「最低賃金」とは?定義、種類、計算方法(確認方法)など基礎知識を解説

最低賃金の定義

最低賃金制度とは

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき、国が賃金の最低限度額(最低賃金)を定めることにより、使用者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払うことを義務付ける制度です。

対象者

最低賃金法が適用される対象者は、労働基準法に定める「労働者」であり、労働基準法では、労働者の定義として、「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定めています(労働基準法第9条)。

したがって、パート、アルバイト、契約社員などの雇用形態を問わず、最低賃金法が適用されます。

なお、同居の親族のみを使用する事業または事務所に使用される者、および家事使用人には、最低賃金法は適用されません(最低賃金法第2条第1号)。

最低賃金額の定め方

最低賃金額は、「時間額(時給)」によって定めるものとされています(最低賃金法第3条)。

最低賃金の種類

最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定最低賃金(産業別最低賃金)」の2種類があります。

地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。

地域別最低賃金

地域別最低賃金」とは、地域ごと(都道府県ごと)の最低賃金をいい、産業や職種に関わらず、すべての労働者に適用される最低賃金をいいます。

地域別最低賃金の決定は、まず、地方最低賃金審議会(公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成)にて、中央最低賃金審議会から示される引上げ額の目安を参考にしながら、地域の実情を踏まえて審議・答申を行います。

その後、異議申出に関する手続きを経て、最終的に都道府県労働局長により決定されます。

特定最低賃金(産業別最低賃金)

特定最低賃金(産業別最低賃金)」とは、特定の地域内の、特定の産業の基幹的労働者に対して適用される最低賃金をいいます。

地域別最低賃金と異なり、労使間のイニシアティブにより決定され、かつ適用範囲が限定的であることが特徴です。

特定最低賃金は、18歳未満または65歳以上の者、雇入れ後一定期間未満で技能習得中の者、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する者などには適用されません。

特定最低賃金の決定は、まず、関係労使の申出に基づき、地方最低賃金審議会(または中央最低賃金審議会)が必要と認めた場合において、地方最低賃金審議会(または中央最低賃金審議会)で審議・答申を行います。

その後、異議申出に関する手続きを経て、最終的に都道府県労働局長(または厚生労働大臣)により決定されます。

最低賃金の計算・確認方法(時給制・日給制・月給制の場合)

前述のとおり、最低賃金は時間額(時給)によって定められることから、月給制など、時給制以外の方法で給与が支払われている場合には、給与を時給に換算(計算)した上で、最低賃金額を上回っているかどうかを確認する必要があります。

給与が最低賃金額以上であるかどうかを確認するための計算方法は、次のとおりです。

時給制の場合

時給制の場合の確認方法

時給 ≧ 最低賃金額(時間額)

日給制の場合

日給制の場合の確認方法

日給÷1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)

日給制の場合には、日給を1日の所定労働時間で割ることにより、時間額を計算します。

例えば、日給が1日1万円、1日の所定労働時間が8時間の場合には、時間額は1,250円(1万円÷8時間)となります。

なお、1日の所定労働時間について、日によって所定労働時間数が異なる場合には、1週間における1日の平均所定労働時間数(1週間の合計所定労働時間÷7日)によって計算します(最低賃金法施行規則第2条第1項第1号)。

月給制の場合

月給制の場合の確認方法

月給(※1)÷1ヵ月平均所定労働時間(※2) ≧ 最低賃金額(時間額)

(※1)月給

最低賃金額以上となっているかどうかを確認する際の月給には、次の賃金を算入しないこととされています。

単純に、給与の総支給額を月給として計算するのではないことに留意する必要があります。

最低賃金の計算の際、月給から除かれる賃金

  • 精皆勤手当
  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)

(※2)1ヵ月平均所定労働時間

「1ヵ月平均所定労働時間」とは、1年間の所定労働時間を合計した時間から算出した、1ヵ月あたりの平均的な所定労働時間をいいます。

1ヵ月平均所定労働時間は、次の計算によって算出します。

1ヵ月平均所定労働時間

年間の所定労働日数(365-年間休日数)×1日の所定労働時間÷12ヵ月

例えば、年間の所定労働日数が255日(年間休日110日)、1日の所定労働時間が8時間の場合には、1ヵ月平均所定労働時間は、170時間(255日×8時間÷12ヵ月)となります。

最低賃金の計算・確認方法(歩合給制・出来高制の場合)

歩合給制(出来高制)の場合の確認方法

歩合給制(出来高制)とは、一般に、成績・業績などの一定の成果に応じて、賃金(給与)の額が決定される制度をいいます。

給与を歩合給(出来高制)で支給する場合においても、最低賃金法が適用されます。

歩合給(出来高)が最低賃金額以上であるかどうかを確認するための計算方法は、次のとおりです。

歩合給制(出来高制)の場合の確認方法

歩合給の支給額÷総労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)

計算では、日給制・月給制の計算で用いた「所定」労働時間ではなく、「総」労働時間を用いることに留意する必要があります。

総労働時間とは、一賃金計算期間(月給制であれば、1ヵ月)において労働したすべての時間をいい、所定労働時間(定時まで働いた時間)だけでなく、時間外労働や休日労働をした時間を含めた時間をいいます。

計算例

給与が歩合給のみで構成されている場合(完全歩合給制)の計算例は、次のとおりです。

事例(月単位の完全歩合給制の場合)

  • 支払われた歩合給の額:20万円
  • 所定労働時間:9時から18時(実働8時間・休憩1時間)
  • 1ヵ月の労働日数:22日
  • 1ヵ月の残業時間:20時間

1ヵ月の総労働時間

1ヵ月の総労働時間は、所定労働時間176時間(8時間×22日)と、残業時間20時間とを合計した196時間となります。

計算結果

次に、歩合給の額を総労働時間で割ることにより、時間額を求めます。

【計算】20万円÷196時間≒1,020円(1円未満切捨)

結果として、この事例における歩合給から換算した時間額は、1,020円になり、当該金額が最低賃金額を上回っている必要があります。

最低賃金の減額特例

最低賃金の減額特例とは

最低賃金には、一定の条件のもと、減額の特例が認められています。

特例が認められている趣旨は、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用すると、かえって雇用機会を狭めるおそれがあるためです。

次の者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として、個別に最低賃金を減額することが認められています(最低賃金法第7条)。

最低賃金の減額特例の対象者

  1. 精神・身体の障害により、著しく労働能力の低い者
  2. 試用期間中の者(期間は最長6ヵ月を限度とする)
  3. 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている者のうち、厚生労働省令で定める者
  4. 軽易な業務に従事する者
  5. 断続的労働に従事する者

減額特例の手続

最低賃金の減額特例の許可を受けようとする使用者は、最低賃金の減額の特例許可申請書を、所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。

減額特例の効果

最低賃金の減額特例が許可された場合は、本来適用される最低賃金の額に対して、厚生労働省令で定める率を乗じて得た額が、最低賃金として適用されることになります。

厚生労働省令で定める率は、次の表に定める率以下の率であって、対象者の職務の内容、職務の成果、労働能力、経験などを勘案して定めるものとされています(最低賃金法施行規則第5条)。

【最低賃金の減額率】

減額の対象者減額率
精神・身体の障害により、著しく労働能力の低い者対象者と同一または類似の業務に従事する労働者であって、減額しようとする最低賃金額と同程度以上の額の賃金が支払われている者のうち、最低位の能力を有する者の労働能率の程度に対して、対象者の労働能率の程度に応じた率を100分の100から控除して得た率
試用期間中の者100分の20
基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている者のうち、厚生労働省令で定める者対象者の所定労働時間のうち、認定職業訓練の時間の1日当たりの平均時間数を、対象者の1日当たりの所定労働時間数で除して得た率
軽易な業務に従事する者当該軽易な業務に従事する者と異なる業務に従事する労働者であって、減額しようとする最低賃金額と同程度以上の額の賃金が支払われている者のうち、業務の負担の程度が最も軽易な者の当該負担の程度に対して、当該軽易な業務に従事する者の業務の負担の程度に応じた率を100分の100から控除して得た率
断続的労働に従事する者対象者の1日当たりの所定労働時間数から、1日当たりの実作業時間数を控除して得た時間数に、100分の40を乗じて得た時間数を、当該所定労働時間数で除して得た率

最低賃金法に違反した場合の罰則

違反した場合の法律関係

使用者が、最低賃金法で定める最低賃金額に満たない賃金を支払っている場合には、その最低賃金額に達しない部分については、法律上無効となります(最低賃金法第4条第2項)。

この場合、当該無効となった部分は、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます

例えば、最低賃金が時給1,000円と定められているところ、使用者が時給900円の賃金しか支払っていない場合には、最低賃金に達しない100円部分については法律上無効となり、時給1,000円の労働契約を締結したものとみなされます。

罰則

使用者が、地域別最低賃金で定める最低賃金額に満たない賃金を支払っている場合の罰則として、50万円以下の罰金が定められています(最低賃金法第40条)。

また、特定最低賃金(産業別最低賃金)で定める最低賃金額に満たない賃金を支払っている場合の罰則として、30万円以下の罰金が定められています(労働基準法第24条第1項)。