「パートタイム・有期雇用労働法」とは?法律が定める主な内容を解説

- 1. 「パートタイム・有期雇用労働法」とは
- 2. 定義
- 3. 労働条件の明示
- 4. 就業規則の作成手続
- 5. 不合理な待遇の禁止
- 6. 通常の労働者と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止
- 7. パートタイム・有期雇用労働者の賃金
- 8. 教育訓練
- 8.1. 法第9条の対象となるパートタイム・有期雇用労働者以外の通常の労働者と職務の内容が同じであるパートタイム・有期雇用労働者
- 8.2. 法第9条の対象となるパートタイム・有期雇用労働者以外のすべてのパートタイム・有期雇用労働者
- 9. 福利厚生施設
- 9.1. 法第9条の対象となるパートタイム・有期雇用労働者以外のすべてのパートタイム・有期雇用労働者
- 10. 通常の労働者への転換
- 11. 事業主が講ずる措置の内容等の説明
- 11.1. 雇い入れ時
- 11.2. パートタイム・有期雇用労働者から求めがあったとき
- 12. 相談体制
- 13. 短時間・有期雇用管理者の選任
「パートタイム・有期雇用労働法」とは
「パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」は、短時間労働者および有期雇用労働者について、その雇用管理の改善に関する措置などを講じることにより、同一企業内における通常の労働者と短時間労働者および有期雇用労働者との均等・均衡待遇の確保を推進することを目的とする法律です(パートタイム・有期雇用労働法第1条)。
定義
「通常の労働者」とは、いわゆる正規型の労働者(正社員など)、および事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者(以下、「無期雇用フルタイム労働者」といいます)をいいます。
「短時間労働者(以下、「パートタイム労働者」といいます)」とは、1週間の所定労働時間が、同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者をいいます(パートタイム・有期雇用労働法第2条第1項)。
「有期雇用労働者」とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいいます(パートタイム・有期雇用労働法第2条第2項)。
以下、本稿では、パートタイム労働者および有期雇用労働者をまとめて「パートタイム・有期雇用労働者」といいます。
なお、「パートタイマー」、「アルバイト」、「嘱託」、「契約社員」などといった名称に関わらず、上記に当てはまる労働者であれば、パートタイム・有期雇用労働法の対象となります。
労働条件の明示
事業主は、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際(契約の更新時を含む)に、次の事項を明示することが義務付けられています(パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項・同法施行規則第2条第1項)。
明示方法は、労働条件通知書など文書の交付によって行うこととされていますが、労働者が希望した場合は、ファックスや電子メールなどによって行うこともできます(パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項・同法施行規則第2条第3項)。
パートタイム・有期雇用労働者に対する明示事項
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善などに関する事項にかかる相談窓口
- 法第14条第2項の規定による説明(待遇の相違の内容・理由等に関する説明)を求めることができる旨【2026(令和8)年10月1日改正】
事業主が労働条件の明示義務に違反した場合、行政指導によっても改善されなければ、10万円以下の過料の対象となります(パートタイム・有期雇用労働法第31条)。
詳細は、次の記事をご覧ください。
【2026年10月改正】パートタイム労働者・有期雇用労働者に対する労働条件の明示事項の追加(待遇の相違の内容・理由等に関する説明)【パートタイム・有期雇用労働法】
就業規則の作成手続
事業主は、就業規則の作成または変更に当たっては、その事業場の労働者の過半数を代表する者(または労働者の過半数で組織する労働組合)の意見を聴かなければならないこととされています(労働基準法第90条)。
その際、事業主は、パートタイム・有期雇用労働者にかかる事項について就業規則を作成し、または変更しようとするときは、当該事業所において雇用するパートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者の意見を聴くように努める(努力義務)ものとされています(パートタイム・有期雇用労働法第7条)。
不合理な待遇の禁止
事業主は、雇用するパートタイム・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、通常の労働者の待遇との間において、パートタイム・有期雇用労働者と通常の労働者の①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情のうち、その待遇の性質および目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないとされています(パートタイム・有期雇用労働法第8条)。
待遇の違いが不合理と認められるかどうかの判断は、個々の待遇(基本給、賞与、役職手当、食事手当、福利厚生施設、教育訓練、休暇など)ごとに、その待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情(①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情)を考慮して判断されます。
そこで、厚生労働省は、「同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)(平成30年12月28日厚生労働省告示第430号)」を公表し、通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのか、賃金の項目(基本給・賞与・手当)ごとに、原則的な考え方と具体例を示しています。
通常の労働者と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止
事業主は、職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲が通常の労働者と同一のパートタイム・有期雇用労働者(以下、「法第9条の対象となるパートタイム・有期雇用労働者」といいます)については、基本給、賞与その他の待遇(教育訓練、福利厚生施設、解雇など)のそれぞれについて、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由として差別的に取り扱ってはならないとされています(パートタイム・有期雇用労働法第9条)。
パートタイム・有期雇用労働者の賃金
事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用するパートタイム・有期雇用労働者の職務の内容、職務の成果、能力または経験その他の就業の実態に関する事項を勘案し、その賃金(基本給、賞与、役職手当など職務の内容に密接に関連して支払われる賃金)を決定するように努める(努力義務)ものとされています(パートタイム・有期雇用労働法第10条)。
例えば、「パートタイム労働者の時給は一律〇円」のように一律に決定するのではなく、通常の労働者との均衡を考慮し、職務の内容、職務の成果、能力または経験その他の就業の実態に関する事項を勘案して賃金を決定するように努める必要があります。
教育訓練
法第9条の対象となるパートタイム・有期雇用労働者以外の通常の労働者と職務の内容が同じであるパートタイム・有期雇用労働者
事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、その通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するためのものについては、職務の内容が同じパートタイム・有期雇用労働者に対しても実施しなければならない(ただし、すでにその職務に必要な能力を有している場合を除きます)とされています(パートタイム・有期雇用労働法第11条第1項)。
法第9条の対象となるパートタイム・有期雇用労働者以外のすべてのパートタイム・有期雇用労働者
事業主は、上記のほか、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用するパートタイム・有期雇用労働者の職務の内容、職務の成果、能力または経験その他の就業の実態に関する事項に応じ、そのパートタイム・有期雇用労働者に対して教育訓練を実施するように努める(努力義務)ものとされています(パートタイム・有期雇用労働法第11条第2項)。
福利厚生施設
法第9条の対象となるパートタイム・有期雇用労働者以外のすべてのパートタイム・有期雇用労働者
事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)については、その雇用するパートタイム・有期雇用労働者に対しても、利用の機会を与えなければならないとされています(パートタイム・有期雇用労働法第12条)。
通常の労働者への転換
事業主は、すべてのパートタイム・有期雇用労働者を対象に、通常の労働者への転換を推進するため、次のいずれかの措置を講じなければならないとされています(パートタイム・有期雇用労働法第13条)。
通常の労働者への転換
- 通常の労働者を募集する場合、その募集内容をすでに雇用しているパートタイム・有期雇用労働者に周知する
- 通常の労働者のポストを社内公募する場合、すでに雇用しているパートタイム・有期雇用労働者にも応募する機会を与える
- パートタイム・有期雇用労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設ける
- その他、通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずる
事業主が講ずる措置の内容等の説明
雇い入れ時
事業主は、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、実施する雇用管理の改善に関する措置の内容を説明しなければならないとされています(パートタイム・有期雇用労働法第14条第1項)。
パートタイム・有期雇用労働者から求めがあったとき
事業主は、その雇用するパートタイム・有期雇用労働者から求めがあったときは、通常の労働者との間の待遇の相違の内容および理由と、待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明しなければならないとされています(パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項)。
相談体制
事業主は、パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善などに関する事項について、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならないとされています(パートタイム・有期雇用労働法第16条)。
短時間・有期雇用管理者の選任
事業主は、常時10人以上のパートタイム・有期雇用労働者を雇用する事業所ごとに、「短時間・有期雇用管理者」を選任するように努める(努力義務)ものとされています(パートタイム・有期雇用労働法第17条)。
「短時間・有期雇用管理者」の業務としては、①パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善などに関する事項について必要な措置を検討・実施すること、②労働条件などに関してパートタイム・有期雇用労働者の相談に応じることなどが挙げられます。

