「介護休業」とは?要件(対象者・対象家族)や取得日数・回数など、制度をわかりやすく解説

介護休業とは?

介護休業とは?

介護休業」とは、従業員が、「要介護状態」にある「対象家族」を介護するために取得する休業をいいます(育児・介護休業法第2条第二号)。

「介護」とは、歩行、食事、排泄などの日常生活に必要な便宜を供与することをいいます。

介護休業は、従業員自らが対象家族の介護を行うだけでなく、仕事と介護を両立させるための体制づくりのための期間としても位置付けられています。

介護休業を活用することで、介護保険サービスを受けるための準備を行うなど、対象家族の介護をしながら仕事を継続できる体制を整えていくことができます。

なお、介護保険サービスの利用については、市区町村、地域包括支援センターなどに相談をすることができます。

要介護状態とは?

要介護状態」とは、負傷、疾病、または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にあることをいいます(育児・介護休業法第2条第三号、同施行規則第2条)。

なお、これは介護保険における「要介護状態」と必ずしも一致するものではありません。

対象家族とは?

対象家族」とは、介護休業を取得する従業員にとって、次の関係にある者をいいます(育児・介護休業法第2条第四号、同施行規則第3条)。

介護休業の対象家族

  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹

介護休業を取得できる従業員(対象者)

従業員は、次の要件に該当する場合を除き、介護休業を取得することができます(育児・介護休業法第11条など)。

介護休業の対象者から除かれる従業員

  1. 日雇いの従業員
  2. 期間を定めて雇用されている従業員であって、介護休業の申出時点において、介護休業の開始予定日から起算して、93日を経過する日から6ヵ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかな従業員
  3. 労使協定で除外された従業員

3.の労使協定で除外することができる従業員は、次のとおりです。

なお、労使協定とは、会社と、従業員の過半数を代表する者との間において、書面によって締結される協定をいいます。

労使協定によって除外できる従業員

  • 入社後1年未満の従業員
  • 介護休業の申出日から、93日以内に雇用期間が終了する従業員
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

介護休業の取得回数・期間(93日)

介護休業は、対象家族1人につき3回まで取得することができ、通算93日まで休業することができます。

1回あたりの介護休業は、連続した、ひとまとまりの期間である必要があります。

「家族の介護は長期間にわたることが多いのに対して、93日では短いのではないか」という見方もありますが、介護休業制度は、従業員が雇用を継続していくために、介護に関する今後の方針を決めるまでの当面の間、従業員による介護がやむを得ない期間について、いわば一時的・緊急的な対応として、休業できるようにする観点から創設されています。

よって、93日という期間は、従業員が自ら、すべての介護を行うための期間ではなく、介護に関する今後の方針を決めるための期間と捉えることが適切です。

要介護状態の判断基準

介護休業の要件とされる「要介護状態(常時介護を必要とする状態)」の判断基準は、厚生労働省によって示されています。

「常時介護を必要とする状態」とは、以下の1.または2.のいずれかに該当することをいいます。

常時介護を必要とする状態

  1. 介護保険制度の要介護状態区分において「要介護2」以上であること。
  2. 下表の①から⑫の状態のうち、「2」が2つ以上、または「3」が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。

2.においては、下表に基づいて判断をします。

 項目・状態(注1)(注2)
座位保持(10分間一人で座っていることができる)自分で可支えてもらえればできる(注3)できない
歩行(立ち止まらず、座り込まずに5m程度歩くことができる)つかまらないでできる何かにつかまればできるできない
移乗(ベッドと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り移りの動作)自分で可一部介助、見守り等が必要全面的介助が必要
水分・食事摂取(注4)自分で可一部介助、見守り等が必要全面的介助が必要
排泄自分で可一部介助、見守り等が必要全面的介助が必要
衣類の着脱自分で可一部介助、見守り等が必要全面的介助が必要
意思の伝達できるときどきできないできない
外出すると戻れないないときどきあるほとんど毎回ある
物を壊したり衣類を破くことがあるないときどきあるほとんど毎日ある(注5)
周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れがあるないときどきあるほとんど毎日ある
薬の内服自分で可一部介助、見守り等が必要全面的介助が必要
日常の意思決定(注6)できる本人に関する重要な意思決定はできない(注7)ほとんどできない

(注1)各項目の1の状態中、「自分で可」には、福祉用具を使ったり、自分の手で支えて自分でできる場合も含む。

(注2)各項目の2の状態中、「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症高齢者等の場合に必要な行為の「確認」、「指示」、「声かけ」等のことである。

(注3)「①座位保持」の「支えてもらえればできる」には、背もたれがあれば一人で座っていることができる場合も含む。

(注4)「④水分・食事摂取」の「見守り等」には、動作を見守ることや、摂取する量の過小・過多の判断を支援する声かけを含む。

(注5)⑨3の状態(「物を壊したり衣類を破くことが、ほとんど毎日ある」)には、「自分や他人を傷つけることがときどきある」状態を含む。

(注6)「⑫日常の意思決定」とは、毎日の暮らしにおける活動に関して意思決定ができる能力をいう。

(注7)慣れ親しんだ日常生活に関する事項(見たいテレビ番組やその日の献立等)に関する意思決定はできるが、本人に関する重要な決定への合意等(ケアプランの作成への参加、治療方針への合意)には、指示や支援を必要とすることをいう。

介護休業の申請方法

介護休業は、介護休業の開始予定日の2週間前までに、従業員が書面によって会社に対して申し出ることによって取得することができます。

なお、会社がこれよりも短い申請期限を定めることは、従業員にとって有利な運用となるため、問題ありません。

会社は、介護休業を申し出る従業員に対して、「対象家族の氏名および従業員との続柄」および「対象家族が要介護状態にある事実」を証明する書類の提出を求めることができます(育児・介護休業法施行規則第23条第3項)。

ただし、介護保険の要介護認定の結果通知書や、医師の診断書の提出を、介護休業を取得するための必要条件とすることはできず、基本的には、従業員が提出可能な書類の範囲内で対応する必要があるといえます。

介護休業期間中の賃金(介護休業給付金)

介護休業期間中の賃金

従業員が介護休業を取得した日については、会社は従業員に対して賃金を支払う義務がありません

したがって、介護休業期間中の賃金の支給については、会社が定める就業規則に従うこととなります。

ただし、賃金を無給とした場合であっても、社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料など)は免除にならないため、会社と従業員は社会保険料を労使で折半して、引き続き納付する必要があります。

介護休業給付金

従業員が一定の要件を満たす場合には、介護休業期間中に「介護休業給付金」が支給されます。

介護休業給付金は、従業員が加入する雇用保険から支給され、休業開始時の賃金日額の67%に、支給日数を乗じた額が支給されます。

介護休暇との違い

介護休暇とは?

介護休業と似た制度として、「介護休暇」があります。

介護休暇」とは、要介護状態にある対象家族の介護や世話をするための休暇をいいます(育児・介護休業法第16条の5)。

要介護状態にある対象家族を介護するために取得する点では、介護休業と共通しています。

介護休業と異なる点として、介護休暇は、その取得単位が最大1日であることから、通院の付添い、介護サービスの手続、介護支援専門員(ケアマネジャー)との打ち合わせなど、介護休業に比べて短時間で行う用途に利用することが一般的です。

介護休暇の取得日数

介護休暇は、対象家族が1人の場合は年5日まで、対象家族が2人以上の場合は年10日まで取得することができます。

介護休暇の取得単位

介護休暇は、1日または1時間単位で取得することができます。

介護休暇を取得した日(時間)の賃金

介護休暇を取得した日(時間)の賃金については、介護休業と同様に、会社に支払う義務がないため、原則として無給となります。

なお、介護休暇には、介護休業を取得した場合に支給される介護休業給付金のように、従業員の賃金を助成する制度はありません。