賃金の欠勤控除(不就労控除)の計算方法(遅刻・早退・欠勤など)を解説

賃金の欠勤控除(不就労控除)とは

欠勤とは

「欠勤」とは、従業員が、会社との間の労働契約によって定められた所定労働時間の全部または一部について、就労しないことをいいます。

一般的には、1日の所定労働時間の全部を就労しないことを「欠勤」といい、1日の所定労働時間のうち一部について就労しないことを「遅刻(始業時刻に遅れて就労を開始する)」または「早退(終業時刻よりも前に就労を終了する)」といいます。

欠勤控除(不就労控除)とは

欠勤控除(不就労控除)」とは、従業員が遅刻、早退、または欠勤などをすることによって、本来就労すべき所定労働時間に就労しなかった場合に、本来支払われる賃金から、その就労しなかった時間に対する賃金を控除することをいいます。

会社が欠勤控除を行うことは、ノーワーク・ノーペイの原則から、当然に行うことができるものと解されます。

ノーワーク・ノーペイの原則」とは、労働契約の本質は、従業員が労務を提供し、会社はその労務の対価として賃金を支払うことにあることから、従業員が労務を提供しない場合には、会社はその対価である賃金を支払う必要がないという考え方をいいます。

なお、ノーワーク・ノーペイの原則に基づく欠勤控除では、従業員が労務を提供しなかった理由については考慮されません。

例えば、台風や地震など、不可抗力によって欠勤をした場合であっても、欠勤をした時間に対する賃金を控除することは問題ありません。

ただし、従業員が労務を提供できなかった原因について、会社の責めに帰すべき事由がある場合には、会社は従業員に対して、休業手当を支払う必要があります(労働基準法第26条)。

休業手当については、次の記事をご覧ください。

【労働基準法】「休業手当」とは?休業手当の要件(帰責事由)、計算方法(平均賃金の60%)などを解説

欠勤控除(不就労控除)が違法となる場合

欠勤控除が違法となる場合

欠勤控除をする際には、その遅刻、早退、または欠勤時間に相当する賃金だけを控除するに留める必要があり、これを超えて欠勤控除をすることは、ノーワーク・ノーペイの原則に反する違法な欠勤控除となります

例えば、次のような欠勤控除を行うことは、違法となります。

欠勤控除が違法となる例

  • 30分の遅刻をした従業員について、それを1時間に切り上げ、1時間分の賃金を欠勤控除する場合
  • 従業員が遅刻を3回した場合には、遅刻をした時間に関わらず、1日の欠勤があったものとして1日分の賃金を控除する場合

ノーワーク・ノーペイの原則に基づき賃金を控除できるのは、あくまで労務の提供がなされなかった時間に対応する部分に限られます。

したがって、例えば30分の遅刻をした従業員について賃金を控除できるのは、あくまで30分に相当する賃金に限られます。

これを1時間に切り上げて1時間分の賃金を控除することは、労務の提供が行われた残り30分に対する賃金を支払っていないことを意味します。

このような欠勤控除は、労働基準法が定める「賃金はその全額を支払わなければならない」とする原則(賃金の全額払いの原則)に違反することになります(労働基準法第24条)。

減給の制裁(懲戒処分)による場合

前述のとおり、労務の提供がなされなかった時間を超えて、賃金を控除することは違法となりますが、正当な理由なく遅刻、早退、または欠勤をしたことが、会社の就業規則で定める懲戒事由に該当する場合には、当該行為に対する懲戒処分として、減給の制裁を行うことがあります。

これは欠勤控除とは異なるため、減給額は、必ずしも欠勤した時間に対する賃金の額に留める必要はありません。

ただし、減給の制裁は無制限に行えるものではなく、労働基準法によって、次のとおり定められていることに留意する必要があります(労働基準法第91条)。

減給の制裁

  • 一回の減給額が、平均賃金の1日分の半額を超えないこと
  • 減給する総額が、一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えないこと

なお、平均賃金については、次の記事をご覧ください。

【労働基準法】「平均賃金」とは?平均賃金の計算方法(原則・最低保障額)などを解説

欠勤控除(不就労控除)の計算方法①(欠勤があった月の所定労働日数)

欠勤控除の計算方法

欠勤控除をする際の控除額の計算方法については、法律上の定めがありません

したがって、会社は就業規則や賃金規程などによって、どのような計算方法によって欠勤控除をするかを定めておく必要があります

ここでは、一般的な月給制を例に、「欠勤があった月の所定労働日数」によって控除額を算出する方法と、「1ヵ月あたりの平均所定労働日数」によって控除額を算出する方法を解説します。

欠勤があった月の所定労働日数によって控除額を求める計算式

欠勤控除額の計算方法①

1ヵ月の給与額(月給)÷欠勤があった月の所定労働日数=1日あたりの欠勤控除額

「所定労働日数」とは、労働契約によって定められた労働日(出勤日)をいいます。

例えば、月給22万円の従業員が1日欠勤をした場合において、その月の所定労働日数が22日であるときの欠勤控除額は、次のとおりです。

欠勤控除額の計算例

220,000円÷22日=10,000円

1時間あたりの欠勤控除額を算出する場合

遅刻・早退の場合には、さらに時間単価を算出する必要があります。

1時間あたりの欠勤控除額

1ヵ月の給与額(月給)÷欠勤があった月の所定労働日数÷1日の所定労働時間=1時間あたりの欠勤控除額

例えば、上記の計算例において、1日の所定労働時間が8時間であれば、1時間あたりの欠勤控除額は、1,250円(220,000円÷22日÷8時間)となります。

計算方法①のメリット・デメリット

この計算方法のメリットは、欠勤控除額の計算方法として、簡便で分かりやすいことです。

一方、この計算方法のデメリットは、欠勤した月の所定労働日数によって、控除される額が変動することです。

一般的に、1ヵ月の所定労働日数は、毎月一定の日数ではなく、休日の影響により月によって異なります。

すると、所定労働日数が少ない月(ゴールデンウィーク、夏季・冬季休暇がある月など)ほど、欠勤した場合の控除額が高くなります。

例えば、上記の計算例において、欠勤をした月の所定労働日数が20日であるときの欠勤控除額は、11,000円(220,000円÷20日)となります。

すると、同じ1日の欠勤であっても、所定労働日数が少ない(20日)ときの方が、欠勤による控除額が多くなる(11,000円>10,000円)結果となります。

月給制の下では、毎月の所定労働日数に関わらず、毎月一定額の給与を支給することが多いことから、欠勤をした月によって、欠勤1日あたりの控除額の単価が変動することについて、従業員が不満をもつ可能性があります。

欠勤控除(不就労控除)の計算方法②(1ヵ月あたりの平均所定労働日数)

1ヵ月あたりの平均所定労働日数によって控除額を求める計算式

欠勤控除額の計算方法②

1ヵ月の給与額(月給)÷1ヵ月あたりの平均所定労働日数=1日あたりの欠勤控除額

この計算方法では、「1ヵ月あたりの平均所定労働日数」を用いて、欠勤1日あたりの控除額を算出します。

この方法は、労働基準法によって定められている、割増賃金(残業代)の計算方法に準じています。

1ヵ月あたりの平均所定労働日数は、次の計算式によって算出します。

1ヵ月あたりの平均所定労働日数の算出方法

1年間の所定労働日数÷12ヵ月=1ヵ月あたりの平均所定労働日数

例えば、1年間の所定労働日数が240日であれば、1ヵ月あたりの平均所定労働日数は、20日(240日÷12ヵ月)となります。

1年間の平均所定労働日数を用いて計算することによって、毎月の所定労働日数の変動の影響を受けることなく、平等に欠勤額を算出することができ、これにより月給制にもなじみやすいといえます。

1時間あたりの欠勤控除額を算出する場合

遅刻・早退の場合には、時間単価を算出する必要があります。

この場合には、1ヵ月の給与額(月給)を「1ヵ月あたりの平均所定労働時間」で割ることによって、1時間あたりの欠勤控除額を算出します。

1ヵ月あたりの平均所定労働時間を算出するための計算式は、次のとおりです。

1ヵ月あたりの平均所定労働時間の算出方法

1年間の所定労働日数×1日の所定労働時間÷12ヵ月=1ヵ月あたりの平均所定労働時間

例えば、1年間の所定労働日数が240日、1日の所定労働時間が8時間であれば、1ヵ月あたりの平均所定労働時間は、160時間(240日×8時間÷12ヵ月)となります。

仮に月給が22万円であれば、時給額は1,375円(22万円÷160時間)となります。

計算方法②のメリット・デメリット

この計算方法では、控除単価が一定になるため、計算方法①によるデメリットが解消されます。

一方、この計算方法では、従業員の欠勤日数によっては、計算結果に問題が生じることがあります。

例えば、1ヵ月あたりの平均所定労働日数が20日である場合において、所定労働日数が21日の月に20日間の欠勤をすると、1日は出勤しているにも関わらず、その月の給与がまったく支払われないこととなります。

事例A

【事例】

  • 1ヵ月あたりの平均所定労働日数…20日
  • 欠勤のあった月の所定労働日数…21日
  • 欠勤した日数…20日(出勤した日数は1日)

【計算】

  • 1日あたりの控除額=月給20万円÷20日=1万円
  • 1ヵ月の控除額=1万円×20日=20万円
  • 支給額=20万円-20万円=0円

【結果】

1日は出勤しているにも関わらず、支給額は0円となる

また、これとは逆の結果になることもあります。

事例B

【事例】

  • 1ヵ月あたりの平均所定労働日数…20日
  • 欠勤のあった月の所定労働日数…19日
  • 欠勤した日数…19日(出勤した日数は0日)

【計算】

  • 1日あたりの控除額=月給20万円÷20日=1万円
  • 1ヵ月の控除額=1万円×19日=19万円
  • 支給額=20万円-19万円=1万円

【結果】

1ヵ月すべて欠勤しているにも関わらず、1万円が支給される

上記のような矛盾を避けるために、ある一定の欠勤日数までは、欠勤日数に応じた減額を行い、当該日数を超える場合には、出勤日数に応じた加算を行うことも考えられます。

例えば、1ヵ月のうち、欠勤日数が10日以内であれば減額し、10日を超える場合には加算を行うと定めます。

このとき、事例Aの場合には、欠勤日数が10日を超えるため、「出勤」日数である1日分を(加算して)給与として支払います。

事例Bの場合には、欠勤日数が10日を超え、かつ出勤日数が0日であるため、給与は支払われません。

このように、欠勤控除は、基本的に「休んだ日の分の賃金を差し引く」という計算を行いますが、反対に、「出勤した日数分の賃金を支払う」という方法をとることもできます

原則は欠勤控除としつつも、上記の事例のように欠勤控除によると不相当な計算結果になる場合には、出勤日数によって賃金を支払うことが考えられます。

この場合、次の計算式で計算します。

出勤日数に応じた支給額の計算方法

1ヵ月の給与額(月給)÷1ヵ月あたりの平均所定労働日数×出勤日数=支給額

計算時に用いる1ヵ月の給与額(月給)について

欠勤控除額を計算する際に、総支給額(基本給+手当)を基準にして控除額を算出するのか、あるいは手当の全部または一部を除いた額を基準にするのかは、会社の判断によって定めることができます

この点について、手当の種類や性質によっては、従業員の出勤とは直接的な関係がないものも含まれるため、単純に出勤日数に応じて減額することが適さないものがあるという考え方があります。

例えば、通勤手当など、労務の提供に要する費用を補助する手当については、出勤をしなかった以上、控除されることに違和感はないと思います。

一方、家族手当や住宅手当など、従業員の労務の提供とは直接的な関係がない手当(福利厚生的な手当)については、欠勤控除の対象とはしない、という取り扱いも考えられます。

欠勤控除額の端数処理について

計算の結果生じた欠勤控除額の円未満の端数については、円未満を「切り捨て」することが一般的です。

四捨五入または控除額を切り上げることは、欠勤時間を超えて控除をすることになりかねず、ノーワーク・ノーペイの原則に反するためです。

欠勤控除に関する就業規則の規定例(記載例)

欠勤控除に関する就業規則の規定例(記載例)は、次のとおりです(1日の所定労働時間が8時間の会社の場合)。

欠勤があった月の所定労働日数による場合

就業規則の規定例①

(欠勤等の扱い)

第●条 従業員の遅刻、早退、または欠勤については、基本給から当該日数または時間分の賃金を控除する。

この場合において、控除すべき賃金の1日あたり、または1時間あたりの金額の計算は次のとおりとする。

一、1日あたりの金額

基本給÷欠勤があった月の所定労働日数

二、1時間あたりの金額

基本給÷欠勤があった月の所定労働日数÷1日の所定労働時間

1ヵ月あたりの平均所定労働日数による場合

就業規則の規定例②

(欠勤等の扱い)

第●条 従業員の遅刻、早退、または欠勤については、基本給から当該日数または時間分の賃金を控除する。

この場合において、控除すべき賃金の1日あたり、または1時間あたりの金額の計算は次のとおりとする。

一、1日あたりの金額

基本給÷1ヵ月の平均所定労働日数(年間所定労働日数÷12ヵ月)

二、1時間あたりの金額

基本給÷1ヵ月の平均所定労働時間(年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12ヵ月)