「育児休業給付金」とは?支給要件、支給額の計算方法、支給日数などを解説(雇用保険法)

はじめに

本稿では、育児休業給付金について、支給要件、支給額の計算方法、支給日数などについて解説します。

「育児休業給付金」の定義(概要)

「育児休業」とは

育児休業」とは、育児・介護休業法に基づき、労働者が、原則として、1歳に満たない子を養育するために、休業することができる制度をいいます(育児・介護休業法第5条)。

育児休業は、原則として、子が1歳に達するまでの期間が対象になりますが、例外として、保育所などへの入所を希望しているものの、入所できない場合など、特別な事情がある場合には、育児休業の期間を子が1歳6ヵ月に達するまで、または2歳に達するまで延長することができます。

育児休業は、1子につき2回まで、分割して取得することができます(育児・介護休業法第5条第2項)。

また、子が1歳に達した日以降の休業(1歳6ヵ月に達するまで、または2歳に達するまでの休業)については、子が1歳に達するまでの育児休業とは別に、さらに1回ずつ(各期間において2回まで)取得することができます。

「育児休業給付金」とは

育児休業給付金」とは、雇用保険の被保険者が、1歳に達する日の前日までにある子を養育するために育児休業を取得した場合において、休業前の賃金の67%または50%相当額を支給する給付金をいいます(雇用保険法第61条の7)。

なお、「1歳に達する日の前日」とは、1歳の誕生日の前々日をいいます(例えば、12月9日が1歳の誕生日の子については、法律上、その前日の12月8日に1歳に達するため、さらに前日の12月7日が「1歳に達する日の前日」となります)。

ただし、いわゆる「パパ・ママ育休プラス」制度を利用して育児休業を取得する場合は、子が1歳2ヵ月に達する日の前日まで育児休業給付金が支給され、保育所における保育の実施が行われないなど、特別な事情がある場合には、子が1歳6ヵ月または2歳に達する日の前日まで、育児休業給付金が支給されます

なお、産後休業期間中(出生日の翌日から8週間が経過するまでの期間)は、育児休業給付金の支給の対象外とされており、当該期間中は健康保険(国民健康保険を除く)から、出産手当金が支給されます。

労働者が育児休業を取得した場合において、事業主には、休業期間中の賃金を支払う義務がありません。

そこで、雇用保険法では、労働者(雇用保険の被保険者)の休業期間中の生活を保障するために、休業をした労働者に対する給付金を設けることによって、労働者の生活と雇用の安定を図っています。

育児休業給付金の支給要件

支給要件

育児休業給付金が支給されるための要件は、原則として、次のとおりです(雇用保険法第61条の7第1項)。

育児休業給付金の支給要件

  1. 雇用保険の被保険者が、「育児休業」を取得したこと
  2. 原則として、育児休業を開始した日前の2年間において、雇用保険のみなし被保険者期間が通算12ヵ月以上あること
  3. (期間を定めて雇用される場合)養育する子が1歳6ヵ月に達するまでの間に、労働契約の期間が満了することが明らかでないこと

支給要件1

育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が、育児・介護休業法に基づき「育児休業」を取得した場合において、その休業期間に対して支給されます。

ただし、雇用保険の被保険者のうち、短期雇用特例被保険者(季節的に雇用される者)および日雇労働被保険者(日々雇用される者)は、育児休業給付金の対象とはなりません。

支給要件2

育児休業給付金が支給されるためには、原則として、育児休業を開始した日前の2年間において、雇用保険の被保険者であった期間(これを「みなし被保険者期間」といいます)が通算12ヵ月以上あることが要件とされています(雇用保険法第61条の7第1項)。

ただし、2年間の間において、被保険者が疾病、負傷、出産、事業所の休業などの理由により、引き続き30日以上賃金を受けることができなかった場合は、賃金を受けることができなかった日数を2年間に加算した期間(ただし、最大で4年間まで)となります(雇用保険法施行規則第101条の29)。

「育児休業を開始した日」とは、育児休業を2回以上に分割して取得する場合には、初回の休業開始日をいいます。

「みなし被保険者期間」とは、雇用保険の被保険者であった期間をいい、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月(11日以上ない場合は、就業した時間が80時間以上の月)を、1ヵ月として数えます(雇用保険法第14条、第61条の7第3項)。

支給要件3

被保険者が期間を定めて雇用される場合には、養育する子が1歳6ヵ月に達するまでの間に、労働契約の期間が満了することが明らかでないことが必要です(雇用保険法施行規則第101条の22第4号)。

なお、育児休業を2歳まで延長する場合には、2歳に達するまでの間に、労働契約の期間が満了することが明らかでないことが必要です。

支給回数

育児休業は、法律上、2回に分割して取得することができるため、育児休業給付金も、2回まで受給することができます。

したがって、育児休業を3回以上に分割して取得した場合には、3回目以降の育児休業に対しては、原則として、育児休業給付金は支給されません(雇用保険法第61条の7第2項)。

育児休業給付金の支給額

育児休業給付金の支給額

育児休業給付金の支給額は、次の計算式に基づき算定されます(雇用保険法第61条の7第6項)。

育児休業給付金の支給額

休業開始時賃金日額(A)×支給日数(B)×支給率67%または50%(C)

休業開始時賃金日額(A)

「休業開始時賃金日額」は、被保険者が育児休業を開始した日(育児休業を2回以上に分割して取得する場合には、初回の休業開始日をいいます)を基準として算定した、賃金の日額をいいます。

賃金日額は、「育児休業を開始する前6ヵ月間の賃金÷180」によって計算します。

なお、賃金日額を計算する際の賃金は、賃金の総支給額であり(手取りではない)、賞与は含まれません。

支給日数(B)

育児休業給付金は、「支給単位期間」ごとに算定され、支給されます。

支給単位期間」とは、育児休業を開始した日から起算した、1ヵ月ごとの期間(その月に育児休業を終了した日が属する場合は、その育児休業終了日までの期間)をいいます(雇用保険法第61条の7第5項)。

例えば、育児休業を2月4日から開始し(子の出生日は前年12月9日、2月3日までは産後休業)、12月7日に終了した場合、支給対象期間を2月4日から3月3日まで、3月4日から4月3日までと区切っていき、最後は12月4日から12月7日までが支給単位期間となります。

育児休業給付金の支給日数は、支給単位期間ごとに、原則として、「30日間」とされています

ただし、育児休業を終了した日が属する支給単位期間においては、育児休業を終了した日までの日数となります。

また、支給単位期間の途中で離職した場合、被保険者の資格喪失日が属する支給単位期間の前の支給単位期間までが支給対象となります。

支給率(67%または50%)(C)

育児休業給付金の支給率は、休業日数に応じて、次のとおりです。

育児休業給付金の支給率

  1. 育児休業給付金の支給日数が、通算180日に達するまで…支給率67%
  2. 育児休業給付金の支給日数が、通算181日目以降…支給率50%

出生時育児休業給付金との関係

雇用保険の被保険者が、子の出生後8週間以内に、出生時育児休業を取得した場合には、最大で28日間、「出生時育児休業給付金」が支給されます(支給率は休業前の賃金の67%相当額)。

男性は、子の出生後8週間は、育児休業と出生時育児休業のいずれかを選択して取得することができます。

このとき、育児休業給付金について、賃金日額の67%相当額が支給される期間である180日については、すでに出生時育児休業給付金を受給した日数も通算されます(雇用保険法第61条の7第6項、同法第61条の8第8項)。

例えば、出生時育児休業を28日間取得した後、引き続いて育児休業を取得した場合、賃金日額の67%相当額の育児休業給付金が支給されるのは、180日から28日を差し引いた、残りの152日間となります。

出生時育児休業給付金については、次の記事をご覧ください。

「出生時育児休業給付金」とは?支給要件、支給額の計算方法、支給日数などを解説(雇用保険法)

所得税などの課税

育児休業給付金に対しては、所得税などが課税されず(雇用保険法第12条)、また、休業期間中は社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除されます。

休業中に事業主から賃金が支払われた場合の支給額の調整

支給単位期間において、事業主から賃金が支払われた場合は、事業主から支給された賃金の額に応じて、次のとおり、支給額の調整が行われます(雇用保険法第61条の7第7項)。

事業主から賃金が支払われた場合の支給額の調整

  1. 事業主から支払われた賃金が、「休業開始時賃金日額×休業日数」(以下、「A」という)に対して13%(※1)以下の場合…「A×67%(※2)」を支給(全額支給)
  2. 事業主から支払われた賃金が、Aに対して、13%(※1)超80%未満の場合…「A×80%-事業主から支給された賃金額」を支給(一部支給)
  3. 事業主から支払われた賃金が、Aに対して、80%以上の場合…給付金は支給されない(全額不支給)

(※1)育児休業の開始から181日目以降は「30%」

(※2)育児休業の開始から181日目以降は「50%」

育児休業期間中に就労をした場合の取り扱い

育児休業給付金の支給については、休業期間中における就労日数の上限が設けられており、上限を超える場合には給付金は支給されません(雇用保険法施行規則第101条の22)。

原則として、一支給単位期間中における就労日数の上限は「10日」とされており、10日を超える場合は、就労時間でみて、80時間が上限となります

育児休業給付金の申請手続

申請先

育児休業給付金の支給申請手続は、原則として、事業主から、事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に申請書を提出することによって行います。

申請期限

初回の申請期限

育児休業給付金の初回の申請期限は、育児休業を開始した日から起算して、4ヵ月を経過する日の属する月の末日までの期間に申請する必要があります(雇用保険法施行規則第101条の30第1項)。

例えば、7月10日から育児休業を開始した場合には、4ヵ月が経過する日は11月9日であるため、11月末日までに初回の申請を行う必要があります。

2回目以降の申請期限

育児休業給付金の2回目以降の支給申請は、原則として2ヵ月に一度行うこととされており、初回の申請後にハローワークが交付する「育児休業給付次回支給申請日指定通知書」によって指定された支給申請期間内に申請を行います(雇用保険法施行規則第101条の30第2項)。

ただし、被保険者本人が希望する場合には、1ヵ月に一度、支給申請を行うことも認められています。