障害者雇用制度に基づく障害者の雇用義務(法定雇用率)と納付金・調整金制度について解説

障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法(正式名称は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」)とは、障害者の雇用義務を定めるなど、障害者が職業生活において自立することを促進するための措置を講じることにより、障害者の職業の安定を図ることを目的とする法律です(障害者雇用促進法第1条)。

障害者の定義

障害者雇用促進法において、「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者をいいます(障害者雇用促進法第2条第2号)。

障害者雇用率制度とは

障害者雇用率制度とは

一般事業主(民間企業)は、その雇用する常用雇用労働者が一定数以上の規模に該当する場合には、その常用雇用労働者に占める障害者(身体障害者・知的障害者・精神障害者)の割合を、法律で定める一定率(これを「法定雇用率」といいます)以上にする義務が定められており、この制度を障害者雇用率制度といいます(障害者雇用促進法第43条第1項)。

常用雇用労働者に対する障害者の割合を設定することによって、障害者について、一般労働者と同じ水準で、常用雇用労働者となり得る機会を確保することを目的としています。

常用雇用労働者

「常用雇用労働者」とは、雇用形態を問わず、1週間の所定労働時間が20時間以上の者であって、1年を超えて雇用される者(見込みのある者を含む)をいいます。

常用雇用労働者のうち、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者については、1人をもって0.5人の労働者とみなして数えます。

なお、1週間の所定労働時間が20時間未満の短時間労働者については、障害者雇用制度上の常用雇用労働者の範囲には含まれません。

法定雇用率

民間企業の法定雇用率は、現在、2.3%とされています。

例えば、常用雇用労働者数が100人の事業主の場合、100人に2.3%を乗じた2人(1人未満の端数は切り捨てる)の障害者を雇用する義務があります。

これにより、計算上、常用雇用労働者を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人雇用する義務があるということになります。

法定雇用率は、2024(令和6)年4月1日からは2.5%(40.0人以上雇用している事業主を対象とする)に引き上げられ、さらに2026(令和8)年7月1日からは2.7%(37.5人以上雇用している事業主を対象とする)と、段階的に引き上げられる予定です。

【表】法定雇用率の改定(引き上げ)

改定日法定雇用率
2021(令和3)年3月2.3%
2024(令和6)年4月2.5%
2026(令和8)年7月2.7%

障害者の雇用人数の数え方

法定雇用率に基づく障害者の雇用人数を数える際には、障害者の所定労働時間および種類に応じて、次のとおり人数を数えます。

【表】障害者の雇用人数の数え方

障害者の種類週30時間以上週20時間以上30時間未満の
短時間労働者
週10時間以上20時間未満の
短時間労働者
(2024年4月改正)
身体障害者1人0.5人
重度身体障害者2人1人0.5人
知的障害者1人0.5人
重度知的障害者2人1人0.5人
精神障害者1人0.5人(※)0.5人

「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が通常の労働者よりも短い者をいいます。

2024(令和6)年4月1日の改正により、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の短時間労働者であっても、重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者に該当する場合には、1人をもって0.5人として数えることが認められます(表中の下線部分)

(※)精神障害者については、一定の要件を満たす場合には、1人としてカウントする特例措置があります。

除外率制度とは

除外率とは

障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種については、法定雇用率の軽減措置として、法定雇用率に基づく障害者数の算定にあたり、常時雇用労働者の数から、業種ごとに定められた一定の割合(除外率)を乗じて得た人数を除外することが認められています。

例えば、建設業を営む事業主(常用雇用労働者数150名、除外率20%)である場合、法定雇用率に基づく障害者数は、次の計算によって算出します。

【計算例】除外率がある場合の雇用人数の計算

(150人-150人×20%)×2.3%=2人(1人未満の端数は切捨て)

除外率の引き下げ

除外率は、2025(令和7)年4月1日に引き下げられることが予定されており、業種に応じて定められた除外率から、それぞれ10%引き下げられます。

その際、引き下げ前の除外率が10%以下の業種については、除外率制度の対象から外れることとなります。

障害者雇用納付金の徴収・障害者雇用調整金の支給

障害者雇用納付金制度とは

障害者を雇用するには、作業施設や設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理などの経済的負担が伴います。

障害者雇用納付金制度は、障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担を調整し、その雇用の促進・継続を図るために、常用雇用労働者の総数が100人を超え、かつ法定雇用率が未達成の事業主から「障害者雇用納付金」を徴収する一方で、当該納付金を財源として、法定雇用率を達成している事業主に対して「障害者雇用調整金」や「報奨金」などの給付を行う制度をいいます(障害者雇用促進法第49条第1号、第10号)。

障害者雇用納付金

対象となる事業主

常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主であって、法定雇用障害者数を下回っている場合には、「障害者雇用納付金」を徴収することとされています(障害者雇用促進法第53条第1項)。

徴収された障害者雇用納付金は、後述する障害者雇用調整金の財源や、制度運営の事務処理に要する費用などに充てられます。

障害者雇用納付金の額

障害者雇用納付金の額は、障害者1人当たり、月額50,000円とされています。

障害者雇用納付金の納付額は、次の計算式によって算出し、毎年4月1日から5月15日までの間に、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に申告して納付します。

障害者雇用納付金の額

障害者雇用納付金の額=(A-B)×50,000円

A:各月ごとの算定基礎日(※)における法定雇用障害数の、1年度の合計人数

B:各月ごとの算定基礎日(※)における常用障害者数の、1年度の合計人数

(※)「算定基礎日」とは、各月ごとの労働者数を把握する日をいい、毎月初日または賃金締切日とすることが原則とされています。

例えば、常用雇用労働者の総数が200人の事業主の場合、障害者の法定雇用人数は4人(200人×2.3%)となりますが、これに対して、算定基礎日における障害者の数が3人であったとします。

この場合、各月において不足する障害者の人数は1人(4人-3人)であり、仮に1年度を通じて同じ状況であった場合には、1年度の合計人数は12人(1人×12ヵ月)となり、納付すべき障害者雇用納付金の額は、60万円(12人×50,000円)となります。

障害者雇用調整金

対象となる事業主

常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主であって、法定雇用障害者数を上回っている場合には、「障害者雇用調整金」を支給することとされています(障害者雇用促進法第50条)。

障害者雇用納付金の額

障害者雇用納付金の額は、障害者1人当たり、月額29,000円とされています。

障害者雇用納付金の受給額は、次の計算式によって算出し、毎年4月1日から5月15日までの間に、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に申請します。

障害者雇用調整金の額

障害者雇用調整金の額=(B-A)×29,000円

A:各月ごとの算定基礎日における法定雇用障害数の、1年度の合計人数

B:各月ごとの算定基礎日における常用障害者数の、1年度の合計人数

障害者雇用状況報告

障害者を1人以上雇用する義務がある事業主(常用雇用労働者を43.5人以上(2024年4月以降は40.0人以上)雇用している事業主)は、毎年6月1日時点の障害者の雇用状況について、7月15日までに、管轄の公共職業安定所(ハローワーク)に報告する義務が定められています(障害者雇用促進法第43条第7項)。

当該報告は、雇用する障害者の数に関わらず(雇用できていないとしても)行う義務があり、この報告を怠り、または虚偽の報告をしたときは、30万円以下の罰金に処することとされています(障害者雇用促進法第86条第1号)。

障害者職業生活相談員

常時雇用する障害者が5人以上いる事業主は、障害者の実人員が5人以上となってから3ヵ月以内に、職場内で障害者の職業生活全般の相談に対応し、障害特性に十分配慮した適切な雇用管理を行うことを目的として、「障害者職業生活相談員」を選任する必要があります(障害者雇用促進法第79条)。

なお、選任する相談員については、指定講習を受講し、または一定年数以上の実務経験があるなど、選任要件が定められています。

また、選任後は、遅滞なく管轄の公共職業安定所(ハローワーク)に、「障害者職業生活相談員選任報告書」を届け出る必要があります。

障害者雇用推進者

「障害者雇用推進者」とは、障害者の雇用の促進と継続を図るために、企業内の障害者雇用の取組体制の整備や、施設または設備その他の諸条件の整備を図る責任者をいいます。

障害者を雇用する義務がある事業主(常用雇用労働者を43.5人以上(2024年4月以降は40.0人以上)雇用している事業主)は、障害者雇用推進者を専任するよう努めなければならないこととされています(努力義務)。

行政の制度案内によると、障害者雇用推進者は、人事労務担当の部長クラスを想定しています。

また、前述の障害者雇用状況報告の様式内に、障害者雇用推進者の役職・氏名を記入する欄が設けられています。

罰則

事業主が雇用義務を履行しない場合には、公共職業安定所(ハローワーク)による行政指導の対象となります。

また、障害者の雇用状況の改善が特に遅れていると判断される事業主に対しては、企業名の公表がなされることがあります。