聴くものであって、その「賛成」や「同意」を得る必要まではありませんので、仮に反対意見が述べられていたとしても、就業規則の効力に影響はありません(昭和24年3月28日基発373号)。

就業規則の一部のみを変更する場合

就業規則の一部のみを変更する場合であっても、同様に労働者の過半数代表者の意見を聴く必要があります。

このとき、就業規則の変更内容が、特定の部署や職種の労働者にしか影響しないものであっても、その事業場の全労働者の過半数を代表する者の意見を聴く必要があります(昭和63年3月14日基発150号)。

例えば、正社員100名、パート10名の事業場において、パートにのみ適用される就業規則(パート就業規則)を変更する場合でも、労働者の総数の過半数(56名以上)を代表する労働者の意見を聴く必要があります(パート10名の過半数を代表する労働者ではないということ)。

なお、この場合には、就業規則の変更内容の影響を受ける立場にある、パートの意向を反映するために、パートタイム・有期雇用労働法に基づき、使用者はパート(短時間労働者・有期雇用労働者)の過半数を代表する者の意見を聴くように努めるものとする(努力義務)とされています(パートタイム・有期雇用労働法第7条)。

罰則

使用者が労働者の過半数代表者からの意見聴取を怠り、または労働者の過半数代表者の選出方法が適切でない場合には、罰則として30万円以下の罰金の対象になります(労働基準法第120条第1号)。

就業規則の届出書類・届出方法

就業規則の届出書類

就業規則の届出は、原則として、事業場を管轄する労働基準監督署に対して行います。

「事業場」とは、工場、事務所、店舗など、一定の場所において相関連する組織のもとに継続的に行われる作業の一体をいいます(必ずしも会社単位、組織単位とはなりません)。

例えば、本社と支店が別の管轄にある場合には、それぞれの事業場を管轄する労働基準監督署に対して届け出ます。

就業規則の届出の際には、次の書類を提出します。

就業規則の届出書類

  • 就業規則原本(2部。控え用は写し可)
  • 就業規則(変更)届(2部)
  • 労働者の過半数代表者の意見書(2部)

届出書類は、2部ずつ用意する必要があり、提出した後、1部は受付印を押され、会社の控え(保管用)として返却されます。

この届出は、郵送で行うことも認められます。

郵送する場合は、労働基準監督署から会社控え分を返送してもらうために、返信用封筒を入れておきます。

なお、届出に必要な書類のうち、就業規則はCD-R等の電子媒体で提出することができます。

ただし、意見書は書面による原本を添付することが必要です。

就業規則原本

賃金規程や退職金規程など、就業規則(本則)の別冊・分冊となっている規程についても、就業規則の一部である場合は届出が必要です。

就業規則(変更)届

届出をする際に、就業規則の表紙として添付する書面をいいます。

就業規則(変更)届には、決まった様式はなく、会社が任意に作成したもので構いません。

就業規則(変更)届には、少なくとも使用者の名称(会社名)、所在地、代表者の職名・氏名が記載されていることが必要です。

なお、就業規則(変更)届は、厚生労働省や各労働局のホームページなどからダウンロードできます。

一括届出制度

一定の要件を満たすと、本社と他の事業場(支店、営業所、店舗など)の就業規則について、本社で一括して(まとめて)、本社の事業場を管轄する労働基準監督署に対して届出をすることが認められます(令和7年3月28日基発0328第9号)。

本社一括届出の方法は、書面等、e-Govまたは労働条件ポータルサイトからの電子申請の方法があります。

書面等またはe-Govからの電子申請を行う場合には、一括して届け出る本社の就業規則と、本社以外の各事業場の就業規則が、変更の前後を通じて、同じ内容であるものに限り利用することができます。

なお、労働条件ポータルサイトを利用する場合は、本社と各事業場が異なる場合でも一括届出が可能です。

つまり、各事業場の就業規則の内容が同一であれば、それが本社と異なる場合でも、内容が同一である複数の事業場については、一括して届出を行うことができます。

届出手続の期限

就業規則は、作成または変更した後、「遅滞なく」届け出る必要があります(労働基準法施行規則第49条)。

具体的に何日以内などと定められていませんが、「遅滞なく」とは、一般に、「なるべく、すぐに」というニュアンスで用いられるものですので、正当な理由なく長期間放置することは認められません。

ただし、届出が遅滞することについて正当な理由がある場合(例えば、労働者の過半数代表者から意見書の提出が遅くなった、郵送の遅配によって手続が遅延したなど)は、届出が遅れたことをもって直ちに法違反となるものではないと考えます。

なお、就業規則の変更について、数年に1回、その間の変更内容をまとめて届け出るなど、一定期間分をまとめて届け出ることは認められないと解されます。