【無期転換ルール】「無期転換前の雇止め」に関する裁判例(6選)

- 1. 「無期転換ルール」とは
- 2. 無期転換申込権が発生する直前の雇止め
- 2.1. 裁判例(公益財団法人グリーントラストうつのみや事件/宇都宮地方裁判所令和2年6月10日判決)
- 2.1.1. 事案の概要
- 2.1.2. 裁判所の判断
- 3. 無期転換申込権の発生前に新たに(一方的に)更新上限を設定し、上限を理由に雇止め
- 3.1. 個別契約の場合
- 3.2. 裁判例(博報堂事件/福岡地方裁判所令和2年3月17日判決)
- 3.2.1. 事案の概要
- 3.2.2. 裁判所の判断
- 3.3. 就業規則による場合
- 3.4. 裁判例(地方独立行政法人山口県立病院機構事件/山口地方裁判所令和2年2月19日判決)
- 3.4.1. 事案の概要
- 3.4.2. 裁判所の判断
- 4. 当初の契約締結時から更新上限を設定して無期転換申込権発生前に雇止め
- 4.1. 裁判例(日本通運(川崎)事件/東京高等裁判所令和4年9月14日判決)
- 4.1.1. 事案の概要
- 4.1.2. 裁判所の判断
- 4.2. 裁判例(ドコモ・サポート事件/東京地方裁判所令和3年6月16日判決)
- 4.2.1. 事案の概要
- 4.2.2. 裁判所の判断
- 4.3. 裁判例(福原学園(九州女子短期大学)事件/最高裁判所平成28年12月1日判決)
- 4.3.1. 事案の概要
- 4.3.2. 裁判所の判断
「無期転換ルール」とは
「無期転換ルール」とは、同一の使用者と労働者との間で、有期労働契約(期間の定めがある労働契約)が通算5年を超えて更新された場合、労働者からの申し込みによって、当該労働契約が無期労働契約(期間の定めがない労働契約)に転換されるルールをいいます(労働契約法第18条第1項)。
「無期転換ルール」について、詳しくは次の記事をご覧ください。
無期転換ルール(5年)とは?有期労働契約の「無期転換申込権」をわかりやすく解説
無期転換申込権が発生する直前の雇止め
使用者が、無期転換申込権の発生を回避するために雇止めを行った場合には、①契約更新について合理的な期待が生じている状況で、②特段の事情がないときは、当該雇止めに客観的合理性・社会的相当性が認められないと判断されることがあります。
裁判例(公益財団法人グリーントラストうつのみや事件/宇都宮地方裁判所令和2年6月10日判決)
事案の概要
有期契約労働者が、使用者に6回目の労働契約の更新の申込みを拒絶され、雇止めを受けたことについて、当該雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、かつ、労働契約法第18条第1項により無期労働契約に転換されたものとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、賃金・遅延損害金の支払いを求めた事案です。
裁判所の判断
裁判所は、本件の雇止めについて、「客観的合理性・社会的相当性は認められない」と判断しました。
裁判所は、①その業務内容が単なる補助的・臨時的な業務にとどまらない常用的な業務であったこと、②雇用期間の定めが名目的なものとなりつつあった(更新回数は5回、通算雇用期間は5年5ヵ月)こと、③更新手続きが形式的なものであったことを理由に、労働者には、契約更新を期待することについて合理的理由があり、労働契約法第19条第2号に該当すると判断しました。
また、本件の雇止めは人員整理的な雇止めであり、整理解雇の法理が妥当するとした上で、①雇止めの回避努力、②被雇止め者の選定、③手続の妥当性について何らの検討を加えた形跡がないことから、特段の事情は存しないと判断しました。
無期転換申込権の発生前に新たに(一方的に)更新上限を設定し、上限を理由に雇止め
契約更新について合理的な期待が生じている状況で、使用者が一方的に更新上限を設定したとしても合理的期待が失われることにはならず、当該上限への到達のみを理由に雇止めが行われても、当該雇止めは客観的合理性・社会的相当性が認められないと判断されることがあります。
個別契約の場合
使用者が新たに設定した更新上限のある雇用契約書に労働者が署名・押印したことをもって、直ちに労働契約を終了させる旨の明確な意思を表明したものとみることは相当でなく、労働者に労働契約を終了させる旨の明確な意思があると認められない場合は、労働契約が合意により終了したとはいえず、更新上限の記載は雇止めの予告と判断されることがあります。
裁判例(博報堂事件/福岡地方裁判所令和2年3月17日判決)
裁判所は、本件の雇止めについて、「客観的合理性・社会的相当性は認められない」と判断しました。
事案の概要
1年の有期労働契約を29回にわたって更新してきた労働者が雇止めをされたことについて、労働契約法第19条を理由に、労働契約上の権利を有する地位の確認と、賃金・賞与・遅延損害金の支払いを求めた事案です。
なお、使用者は契約社員に適用される就業規則を改訂し、新たに「更新により労働契約期間が最初の労働契約開始から通算して5年を超える場合、原則として労働契約を更新しない」という条項(以下「最長5年ルール」といいます)を設けていました。
改訂時点ですでに5年超雇用されていた当該労働者については、就業規則とは別途、雇用契約書に更新上限が記載されており、当該雇用契約書に署名・押印していました。
裁判所の判断
裁判所は、不更新条項が記載された雇用契約書への署名・押印を拒否することは、当該労働者にとって、労働契約が更新できないことを意味するため、不更新条項のある雇用契約書に署名・押印があることをもって、直ちに当該労働者が労働契約を終了させる旨の明確な意思を表明したものとみることは相当ではないとしました。
また、当該労働者は、①使用者に雇止めは困ると述べ、労働局へ相談し、使用者に契約が更新されないことの理由書を求めたこと、②社長に対して雇用継続を求める手紙を送付するなどの行動をとっており、これらは当該労働者が労働契約の終了に同意したことと相反する事情であることから、本件労働契約が合意により終了したとはいえず、不更新条項は雇止めの予告とみるべきであると判断しました。
さらに、①形骸化した契約更新を繰り返しされていることから、契約更新への期待は相当高く、その期待は合理的な理由に裏付けられていること、②最長5年ルールには、一定の例外が設けられており、契約更新に対する高い期待が大きく減殺される状況にあったとはいえないとして、契約更新への合理的期待が認められると判断しました。
就業規則による場合
契約更新について合理的な期待が生じている状況で、使用者が(事後的に)一方的に就業規則の変更により更新上限を設定した場合には、就業規則の変更の前の段階で契約更新の合理的期待が生じており、変更をもって合理的期待が消滅したとは認められないと判断されることがあります。
裁判例(地方独立行政法人山口県立病院機構事件/山口地方裁判所令和2年2月19日判決)
裁判所は、本件の雇止めについて、「客観的合理性・社会的相当性は認められない」と判断しました。
事案の概要
有期契約労働者が、使用者に平成30年4月を始期とする8回目の労働契約を更新されず、雇止めされたことについて、労働契約法第19条を理由に、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めた事案です。
なお、就業規則には、平成29年3月まで労働契約の更新に関する規定はありませんでしたが、同年4月1日付の改訂により、「原則として5年を超えない範囲内とする」旨の通算雇用期間の上限を制限する規定が設けられました。
裁判所の判断
裁判所は、当該有期契約労働者は、①平成23年4月以降、反復継続して本件労働契約を更新されてきたこと、②その手続は形式的で、勤務態度等を考慮した実質的なものではなかったこと、③従事していた業務は恒常的業務であったこと、④本件事業所における有期職員と契約期間の定めのない職員との間で勤務実態や労働条件に有意な差があるものとは認められないことから、契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると判断しました。
また、契約更新の有無の判断過程に合理性が認められるかについては、人事権に当然に内在する制約として、契約更新の有無の判断は公正に行われなければならないところ、本件については、雇止めの根拠となった面接試験に合理的な評価基準の定めや評価の公正さを担保できる仕組みが存在せず、契約更新の有無の判断過程は合理性に欠けるものと判断しました。
当初の契約締結時から更新上限を設定して無期転換申込権発生前に雇止め
当初の契約締結時から更新年限や更新回数の上限を設けることは、それ自体としては直ちに違法になるものではありませんが、雇用継続を期待させるような使用者側の言動があるなど、雇用継続への期待が生じている場合には、当該雇止めは客観的合理性・社会的相当性により判断されることとなります。
裁判例(日本通運(川崎)事件/東京高等裁判所令和4年9月14日判決)
裁判所は、本件の雇止めについて、客観的合理性・社会的相当性は問うまでもなく有効と判断しました。
事案の概要
労使間で最初の労働契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない旨の労働契約を締結しており、当初の労働契約から5年の期間満了に当たる平成30年6月30日付で雇止めされたことについて、有期契約労働者が本件雇止めは無効であるなどとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、賃金・遅延損害金の支払いを求めた事案です。
裁判所の判断
裁判所は、通常は労働者において未だ更新に対する合理的期待が形成される以前である労働契約の締結当初から、①雇用契約書等により雇用期間が5年を超えない条件であることは一義的に明確であり、②担当者が当該労働者と面談し、そのことを明示・説明し、③当該労働者もそれを認識の上で労働契約を締結している等の状況下では、雇用満了時までの間に、契約更新の合理的な期待を生じさせる事情は認め難いと判断しました。
また、労働契約法第18条は、有期契約の利用自体は許容しつつ、5年を超えたときに有期労働契約を無期労働契約へ移行させることで有期契約の濫用的利用を抑制し、もって労働者の雇用の安定を図る趣旨の規定であることから、使用者が5年を超えて労働者を雇用する意図がない場合に、当初から雇用上限を定めることが直ちに違法に当たるものではないと判断しました。
裁判例(ドコモ・サポート事件/東京地方裁判所令和3年6月16日判決)
裁判所は、本件の雇止めについて、客観的合理性・社会的相当性は問うまでもなく有効と判断しました。
事案の概要
使用者との間で有期労働契約を締結し、その後、4回目の更新期間満了時に使用者から雇止めされた有期契約労働者が、有期契約労働者には労働契約法第19条第2号の有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的理由があり、かつ、当該雇止めは客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないため、従前の有期労働契約の内容で契約が更新され、退職後に同契約が終了したと主張して、使用者に対し、同契約に基づき、未払賃金等の支払を求めた事案です。
裁判所の判断
裁判所は、有期契約労働者は、本件契約を締結する前に行われた入社説明会において、使用者から、契約社員の制度について記載された資料を交付された上で、同資料の記載に基づき、本件契約の契約更新回数の上限は最大で4回であること、契約期間は最長で5年間であることを説明されている上、本件契約の雇用契約書を示されながら具体的な労働条件について説明されていることから、有期契約労働者は、使用者に採用された当初から、本件契約の更新限度回数は最大で4回であることを認識した上で本件契約を締結しており、その認識のとおり、本件契約が更新されていったものといえるから、有期契約労働者において、本件契約が、更新限度回数4回を越えて、更に更新されるものと期待することについて合理的な理由があるとは認められないと判断しました。
また、使用者では、遅くとも平成20年12月1日時点で、有期契約労働者については、雇用契約の更新限度回数は最大で4回であり、契約期間は最長で5年間であるものとして運用されており、使用者の就業規則にもその旨明記されていたのであって、使用者が、労働契約法第18条(平成25年4月1日施行)の適用を免れる目的で有期契約労働者の雇用契約の更新限度回数に関する規定を設けたものとはいえず、有期契約労働者の公序良俗に反する違法な規定であるとの主張を退けました。
裁判例(福原学園(九州女子短期大学)事件/最高裁判所平成28年12月1日判決)
事案の概要
有期契約労働者は、平成23年4月1日、使用者との間で、契約職員規程(以下、「本件規程」といいます)に基づき、契約期間を平成24年3月31日までとする有期労働契約を締結し(以下、「本件労働契約」といいます)、本件規程所定の契約職員となり、使用者の運営する短期大学の講師として勤務していました。
本件規程の定め
ア.契約職員とは、1事業年度内で雇用期間を定め、使用者の就業規則第28条に定める労働時間で雇用される者のうち、別に定めるところによる契約書により労働契約の期間を定めて雇用される者をいう。
イ.契約職員の雇用期間は、当該事業年度の範囲内とする。雇用期間は、契約職員が希望し、かつ、当該雇用期間を更新することが必要と認められる場合は、3年を限度に更新することがある。この場合において、契約職員は在職中の勤務成績が良好であることを要するものとする。
ウ.契約職員(助手および幼稚園教諭を除く)のうち、勤務成績を考慮し、使用者がその者の任用を必要と認め、かつ、当該者が希望した場合は、契約期間が満了するときに、期間の定めのない職種に異動することができるものとする。
使用者が、平成24年3月19日、有期契約労働者に対し、同月31日をもって本件労働契約を終了する旨を通知したところ、有期契約労働者は、同年11月6日、本地位確認訴訟を提起しました。
使用者は、平成25年2月7日、有期契約労働者に対し、仮に本件労働契約が初回雇止めによって終了していないとしても同年3月31日をもって本件労働契約を終了する旨を通知しました。
さらに、使用者は、平成26年1月22日、有期契約労働者に対し、本件規程において契約期間の更新の限度は3年とされているので、仮に本件労働契約が終了していないとしても同年3月31日をもって本件労働契約を終了する旨を通知しました。
裁判所の判断
裁判所は、本件労働契約の内容となる本件規程には、契約期間の更新限度が3年であり、その満了時に労働契約を期間の定めのないものとすることができるのは、これを希望する契約職員の勤務成績を考慮して使用者が必要であると認めた場合である旨が明確に定められていたのであり、有期契約労働者もこのことを十分に認識した上で本件労働契約を締結したといえるとしました。
さらに、有期契約労働者が大学教員として使用者に雇用された者であり、大学教員の雇用については一般に流動性のあることが想定されていることや、使用者の運営する3大学において、3年の更新限度期間の満了後に労働契約が無期契約とならなかった契約職員も複数いたことに照らせば、本件労働契約が無期労働契約となるか否かは、有期契約労働者の勤務成績を考慮して行う使用者の判断に委ねられているものというべきであり、本件労働契約が3年の更新限度期間の満了時に当然に無期労働契約となることを内容とするものであったと解することはできないため、本件労働契約は平成26年4月1日から無期労働契約となったとはいえず、同年3月31日をもって終了したというべきであると判断しました。

