「雇用保険」とは?雇用保険の仕組み・保険給付などを解説

雇用保険の目的

雇用保険」とは、労働者が失業した場合、労働者に高齢・介護など雇用の継続が困難となる事由が生じた場合、労働者が子を養育するための休業をした場合などにおいて、必要な給付を行うことにより、労働者の生活および雇用の安定を図ることを主な目的とした社会保険をいいます(雇用保険法第1条)。

なお、雇用保険と労災保険を併せて、「労働保険」と呼ばれています。

雇用保険は、政府が管掌し、事務手続きなどは全国各地にある公共職業安定所(ハローワーク)が行います。

雇用保険の適用事業と被保険者

雇用保険法では、「労働者が雇用される事業」を適用事業としていることから、原則として、労働者を1人でも雇用している事業であれば、業種や規模を問わず、雇用保険の適用を受けます(雇用保険法第5条第1項)。

そして、適用事業に雇用されている労働者は、主に、次の区分に従い、雇用保険の被保険者となります。

【被保険者の種類】

65歳未満65歳以上
一般被保険者高年齢被保険者
(雇用保険法第37の2)

被保険者の種類には、上記の他にも「短期雇用特例被保険者(季節的に雇用される者)」と「日雇労働被保険者(日々雇用される者)」がありますが、本稿では説明を割愛します。

また、パートやアルバイトなどの名称や雇用形態を問わず、1週間の所定労働時間が20時間以上(※)であり、かつ、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる場合には、雇用保険の被保険者になります(雇用保険法第6条第一号、第二号)。

(※)法改正により、2028(令和10)年10月1日以降は「10時間以上」となります。

なお、「1週間の所定労働時間」とは、就業規則、雇用契約書などに基づき、労働契約上、その者が通常の週(祝祭日などの休日を含まない週)に勤務する時間のことをいいます。

ただし、上記の要件を満たす場合でも、学生は、原則として被保険者となりません。

雇用保険の保険料

一般の事業における雇用保険料率は、次のとおりです(2026(令和8)年4月1日現在)。

【雇用保険料率(一般の事業)】

 労働者負担事業主負担(※)合計
雇用保険料率1,000分の51,000分の8.51,000分の13.5

(※)事業主負担の雇用保険料率には、雇用保険二事業の保険料率として1,000分の3.5が含まれています。

雇用保険料は、労災保険料と併せて「労働保険料」といい、労働者に支払う賃金総額に保険料率(労災保険料率+雇用保険料率)を乗じた額を、1年に1回納付します。

労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(保険年度)を単位として計算され、毎年6月1日から7月10日までの間に、労働保険料の申告・納付手続き(これを「年度更新手続き」といいます)を行うことによって納付します。

雇用保険の体系

雇用保険の体系は、主に「失業等給付」、「育児休業等給付」、「二事業」の3本柱からなります

さらに、「失業等給付」は、「求職者給付」、「就職促進給付」、「教育訓練給付」、「雇用継続給付」の4つに分けられます。

【失業等給付の種類】

種類概要主な給付
求職者給付離職し、失業状態にある者に対し、失業中の生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にすることを目的とする(失業補償機能)基本手当
就職促進給付失業者の再就職を援助、促進することを目的とする再就職手当
教育訓練給付自主的に職業に関する教育や訓練を受けた者に対し、雇用の安定や再就職の促進を図ることを目的とする教育訓練給付
雇用継続給付高齢者の雇用の継続および介護休業の取得を援助、促進し、雇用の安定を図ることを目的とする介護休業給付、高年齢雇用継続給付

求職者給付

求職者給付は、一般被保険者が失業した場合に支給されるもので、「基本手当」、「技能習得手当」、「寄宿手当」、「傷病手当」の4種類があります(雇用保険法第10条第2項)。

基本手当

求職者給付の中心は、「基本手当」であり、被保険者であった者の求職活動中の生活を保障するものとして、被保険者であった者が失業している日(4週間に1回、公共職業安定所において、失業状態にあることの認定を行います)について支給されます

一般被保険者が基本手当を受給するために必要な被保険者期間として、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12ヵ月以上あることが必要です(雇用保険法第13条第1項)。

被保険者期間は、被保険者であった期間のうち、離職日から1ヵ月ごとに区切った期間に、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上(または賃金の支払いの基礎となった労働時間数が80時間以上)ある月を1ヵ月として数えます(雇用保険法第14条第1項)。

基本手当の日額

基本手当の日額は、賃金日額に給付率を乗じて算定します。

基本手当の日額

基本手当の日額 = 賃金日額 × 給付率

賃金日額」とは、被保険者期間として計算された最後の6ヵ月間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金、および3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く)の総額を180で除して得た額とされています(雇用保険法第17条第1項)。

なお、賃金日額には、最低限度額(3,014円)と最高限度額(年齢に応じて、最高17,740円)が定められています(2025(令和7)年8月1日現在)(雇用保険法第17条第4項)。

「給付率」は、離職日において60歳未満の者については、賃金日額に応じて、50%から80%までとされています(雇用保険法第16条第1項)。

基本手当の受給期間と所定給付日数

基本手当は、離職日の翌日から1年の期間内に、所定給付日数を限度として支給されます(雇用保険法第22条第1項)。

【所定給付日数(一般の受給資格者)】

算定基礎期間 (※)10年未満10年以上
20年未満
20年以上
全年齢90日120日150日

(※)「算定基礎期間」とは、同一の事業主に雇用された期間のみに限らず、離職後1年以内に被保険者資格を再取得した場合には、その前後の被保険者として雇用された期間を通算したものをいいます(雇用保険法第22条第3項)。

なお、倒産・解雇など、会社都合による退職については、受給要件や所定給付日数が異なります。

詳しくは、次の記事をご覧ください。

【雇用保険(基本手当)】自己都合退職と会社都合退職(特定受給資格者・特定理由離職者)の違いを解説

就職促進給付

就職促進給付は、基本手当などの求職者給付を受給中の者(受給資格者)を対象に、その再就職を促進するための給付をいいます。

就職促進給付には、「就業促進手当(就業手当・再就職手当・常用就職支援手当)」、「移転費」、「求職活動支援費」の3種類があります(雇用保険法第10条第4項)。

就業促進手当

就業促進手当のうち、「再就職手当」は、受給資格者が、基本手当の所定給付日数の3分の1以上を残して、安定する事業に就いた場合に、所定給付日数の残日数の一部(残日数に応じて、60%または70%)が支給されます(雇用保険法第56条の3第1項第一号)。

移転費

「移転費」は、受給資格者が公共職業安定所の紹介した職業に就くため、または公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けるために、その住所または居所を変更する場合に、移転に要する費用が支給されます(雇用保険法第58条)。

求職活動支援費

「求職活動支援費」は、受給資格者が公共職業安定所の紹介により、広範囲の地域にわたる求職活動などを行う場合において、交通費や宿泊費などが支給されます(雇用保険法第59条)。

教育訓練給付

教育訓練給付は、自主的に職業に関する教育や訓練を受けた者に対し、雇用の安定や再就職の促進を図ることを目的とするもので、教育訓練給付金、教育訓練休暇給付金があります。

「教育訓練給付金」は、雇用の安定および就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合に支給されます(雇用保険法第60条の2)。

教育訓練給付金の額(一般教育訓練)は、教育訓練の受講のために支払った受講費用の20%(上限10万円)とされています(雇用保険法施行規則第101条の2の7第一号)。

「教育訓練休暇給付金」は、一般被保険者が職業に関する教育訓練を受けるための休暇(教育訓練休暇)を取得した場合に支給されます(雇用保険法第60条の3)。

雇用継続給付

雇用継続給付には、「高年齢雇用継続給付」と「介護休業給付」があります。

高年齢雇用継続給付

60歳以上の被保険者を再雇用する場合において、一定の要件(60歳時点の賃金額の75%未満)を満たした場合には、雇用保険から「高年齢雇用継続基本給付金」が支給されます(雇用保険法第61条)。

高年齢雇用継続給付金は、65歳に到達するまでの期間において、60歳以後の各月の賃金の10%が支給されます。

介護休業給付

被保険者が一定の要件を満たす場合には、介護休業期間中に「介護休業給付金」が支給されます(雇用保険法第61条の4)。

介護休業給付金は、休業開始時の賃金日額の67%に、支給日数(最大93日)を乗じた額が支給されます。

育児休業等給付

育児休業等給付には、「育児休業給付(育児休業給付金・出生時育児休業給付金)」、「出生後休業支援給付(出生後休業支援給付金)」、「育児時短就業給付(育児時短就業給付金)」があります(雇用保険法第61条の6)。

育児休業給付(育児休業給付金・出生時育児休業給付金)

育児休業給付金」とは、被保険者が、1歳に達する日の前日までにある子を養育するために育児休業を取得した場合において、休業前の賃金日額の67%または50%を支給する給付金をいいます(雇用保険法第61条の7)。

「出生時育児休業給付金」とは、被保険者が、子の出生後8週間以内に、出生時育児休業を取得した場合において、最大で28日間、休業前の賃金日額の67%を支給する給付金をいいます(雇用保険法第61条の8)。

出生後休業支援給付(出生後休業支援給付金)

「出生後休業支援給付金」とは、子の出産直後の一定期間内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、夫婦が共に14日以上の育児休業(出生後休業)を取得した場合において、最大で28日間、休業前の賃金日額の13%を支給する給付金をいいます(雇用保険法第61条の10)。

育児時短就業給付(育児時短就業給付金)

「育児時短就業給付金」とは、被保険者が、2歳未満の子を養育するために、所定労働時間を短縮して就業した場合(時短勤務をした場合)において、時短勤務中に支払われた賃金日額の10%を支給する給付金をいいます(雇用保険法第61条の12)。