【2025年4月改正】「育児時短就業給付金」とは?支給要件、支給額などを解説(雇用保険法)

はじめに

雇用保険法の改正により、育児に伴う給付として、新たに「出生後休業支援給付金」および「育児時短就業給付金」が創設され、2025(令和7)年4月1日に施行されます(雇用保険法第61条の10、第61条の12)。

これにより、育児休業にかかる給付として、既存の「育児休業給付金」および「出生時育児休業給付金」と合わせて、4種類の給付金が設けられたことになります。

本稿では、育児時短就業給付金について、支給要件や支給額などを解説します。

なお、出生後休業支援給付金については、次の記事をご覧ください。

【2025年4月改正】「出生後休業支援給付金」とは?支給要件、支給額、支給日数などを解説(雇用保険法)

育児時短就業給付金の定義(概要)

育児時短就業給付金」とは、従業員が、2歳未満の子を養育するために、所定労働時間を短縮して就業をした場合(時短勤務をした場合)において、時短勤務中に支払われた賃金額の10%相当額を支給する給付金をいいます(雇用保険法第61条の12)。

従来は、育児のために時短勤務をしたことによって賃金が低下した場合に、給付金を支給する制度はありませんでした。

「共働き・共育て」の推進や、育児休業後における育児とキャリア形成の両立を支援する観点から、時短勤務による柔軟な働き方を選択しやすくするために、法改正により、育児時短就業給付金が創設されました。

「育児時短就業」とは

「育児時短就業」とは

育児時短就業給付金の対象となる「育児時短就業」とは、雇用保険の被保険者が、その2歳に満たない子を養育するために行う、所定労働時間を短縮することによる就業をいいます(雇用保険法第61条の12第1項)。

具体的には、事業主が被保険者の申出に基づき、初日および終了日を定めて、1週間の所定労働時間を短縮する措置を講じた場合における、当該措置に基づく就業が育児時短就業給付金の支給対象となります(雇用保険法施行規則第101条の43)。

なお、「1週間の所定労働時間を短縮する措置」には、1日の所定労働時間を短縮する場合だけでなく、1週間の所定労働日数を変更した結果、1週間の所定労働時間が短縮される場合も含みます。

育児・介護休業法が定める所定労働時間の短縮措置

事業主は、3歳に満たない子を養育する従業員について、従業員が希望すれば利用できる、所定労働時間を短縮することにより、当該従業員が就業しつつ子を養育することを容易にするための措置(短時間勤務制度)を講じなければならないとされています(育児・介護休業法第23条)。

また、短時間勤務制度は、1日の所定労働時間を、原則として6時間とする措置を含むものとする必要があります(育児・介護休業法施行規則第74条第1項)。

育児時短就業給付金の支給要件

支給要件

2歳未満の子」を養育する雇用保険の被保険者が、育児時短就業をした場合であって、次のいずれかの要件に該当するときは、育児時短就業給付金が支給されます(雇用保険法第61条の12第1項)。

なお、育児時短就業を行う際の労働時間や、育児時短就業を行う日数については、育児時短就業給付金の支給において制限はありません。

育児時短就業給付金の支給要件

  1. 原則として、育児時短就業を開始した日前の2年間において、雇用保険のみなし被保険者期間が通算12ヵ月以上あること
  2. 育児時短就業にかかる子について、育児休業給付金の支給を受けていた場合であって、当該給付金にかかる育児休業の終了後に引き続き、育児時短就業をしたこと
  3. 育児時短就業にかかる子について、出生時育児休業給付金の支給を受けていた場合であって、当該給付金にかかる出生時育児休業の終了後に引き続き、育児時短就業をしたこと

支給要件1

育児時短就業給付金が支給されるためには、原則として、育児時短就業を開始した日前の2年間において、雇用保険の被保険者であった期間(これを「みなし被保険者期間」といいます)が通算12ヵ月以上あることが必要とされています(雇用保険法第61条の12第3項)。

ただし、2年間の間において、被保険者が疾病、負傷、出産、事業所の休業などの理由により、引き続き30日以上賃金を受けることができなかった場合は、賃金を受けることができなかった日数を2年間に加算した期間(ただし、最大で4年間まで)となります(雇用保険法施行規則第101条の44)。

「育児時短就業を開始した日」とは、育児時短就業を2回以上行う場合には、初回の育児時短就業をいいます。

「みなし被保険者期間」とは、雇用保険の被保険者であった期間をいい、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を、1ヵ月として数えます(雇用保険法第14条)。

支給要件2

雇用保険の被保険者が、育児時短就業にかかる子について、育児休業給付金の支給を受けていた場合には、当該育児休業給付金を支給するに当たって、すでにみなし被保険者期間を確認していることから、育児時短就業給付金の支給に当たって改めて同じ内容を確認する必要がありません。

そこで、当該育児休業給付金にかかる育児休業の終了後に引き続いて、育児時短就業(育児時短就業を2回以上行う場合には、初回の育児時短就業をいう)をしたことをもって、育児時短就業給付金が支給されます。

支給要件3

雇用保険の被保険者が、育児時短就業にかかる子について、出生時育児休業給付金の支給を受けていた場合には、当該出生時育児休業給付金を支給するに当たって、すでにみなし被保険者期間を確認していることから、育児時短就業給付金の支給に当たって改めて同じ内容を確認する必要がありません。

そこで、当該出生時育児休業給付金にかかる育児休業の終了後に引き続いて、育児時短就業(育児時短就業を2回以上行う場合には、初回の育児時短就業をいう)をしたことをもって、育児時短就業給付金が支給されます。

育児時短就業給付金の支給対象月

育児時短就業給付金は、「支給対象月」ごとに算定され、支給されます

支給対象月」とは、育児時短就業を開始した日の属する月から、終了した日の属する月までの期間内にある月をいいます(雇用保険法第61条の12第5項)。

例えば、育児時短就業を4月10日から開始し、7月10日に終了した場合、支給対象月は4月から7月までの4ヵ月となります。

ただし、次の2点に留意する必要があります。

  • 支給対象月は、その月の初日から末日まで、引き続いて雇用保険の被保険者であった月に限ること
  • 支給対象月は、育児休業給付金、出生時育児休業給付金、出生後休業支援給付金、介護休業給付金の支給を受けることができる休業をしなかった月に限ること

育児時短就業給付金の支給額

育児時短就業給付金の支給額

育児時短就業給付金の支給額は、次の計算式に基づき算定されます(雇用保険法第61条の12第6項)。

育児時短就業給付金の支給額

  • 時短就業中に支払われた賃金額が、「育児時短就業開始時賃金日額(※1)×30」の100分の90未満の場合

支給対象月に支払われた賃金額(※2)×100分の10

  • 時短就業中に支払われた賃金額が、「育児時短就業開始時賃金日額×30」の100分の90以上(100分の100以下)の場合

支給対象月に支払われた賃金額×100分の10から一定の割合で逓減するように厚生労働省令で定められた率

育児時短就業開始時賃金日額(※1)

「育児時短就業開始時賃金日額」とは、被保険者が育児時短就業を開始した日を基準として算定した、賃金の日額をいいます。

育児時短就業開始時賃金日額は、「育児時短就業を開始する前6ヵ月間の賃金(賃金の総支給額であり、賞与は含まない)÷180」によって算定します(雇用保険法第17条)。

ただし、育児休業給付金にかかる育児休業、または出生時育児休業給付金にかかる出生時育児休業の終了後に、引き続き育児時間勤務をする場合は、それぞれの給付金の休業開始時賃金日額が用いられます。

また、時短就業中に支払われた賃金額が、「育児時短就業開始時賃金日額×30」の100分の90以上となる場合には、時短就業後の賃金と、育児時短就業給付金の給付額の合計が時短前の賃金を超えないように、給付率が調整されます。

支給対象月に支払われた賃金額(※2)

支給対象月に支払われた賃金の額が、厚生労働省令で定める支給限度額以上である場合には、当該支給対象月において、育児時短就業給付金は支給されません(雇用保険法第61条の12第2項)。

所得税などの課税

育児時短就業給付金には、所得税などは課税されません(雇用保険法第12条)。

育児時短就業給付金の支給の終了事由

被保険者が育児時短就業の終了日予定日までに、次の事由に該当するに至った場合には、該当日の前日をもって育児時短就業給付金の支給が終了します(雇用保険法施行規則第101条の43第1項但書)。

育児時短就業給付金の支給の終了事由

  • 子の死亡、その他子を養育しない事由が生じたこと
  • 子が2歳に達したこと
  • 育児時短就業をしている被保険者について、産前産後休業、育児休業または介護休業が始まったこと
  • 新たな2歳未満の子を養育するための育児時短就業が始まったこと

育児時短就業給付金の申請手続

育児時短就業給付金の申請手続は、原則として、事業主経由とし、初回の支給申請の期限は、支給対象月の初日から起算して4ヵ月以内に行うこととされています(雇用保険法施行規則第101条の48)。