インターンシップは労働時間?給料は必要?法律上(労働基準法・労災)の労働者性を解説

はじめに

会社が採用活動の一環として、就職活動中の学生に対して、自社で就労体験・職場体験などの場を提供することがあり、これを一般に「インターンシップ」といいます。

インターンシップは、本来、アルバイトとは異なり学生の労働力の提供を目的とするものではないため、一般的には給料の支給はありませんが、その態様によっては、インターンシップに参加する学生(以下、「インターンシップ生」といいます)が法律上の労働者に該当し得る場合があり、その場合、会社に給料(賃金)を支払う義務が生じるなど、対応に注意を要します。

今回は、インターンシップ生が、どのような場合に法律上の労働者に該当し得るのか、その判断基準を解説します。

インターンシップと会社のメリット

インターンシップとは?

インターンシップ」とは、一般に、会社が就職活動中の学生に向けて提供する「就労体験」の場をいい、広い意味では、学生が実務経験を積み、職業意識を高めるための企業内で行われる研修計画などをいいます。

インターンシップについて、法律上の定義はありませんが、文部科学省の定義によると、『学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した「就業体験」を行うこと』とされています。

インターンシップを受け入れる会社に対して、学生から自発的に申し込んで参加をする場合もあれば、インターンシップが大学などの正規の科目の中に組み込まれており、参加することによって単位を取得することができる場合もあります。

会社のメリット

会社がインターンシップを実施することのメリットとして、インターンシップに参加した学生の能力を把握することにより、その中から優秀な学生を選定して採用することができる点や、インターンシップを経た学生を採用することで、就職後のミスマッチによる早期離職を防止することができる点などが挙げられます。

インターンシップの類型

インターンシップは、その目的に応じて、主に次の4つの類型に分けられます。

実際には、必ずしもいずれか1つの類型に該当するものではなく、複数の類型の要素を併せもつことが多いといえます。

インターンシップの類型

  1. 職場体験型
  2. 実務実践型
  3. 課題解決型
  4. 採用直結型

職場体験型

これから社会人になる学生に向けて、「働くこととは何か」といった、職業観を醸成することを主な目的とした類型です。

実務実践型

大学などで学んだ知識を、実践を通して習得することを目的とする類型です。

例えば、医療や福祉関連の大学で行われている現場実習や、教員免許などの資格取得のために行われる実習があります。

課題解決型

会社が設定した課題に対して、インターンシップ生が挑戦し、社会における課題解決能力を身に付けることを目的とする類型です。

また、少人数制のチームで課題に取り組むことで、社交性やコミュニケーション能力などを育てる機会にもなります。

採用直結型

インターンシップが、会社にとって採用活動の一部に組み込まれている類型です。

インターンシップが一般選考よりも先行して、優秀な社員を見付けるための機会として位置づけられている場合をいいます。

インターンシップ生の労働者性

インターンシップ生に対する労働法規の適用

インターンシップの目的は、あくまで就労を「体験」する機会を提供するものであり、一般的には、法律上の労働者に該当するものではなく、したがって給料も支払われないことが多いといえます。

しかし、実際の作業現場における実習など、会社内の従業員と近い内容の就労を行う場合には、インターンシップ生についても法律上の「労働者」として、法律による保護が求められる場合があります。

インターンシップ生が「労働者」に該当する場合には、労働基準法をはじめとする労働法規が適用されることとなります。

インターンシップ生が労働者に該当する場合

インターンシップ生が法律上の労働者に該当する場合には、主に次の法律が適用されることとなります。

労働基準法・最低賃金法の適用

インターンシップ生が労働基準法上の労働者に該当する場合には、会社はインターンシップ生の提供した「労働」に対する対価として、給料(賃金)を支払わなければならず、さらにその給料の金額は、最低賃金法の適用を受けることとなります。

最低賃金法が適用されることにより、都道府県別の最低賃金を下回る賃金の取り決めをした場合には、その取り決めは無効となり、違反した会社には罰則として、50万円以下の罰金が定められています。

また、労働基準法では、法定労働時間として1日8時間、1週40時間が定められており、会社が当該時間を超えて労働をさせた場合には、インターンシップ生であっても、割増賃金(通常の賃金の25%以上)を支払う義務が生じることとなります。

労災保険法の適用

インターンシップによる実習中などに事故が発生し、学生がケガをして治療費を要する場合や、ケガによる後遺症や死亡に対する補償として、労災保険が適用されることとなります(平成9年9月18日基発636号)。

インターンシップ生の労働者性の判断基準

行政通達の内容

行政通達では、インターンシップにおける学生の労働者性として、「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられ、また、この判断は個々の実態に即して行う必要がある。」としています(平成9年9月18日基発636号)。

また、上記と別の行政通達では、インターンシップの実習生が労働者でない場合の例として、①教育課程の一環として行われている、②実習生が直接生産活動に従事することはない、③事業場が自らのための勤怠管理・制裁を行ってはいない、④事業場から一定額の手当や交通費が支給されているが、実費補助ないし恩恵的給付と判断される、などに着目し、これらの要素が認められる場合には、労働者ではないものとして取り扱うとしています(昭和57年2月19日基発121号)。

労働者性が認められる可能性が高い要素

上記の通達をまとめると、インターンシップ生に労働者性が認められる可能性が高い場合としては、次のようになります。

労働者性が認められる可能性が高い場合

  • 学生が直接生産活動に従事している
  • 作業による利益・効果が会社に帰属する
  • 会社と学生との間に使用従属関係(指揮命令)がある
  • 会社が学生の勤怠管理を行っている
  • 勤務態度や遅刻・早退などに対する制裁(懲戒処分など)を行っている
  • 大学の教育課程の一環として行われているものではない

上記の要素を総合的に考慮して、多くに当てはまるほど、法律上の「労働者」に該当する可能性が高まるといえます。

例えば、会社に出社する義務を課したり、遅刻、早退に対して制裁を課したりする場合には、会社とインターンシップ生とは指揮命令関係にあり、一時的な労働を行う関係(一種の短期アルバイト)に該当するといえますので、給料(賃金)を支払うことが求められるといえます。

一方、賃金を支払うほどの労働の実体がなく、単なる職場見学や職場体験に留まるのであれば、社会通念上もアルバイト以下であると考えられるため、労働者には該当せず、したがって給料を支払う必要もありません。

関連裁判例

研修参加者が労働者に該当するか(労働基準法第22条の解雇予告義務を負うか)否かが1つの争点となった裁判例(ヒューマントラスト事件/東京地方裁判所平成20年3月26日判決)を紹介します。

問題となった研修日の業務には、応募者の中から、適性のある者を選抜するという側面があり、事前に会社から研修参加者全員が採用されるわけではないことの告知を受けたうえで、研修日業務に参加していました(前述の類型「採用直結型」に近い)。

この場合、個々の研修参加者は、上記事情を了解したうえで研修に参加したことになり、会社との間で、研修日業務に関して1日の労働契約を締結したという評価をすることは困難であって、採用の前提となる研修実施を労働契約の締結であると評価することはできないとして、原告(研修参加者)の請求には理由がないと判断されました。

会社の受入れ体制とリスク管理

会社がインターンシップ生を受け入れる場合には、法律上の労働者に該当するか否かに関わらず、インターンシップ生の安全に配慮する義務(安全配慮義務)を負うため、施設内における安全確保措置などを講ずる義務があります。

また、インターンシップ生による安易なSNSによる発信などにより、会社の機密情報が漏洩するリスクなども防止しておく必要があります。

したがって、例えば、次の点についてリスク防止策を講じておく必要があります。

会社のリスク管理

  • 危険有害業務についてインターンシップ生を受け入れないこと
  • 現場で就労体験を行う場合には、リスクに応じた傷害保険などに加入すること
  • 研修生に、機密保持の取り扱いに関する誓約書を提出させること