短時間労働者(パート・アルバイト)の社会保険への加入要件(4分の3基準・月額8万8千円など)を解説

はじめに

パート・アルバイトなど、正社員よりも短い時間または日数で働く従業員(以下、「短時間労働者」といいます)であっても、一定の要件を満たすことにより、健康保険および厚生年金保険(以下、「社会保険」といいます)に加入し、被保険者になることがあります。

短時間労働者の社会保険への加入要件については、原則的な要件である「4分の3基準」に加えて、短時間労働者の勤務する事業所が「特定適用事業所」に該当する場合の要件についても理解する必要があります。

この記事では、短時間労働者の社会保険への加入要件について、整理して解説します。

短時間労働者の社会保険への加入要件(4分の3基準)

4分の3基準とは

短時間労働者が、社会保険に加入し、被保険者となるための原則的な要件は、次のとおりです。

短時間労働者の社会保険への加入要件(4分の3基準)

    1週間の所定労働時間および1ヵ月間の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上であること

    (健康保険法第3条第1項第9号・厚生年金保険法第12条第5号)

    短時間労働者が社会保険に加入するためには、1週間の所定労働時間と、1ヵ月間の所定労働日数について、両方とも4分の3以上である必要があります。

    したがって、例えば、正社員の所定労働時間が1週40時間、所定労働日数が1ヵ月20日である会社において、ある短時間労働者の所定労働時間が1週20時間、所定労働日数が1ヵ月20日(正社員と同じ)である場合には、所定労働時間が正社員の4分の3(30時間)に満たないことから、社会保険に加入する必要はありません。

    所定労働時間(日数)とは

    「所定労働時間(日数)」とは、雇用契約によって定められた労働時間(日数)をいい、具体的には、就業規則または雇用契約書によって定められている時間(日数)をいいます。

    したがって、1週間の所定労働時間と、1ヵ月間の所定労働日数は、原則として、就業規則または雇用契約書の記載をもとに、その者が通常の週および月に勤務すべきと定められている時間および日数から判断します。

    なお、所定労働時間が1ヵ月単位で定められている場合には、1ヵ月の所定労働時間を12倍して、年間の総労働時間を求め、さらに52週で割る(1ヵ月の所定労働時間×12ヵ月÷52週)ことによって、1週間あたりの所定労働時間を算出します。

    実態との乖離が生じている場合

    所定労働時間(日数)は4分の3基準を満たさないものの、事業主に対する事情聴取や、タイムカードなどの書類の確認を行った結果、実際の労働時間(日数)が直近2ヵ月において4分の3基準を満たしている場合で、今後も同様の状態が続くことが見込まれるときは、当該所定労働時間(日数)は、4分の3基準を満たしているものとして取り扱われます。

    短時間労働者の社会保険への加入要件(特定適用事業所)

    前述のとおり、1週間の所定労働時間および1ヵ月間の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3未満である短時間労働者は、原則として、社会保険に加入する必要はありません。

    ただし、例外として、4分の3基準を満たさない場合であっても、次の5つの要件すべてに該当する短時間労働者は、社会保険に加入する必要があります(令和4年3月18日保保発0318第2号)。

    短時間労働者の社会保険への加入要件(特定適用事業所)

    1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
    2. 同一の事業所に継続して2ヵ月以上雇用されることが見込まれること
    3. 報酬が月額8万8千円以上であること
    4. 学生でないこと
    5. 特定適用事業所に雇用されていること

    短時間労働者が社会保険に加入し、被保険者となるのは、上記すべての要件を満たした場合であり、一部の要件を満たしただけでは足りません。

    以下、各要件の内容について、順に解説します。

    1週間の所定労働時間(20時間以上)

    1週間の所定労働時間とは

    1週間の所定労働時間とは、就業規則または雇用契約書によって、その者が通常の週に勤務すべきと定められている時間をいいます。

    したがって、残業時間は含まれません。

    また、「通常の週」とは、祝祭日およびその振替休日、年末年始の休日、夏季休暇などの特別な休日を含まない週をいいます。

    なお、1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し、一定ではない場合(例えば、4週5休制など)には、その周期における1週間の所定労働時間を平均して、1週間の所定労働時間を算出します。

    週以外の単位で所定労働時間が定められている場合

    1ヵ月単位

    所定労働時間が1ヵ月単位で定められている場合には、1ヵ月の所定労働時間を12倍して、年間の総労働時間を求め、さらに52週で割る(1ヵ月の所定労働時間×12ヵ月÷52週)ことによって、1週間あたりの所定労働時間を算出します。

    また、特定の月の所定労働時間に、例外的な長短がある場合(例えば、夏季休暇のため夏季の労働時間が短く定められている場合や、繁忙期中の特定の月の所定労働時間が長く定められている場合など)には、当該特定の月以外の、通常の月の所定労働時間を12倍して、年間の総労働時間を求め、さらに52週で割る(通常月の1ヵ月の所定労働時間×12ヵ月÷52週)ことによって、1週間あたりの所定労働時間を算出します。

    1年単位

    所定労働時間が1年単位で定められている場合には、1年間の所定労働時間を52週で割る(1年間の所定労働時間÷52週)ことによって、1週間あたりの所定労働時間を算出します。

    実際の労働時間が増加した場合

    就業規則や雇用契約書で定められた所定労働時間が20時間未満である者が、業務の都合によって労働時間が増え、実際の労働時間が20時間以上となる場合があります。

    このとき、実際の労働時間が2ヵ月連続で週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が継続することが見込まれる場合には、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3ヵ月目の初日に被保険者資格を取得することとなります。

    雇用期間(2ヵ月以上)

    短時間労働者が社会保険に加入するためには、同一の事業所に継続して2ヵ月以上雇用されることが見込まれることが必要です。

    雇用期間が2ヵ月未満である場合であっても、雇用契約書などによって「契約を更新する場合がある」旨が明示されている場合は、2ヵ月以上雇用されることが見込まれる場合に該当するものとして取り扱われます。

    報酬(月額8万8千円以上)

    報酬の内容

    月額8万8千円は、年収106万円程度に相当しますが、年収額は参考値に過ぎず、要件を満たすかどうかは、あくまで月額によって判定されます。

    「報酬」とは、最低賃金法で賃金に参入されないものを除くこととされており、具体的には、次の賃金は報酬に含まれません

    報酬に含まない賃金

    • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
    • 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
    • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(割増賃金)
    • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金
    • 深夜労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分
    • 最低賃金法で参入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当、家族手当など)

    なお、上記の賃金を報酬に含まないのは、あくまでも本要件の判定時に限られており、短時間労働者が被保険者となった場合の標準報酬月額(社会保険料の算定時に用いられる報酬額)は、割増賃金や通勤手当などを含んで算定されます。

    被扶養者の認定との関係性

    社会保険の被扶養者として認定されるための要件の一つとして、年収が130万円未満であることとする収入要件があります。

    例えば、夫が加入している社会保険について、パートで働く年収130万円未満の妻を被扶養者にしようとする場合において、妻の勤務先が特定適用事業所に該当し、かつ月額8万8千円を超えるなどの要件を満たす場合は、妻の年収が130万円未満であったとしても、妻は被扶養者になることはできず、自ら社会保険に加入する必要があります。

    学生でないこと

    「学生」とは、主に高等学校の生徒、大学または短期大学の学生などが該当します。

    ただし、卒業した後も引き続きその適用事業所に雇用される者、休学中の者、定時制・通信制課程に在学する者、社会人大学院生などは、「学生」に該当しません。

    なお、学生であっても、前述の4分の3基準を満たす場合には、正社員などと同様に、社会保険の被保険者となります。

    特定適用事業所

    特定適用事業所とは

    「特定適用事業所」とは、雇用する厚生年金保険の被保険者数が常時100人を超える企業をいいます。

    2024(令和6)年10月1日以降は、当該要件について、雇用する厚生年金保険の被保険者数が常時100人を超える企業から、常時50人を超える企業に拡大されます。

    被保険者数

    ここでは、厚生年金保険の被保険者数であって、適用の対象となる短時間労働者自身、および健康保険のみ加入している者(70歳以上の者など)は含みません。

    また、「常時」とは、1年間のうち6ヵ月以上、要件とされる被保険者の総数を超えることが見込まれる場合をいいます。

    事業主が法人(会社)である場合には、同一の法人番号を有する、支店などを含むすべての事業所における厚生年金保険の被保険者の総数によって、常時100人(2024年10月以降は50人)を超えるかどうかを判定します。

    また、個人事業主については、適用事業所ごとにおける厚生年金の被保険者の総数によって、常時100人(2024年10月以降は50人)を超えるかどうかを判定します。

    届出手続

    事業主は、適用事業所から特定適用事業所に該当するに至ったときは、当該事実が発生した日から5日以内に、「健康保険・厚生年金保険特定適用事業所該当届」を日本年金機構または健康保険組合に届け出る必要があります。

    任意特定事業所

    被保険者数の要件を満たさない、厚生年金保険の被保険者数が100人以下(2024年10月以降は50人以下)の会社であっても、労使の合意(厚生年金保険の被保険者等の2分の1以上の同意)に基づき申し出を行うことにより、「任意特定適用事業所」となることができます。