「健康保険」とは?健康保険の仕組み・保険給付などを解説

健康保険の目的

健康保険」とは、労働者またはその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷、死亡または出産に関して保険給付を行うことによって、国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とした社会保険をいいます(健康保険法第1条)。

業務災害による疾病、負傷等については、労災保険が適用されます。

なお、健康保険、厚生年金保険、および介護保険を併せて、「(協議の)社会保険」と呼ばれています。

健康保険の適用事業

健康保険は、国、地方公共団体または法人の事業所であって、常時従業員を使用するものが適用事業となることから、株式会社などの法人であれば、業種や規模を問わず(事業主のみの場合であっても)、健康保険の適用を受けます(健康保険法第3条第3項第二号)。

また、それ以外の個人事業所においては、農林業、サービス業などの一部の業種を除き、常時5人以上の従業員を使用するものが適用事業となります(健康保険法第3条第3項第一号)。

健康保険の保険者

健康保険事業の経営主体として、保険給付等を行うものを「保険者」といいます。

健康保険の保険者は、全国健康保険協会または健康保険組合です(健康保険法第4条)。

全国健康保険協会(通称「協会けんぽ」)は、公法人として設立され、健康保険組合の組合員でない被保険者にかかる健康保険事業を行っています。

健康保険組合は、適用事業所の事業主、その適用事業所に使用される被保険者および任意継続被保険者をもって組織する法人です(健康保険法第8条、第9条)。

健康保険の被保険者

被保険者とは

「被保険者」とは、適用事業所に使用される者をいいます(健康保険法第3条)。

ただし、船員保険の被保険者や、季節的業務に使用される者などは、被保険者から除外されています。

被保険者の種類には、上記の他にも「日雇特例被保険者(日々雇用される者)」がありますが、本稿では説明を割愛します。

また、退職者については、一定の要件を満たすことにより、退職後も引き続き同じ健康保険に加入し、「任意継続被保険者」となることができます。

短時間労働者

短時間労働者が、社会保険に加入し、被保険者となるための要件は、原則として、1週間の所定労働時間および1ヵ月間の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上であることとされています(健康保険法第3条第1項第9号)。

短時間労働者の社会保険への加入については、次の記事をご覧ください。

短時間労働者(パート・アルバイト)の社会保険への加入要件(4分の3基準・月額8万8千円など)を解説

健康保険の保険料

健康保険料(月額)の決まり方

社会保険料は、従業員に対して支払われる実際の給与の額ではなく、「標準報酬月額」に対して、保険料率を乗じて算出します。

「標準報酬月額」とは、実際の給与の額を一定の幅(等級)に当てはめた、社会保険料を計算する上での、いわば仮の給与ともいえます。

標準報酬月額には、1級(63,000円未満)から50級(1,355,000円以上)まであります。

これによって、社会保険料の計算を簡便かつ効率的に行うことができるようにしています。

健康保険料率

健康保険と介護保険の社会保険料を算出するための保険料率は、毎年見直され、毎年3月頃に改定されます。

健康保険料率は、協会けんぽ(全国健康保険協会)か、健康保険組合かによって異なり、さらに協会けんぽであっても、都道府県によって料率が異なります。

健康保険料の納付

健康保険料は、原則として、会社と従業員とで半額ずつ(折半して)負担し、まず会社が全額を納付し、従業員は毎月の給与から社会保険料が天引きされます。

社会保険料(標準報酬月額)が決定・改定されるタイミング

社会保険料を算出するための標準報酬月額は、まずは社会保険への加入時(入社時)に決定され、その後は3つのタイミングで決定・改定されることとなります。

社会保険料(標準報酬月額)が決定・改定されるタイミングを整理すると、次のとおりです。

【社会保険料(標準報酬月額)が決定・改定されるタイミング】

 タイミング手続名
(作成する書類)
手続の期限
社会保険に加入するとき(入社時)資格取得時決定 (資格取得届)資格取得日から5日以内
年に1回の見直しをするとき定時決定 (算定基礎届)毎年7月1日から7月10日まで
昇給などにより、固定的賃金が変動したとき随時改定 (月額変更届)固定的賃金が変動した月から4ヵ月目以降、速やかに
育児休業等が終了した後、標準報酬月額が変動したとき産前産後休業終了時改定・育児休業等終了時改定 (月額変更届)標準報酬月額が変動した月から4ヵ月目以降、速やかに(被保険者の申出により行う)

社会保険料(標準報酬月額)が決定・改定されるタイミングについては、次の記事をご覧ください。

社会保険料(標準報酬月額)はいつ決定・改定される?4つのタイミング(資格取得時・定時・随時・育児休業等終了時)について解説

保険給付

保険給付の種類

健康保険における保険給付の種類は、次のとおりです。

区分被保険者に関するもの被扶養者に関するもの
疾病または負傷療養の給付 入院時食事療養費 入院時生活療養費 保険外併用療養費 療養費家族療養費
訪問看護療養費家族訪問看護療養費
高額療養費高額療養費
移送費家族移送費
傷病手当金
出産出産育児一時金家族出産育児一時金
出産手当金
死亡埋葬料(埋葬費)家族埋葬料

以下、被保険者に関する給付を中心に解説します。

療養の給付

「療養の給付」とは、被保険者の疾病・負傷に関して、診療等の医療サービスを現物で給付することをいいます(健康保険法第63条)。

被保険者は、保険医療機関に被保険者証を提出することで、療養の給付を受けることができます。

療養の給付の範囲

  1. 診察
  2. 薬剤または治療材料の支給
  3. 処置、手術その他の治療
  4. 居宅における療養上の管理、およびその療養に伴う世話その他の看護
  5. 病院または診療所への入院、およびその療養に伴う世話その他の看護

療養の給付には、被保険者が負担すべき割合が定められており、被保険者は、療養の給付に要する費用の額に次の割合を乗じて得た額を、一部負担金として、保険医療機関等に支払わなければなりません(健康保険法第74条)。

【一部負担金】

区分負担割合
70歳未満100分の30
70歳以上一般100分の20
70歳以上の一定以上所得者100分の30

入院時食事療養費・入院時生活療養費

「入院時食事療養費」とは、被保険者が、疾病・負傷により保険医療機関に入院したときに、療養の給付とあわせて食事療養に要した費用の一部を支給するものをいいます(健康保険法第85条)。

入院期間中の食事の費用は、健康保険から支給される入院時食事療養費と、被保険者が支払う標準負担額でまかなわれます。

1食あたりの標準負担額は、一部の低所得者を除き、510円とされています(令和7年4月1日以降)。

また、療養病床に入院する65歳以上の被保険者(特定長期入院被保険者)については、「入院時生活療養費」が支給されます。

このとき、一部の低所得者を除き、食費の1食あたりの標準負担額は、510円(管理栄養士等を配置していない保険医療機関に入院している場合は470円)、居住費の1日あたりの標準負担額は、370円とされています(令和7年4月1日以降)。

保険外併用療養費

健康保険では、保険が適用されない保険外診療があると、保険が適用される診療も含めて療養の給付の対象外となり、医療費の全額が自己負担となります。

ただし、保険外診療を受ける場合でも、「評価療養(先進医療など)」、「患者申出療養」、「選定療養(差額ベッド代など)」については、保険診療との併用が認められており、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われ、その部分については一部負担金を支払うこととなり、残りの額は「保険外併用療養費」として健康保険から給付が行われます(健康保険法第86条)。

療養費

「療養費」とは、保険医療機関以外の病院で診察を受けた場合や、被保険者証が手元になかったなど、やむを得ず被保険者が医療費を全額支払った場合に、療養の給付等に代わる給付として、後日償還払いされる給付をいいます(健康保険法第87条)。

また、海外で医療を受けた場合も、国内基準に準じて療養費が支給されます。

訪問看護療養費

居宅で療養している被保険者が、主治医の指示に基づいて、訪問看護ステーションの訪問看護師から療養上の世話や必要な診療の補助を受けた場合に、その費用が、「訪問看護療養費」として現物給付されます(健康保険法第88条)。

訪問看護療養費の額は、厚生労働大臣が定める基準にしたがって算出した額から、被保険者が負担する基本利用料(3割)を控除した額です。

高額療養費

「高額療養費」は、同一月(1日から月末までの暦月)にかかった医療費の自己負担額が、一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超えた部分の額を給付するものです(健康保険法第115条)。

移送費

「移送費」は、病気やけがで移動が困難な患者が、医師の指示で一時的・緊急的な必要があり、移送された場合の費用を支給するものです(健康保険法第97条)。

傷病手当金

「傷病手当金」は、被保険者が、業務外の疾病または負傷によって労務不能となり休業し、会社から給与が支給されない場合に、休業期間中の生活を保障するために、健康保険から支給される給付です(健康保険法第99条)。

傷病手当金により、労務不能により休業した日について、標準報酬日額の3分の2に相当する額を、通算1年6ヵ月にわたって受けることができます。

なお、傷病手当金の対象者は、現に健康保険に加入している被保険者本人であり、被扶養者は対象とはなりません。

傷病手当金について、詳しくは次の記事をご覧ください。

「傷病手当金」とは?支給要件・支給額・支給期間など、制度の基本的な内容を解説【健康保険法】

出産育児一時金

「出産育児一時金」は、被保険者およびその被扶養者が出産した時に、1児につき50万円が支給されます(健康保険法第101条)。

出産手当金

「出産手当金」は、被保険者が出産のため会社を休み、事業主から報酬が受けられない場合に支給されます。

出産手当金は、出産の日以前42日から出産日の後56日までの間に休業した日について、標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給されます(健康保険法第102条)。

なお、出産手当金の対象者は、現に健康保険に加入している被保険者本人であり、被扶養者は対象とはなりません。

埋葬料(埋葬費)

「埋葬料」は、被保険者または被扶養者が亡くなったときに50,000円を支給するものです(健康保険法第100条)。

また、「埋葬費」は、亡くなった者に身寄りがない場合などで、生計維持関係にない者が埋葬を行ったときに、50,000円の範囲内で実際に要した費用が支給されます。