【法改正】2024(令和6)年4月以降の労務関連の主な法改正を一挙に解説

目次

はじめに

この記事では、2024(令和6)年4月以降に予定されている、労務管理に関連する主な法改正について、整理しています。

なお、この記事の内容は、2024(令和6)年1月1日時点で公表されている情報を元に作成しています。

法改正の最新情報については、厚生労働省のWEBサイトなどをご確認ください。

【関連動画はこちら】

2024(令和6)年4月以降の法改正スケジュール

2024(令和6)年4月以降に予定される、労務管理に関連する主な法改正は、次のとおりです。

2024(令和6)年4月以降の主な法改正

  1. 労働条件通知書の明示事項の改正【2024(令和6)年4月1日施行】
  2. 専門業務型裁量労働制の改正【2024(令和6)年4月1日施行】
  3. 企画業務型裁量労働制の改正【2024(令和6)年4月1日施行】
  4. 化学物質管理者の選任義務化【2024(令和6)年4月1日施行】
  5. 医師の時間外労働の上限規制【2024(令和6)年4月1日施行】
  6. 建設業の時間外労働の上限規制【2024(令和6)年4月1日施行】
  7. 運送業(自動車運転者)の時間外労働の上限規制【2024(令和6)年4月1日施行】
  8. 改善基準告示(運送業)の改正【2024(令和6)年4月1日施行】
  9. 障害者雇用率の引き上げ・短時間勤務の障害者にかかる実雇用率の算定基準の変更【2024(令和6)年4月1日施行】
  10. 健康保険・厚生年金保険の適用拡大【2024(令和6)年10月1日施行】
  11. 高年齢雇用継続給付の支給率の引き下げ【2025(令和7)年4月1日施行】

労働条件通知書の明示事項の改正【2024(令和6)年4月1日施行】

法改正の概要

会社と従業員との間の労働契約関係を明確にすることを目的として、「労働基準法施行規則」(厚生労働省令)、および「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(厚生労働省告示)が改正され、労働条件を通知する際の明示事項が追加されます。

施行日は、2024(令和6)年4月1日です。

【法改正の概要】

 対象者対応する時期明示・説明する内容
すべての従業員労働契約の締結時・更新時就業場所および業務の「変更の範囲」を明示する
有期契約の従業員有期労働契約の締結時・更新時・「更新上限の有無と内容」を明示する
・(変更時・更新時)更新上限を新設・短縮する場合は理由を説明する
有期契約の従業員有期労働契約の更新時(無期転換申込権が発生する場合)・「無期転換の申込機会」を明示する
・「無期転換後の労働条件」を明示する

法改正の詳細は、次の記事をご覧ください。

【2024年法改正】労働条件通知書の明示事項の改正(就業場所・業務の変更範囲、更新の上限、無期転換など)と記載例を解説

就業場所および従事すべき業務の「変更の範囲」の明示

労働条件通知書における明示事項のひとつとして、「就業の場所および従事すべき業務に関する事項」があります(労働基準法施行規則第5条第1項第一号の三)

その記載内容として、法改正前は、「雇入れ直後」の就業場所および従事する業務を明示すれば足りるとされていました(平成11年1月29日基発45号)。

これに対して、法改正後は、雇入れ直後の就業場所および従事する業務に加えて、これらの「変更の範囲」を明示する必要があります。

【法改正前後の比較】

明示する項目法改正前
(2024年3月31日以前)
法改正後
(2024年4月1日以降)
就業の場所および従事すべき業務に関する事項「雇入れ直後」の就業場所および従事する業務・「雇入れ直後」の就業場所および従事する業務
・就業場所および従事する業務の「変更の範囲

「変更の範囲」とは、将来の配置転換・人事異動などによって変わり得る、就業場所および業務の範囲をいい、従業員に対してこれらを明示することにより、従業員が将来のキャリアを予測できるようにする必要があります。

有期労働契約の「更新上限の有無とその内容」の明示

「更新上限の有無とその内容」の明示

会社は、有期労働契約を更新する可能性がある場合には、労働条件通知書において、更新するか否かを判断する際の基準(更新時における業務量や勤務成績など)を明示する必要があります(労働基準法施行規則第5条第1項第一号の二)。

そして、法改正後は、会社は、有期労働契約を締結する従業員に対して、当該契約を締結する際、および更新する際において、「更新上限の有無とその内容」を明示することが必要となります。

「更新上限の有無とその内容」とは、その有期労働契約が更新される場合において、通算契約期間の上限や、更新回数の上限があるのかどうかを意味し、例えば、「更新回数は2回まで、通算契約期間は3年までとする」などと記載する必要があります。

契約期間の上限を新設・短縮する場合の説明義務

法改正により、会社は、有期労働契約を締結した後、当該契約の変更時・更新時において、新たに通算契約期間や更新回数の上限を定める場合、または、これらを短縮する(引き下げる)場合は、あらかじめ、その理由を従業員に説明しなければならないとされました(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第1条)。

例えば、契約の当初は、契約期間を1年、通算契約期間を5年(更新回数の上限は4回まで)としていたものの、1回目の更新の際に、通算契約期間を4年(更新回数の上限は3回まで)に短縮する(引き下げる)ような場合がこれに該当します。

【法改正前後の比較】

明示する項目法改正前
(2024年3月31日以前)
法改正後
(2024年4月1日以降)
期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項有期労働契約を更新する場合の基準・有期労働契約を更新する場合の基準
・「更新上限の有無と内容
・(変更時・更新時)更新上限を新設・短縮する場合は理由を説明

無期転換申込権に関する事項の明示

無期転換ルール・無期転換申込権とは

「無期転換ルール」とは、同一の会社と従業員との間で、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、従業員からの申し込みによって、当該労働契約が無期労働契約(期間の定めがない労働契約)に転換されるルールのことをいいます(労働契約法第18条第1項)。

「無期転換申込権」とは、無期転換ルールに基づき、通算5年を超えて雇用された従業員が、期間の定めがない無期労働契約への転換を申し込むことができる権利をいいます。

法改正により、会社は、有期労働契約の更新時において、その契約期間内に従業員に無期転換申込権が発生する場合には、「無期転換の申し込みに関する事項」を明示することが義務付けられます(労働基準法施行規則第5条第5項)。

「無期転換の申し込みに関する事項」とは、例えば、従業員が無期転換申込権を行使する際の申込期限や、申し込んだ場合の転換時期、申込手続などが考えられます。

また、もし契約期間中に対象従業員から無期転換の申し込みがなかったとしても、その従業員が無期転換申込権を有する限り、契約更新の度に、「無期転換の申し込みに関する事項」を明示する必要があります。

無期転換後の労働条件の明示

無期転換後の労働条件(労働時間や賃金など)は、何も取り決めをしていなければ、契約期間に関する事項を除き、有期労働契約を締結していたときと同じ労働条件を引き継ぎます。

ただし、会社が無期転換後に適用される就業規則を作成することなどによって、無期転換後の従業員の労働条件(定年の年齢など)を別に定めることは問題ありません。

法改正により、会社は、契約の更新時において、無期転換権が発生する従業員に対しては、無期転換後の労働条件を明示しなければならないとされました(労働基準法施行規則第5条第5項)。

専門業務型裁量労働制の改正【2024(令和6)年4月1日施行】

法改正の概要

専門業務型裁量労働制について、2024(令和6)年4月1日に労働基準法施行規則などが改正されます。

専門業務型裁量労働制」とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分などを大幅に従業員の裁量にゆだねる必要がある業務について、労使間であらかじめ定めた時間を働いたものとみなす制度をいいます(労働基準法第38条の3第1項)。

専門業務型裁量労働制を継続して導入する会社では、2024(令和6)年3月31日までに、労働基準監督署に対し、協定届の届出を行う必要があります。

法改正の詳細は、次の記事をご覧ください。

【2024年法改正】専門業務型裁量労働制の改正(対象者の同意・同意の撤回手続・健康福祉確保措置の拡充など)を解説

対象業務の拡大(19業務→20業務)

専門業務型裁量労働制は、どのような業務についても適用できるものではなく、法律によって定められた対象業務に限られています。

法律の改正前は、専門業務型裁量労働制は、「19」の業務に限り、導入することができましたが、法律の改正後は、対象業務として「銀行または証券会社における、顧客の合併・買収に関する調査または分析、およびこれに基づく合併・買収に関する考案および助言の業務」が追加されたことにより、「20」の業務が対象となります(令和5年3月30日厚生労働省告示第115号)。

労使協定事項の追加(対象者の同意・同意の撤回手続)

専門業務型裁量労働制を導入するためには、その手続として、会社と、従業員の過半数代表者との間で、労使協定を締結した上で、所定の様式(専門業務型裁量労働制に関する協定届(様式第13号))により、所轄の労働基準監督署に届け出ることが必要です(労働基準法第38条の3第2項)。

法改正により、労使協定の協定事項として、次の事項が追加されます(労働基準法施行規則第24条の2の2第3項)。

法改正により追加される協定事項

  1. 制度の適用に当たって従業員本人の同意を得ること
  2. 制度の適用に同意をしなかった従業員に対して、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないこと
  3. 1.の同意の撤回に関する手続
  4. 1.の同意およびその撤回に関する従業員ごとの記録を、協定の有効期間中および当該有効期間の満了後3年間保存すること

法改正前は、専門業務型裁量労働制を適用する場合に、従業員本人の同意を得ることは要件とされていませんでした。

法改正後は、専門業務型裁量労働制を適用する場合には、従業員本人の同意を得ることが必要になるとともに、従業員が同意をしない場合でも、会社は解雇その他の不利益な取り扱いをしてはなりません。

また、従業員の同意は、一度同意した場合でも、その後、同意を撤回することができるように、撤回のための手続を定めておく必要があります。

健康・福祉を確保するための措置の拡充

専門業務型裁量労働制においては、裁量労働によって働き過ぎにつながるなど、従業員が健康上の不安を感じないように、健康・福祉を確保するための措置を講じなければならないとされています(労働基準法第38条の3第1項第四号、平成15年10月22日基発第1022001号)。

法改正後は、健康・福祉を確保するための措置を講じるにあたっては、①事業場における対象従業員全員を対象とする制度的な措置、および、②個々の対象従業員の状況に応じて講じる措置の分類から、それぞれ1つずつ以上の措置を実施することが望ましいとされています(労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針)。

健康・福祉を確保するための措置

【①事業場における対象従業員全員を対象とする制度的な措置】※下線が法改正により追加

  • 勤務間インターバルの確保(追加)
  • 深夜労働の回数制限(追加)
  • 労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)(追加)
  • 年次有給休暇の連続取得の促進

【②個々の対象従業員の状況に応じて講じる措置】※下線が法改正により追加

  • 一定の労働時間を超える対象従業員への医師の面接指導(追加)
  • 代償休日または特別休暇の付与
  • 健康診断の実施
  • 心とからだの健康問題についての相談窓口の設置
  • 適切な部署への配置転換
  • 産業医による助言・指導、または保健指導の実施

企画業務型裁量労働制の改正【2024(令和6)年4月1日施行】

企画業務型裁量労働制」とは、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するには、その遂行の方法を大幅に従業員の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段および時間配分の決定などに関して会社が具体的な指示をしないこととする業務について、労使の間であらかじめ定めた時間を働いたものとみなす制度をいいます(労働基準法第38条の4)。

企画業務型裁量労働制に関する法改正の内容は、主に次のとおりです。

企画業務型では、専門業務型と異なり、もともと制度の適用に当たって従業員の同意を得る必要がありましたが、法改正により、新たに同意の撤回の手続について、労使委員会の決議が必要となります(下線部分)。

企画業務型裁量労働制の改正内容

【労使委員会の運営規程に次の事項を追加】

  • 対象従業員に適用される賃金・評価制度の内容について、労使委員会に対して行う説明に関する事項
  • 制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
  • 開催頻度を6ヵ月以内ごとに1回とすること

【労使委員会の決議事項に次の事項を追加】

  • 制度の適用にかかる同意の撤回に関する手続
  • 対象従業員に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
  • 同意の撤回に関して従業員ごとに講じた措置の記録の保存

【労働基準監督署に対する報告頻度の変更】

  • 労働基準監督署に対して、労使委員会の決議の有効期間の始期から起算して、初回は6ヵ月以内に1回、その後は1年以内ごとに1回(※)、定期報告を行う(報告事項として、従業員の同意およびその撤回の実施状況を記載する)

(※)改正前は6ヵ月以内ごとに1回

法改正の詳細は、次の記事をご覧ください。

【2024年改正】「企画業務型裁量労働制」とは?制度内容・対象業務・手続(労使委員会)などを解説

化学物質管理者の選任義務化【2024(令和6)年4月1日施行】

法改正の概要

化学物質管理者」とは、化学物質等の管理について必要な能力を有し、事業場における化学物質の管理にかかる技術的事項を管理する者をいいます。

具体的には、化学物質管理者は、ラベル・安全データシート(SDS)などの作成の管理、リスクアセスメントの実施、ばく露防止措置の実施など、化学物質の管理を適切に進める上で不可欠な職務を管理する担当者として位置づけられています。

法改正前(2024(令和6)年3月31日以前)は、化学物質管理者の選任は努力義務とされていました。

法改正後(2024(令和6)年4月1日以降)は、新たな化学物質規制の体系が定められ、その中で化学物質管理者は、事業場の化学物質管理の技術的事項の管理を行う者として位置付けられ、選任が義務付けられました。

法改正の詳細は、次の記事をご覧ください。

【2024年改正】「化学物質管理者」の選任義務化(選任要件・資格要件・職務内容)について解説(労働安全衛生法)

化学物質管理者の選任が義務付けられる事業場

法令の改正により、次に定める事業場ごとに、化学物質管理者の選任が義務付けられます(労働安全衛生規則第12条の5第1項、同第2項)。

化学物質管理者の選任が義務付けられる事業場

  • リスクアセスメント対象物を製造し、または取り扱う事業場
  • リスクアセスメント対象物の譲渡または提供を行う事業場

「リスクアセスメント対象物」とは、法令に基づく「ラベル表示対象物」(労働安全衛生法施行令第18条)、および安全データシート(SDS)による「通知対象物」(労働安全衛生法第57条の2第1項)をいいます。

化学物質管理者は、事業場ごとに選任する必要があり、「事業場」とは、工場、店舗、営業所など、原則として同一の場所にあるものは一つの事業場として捉えられます(昭和47年9月18日発基第91号)。

したがって、化学物質管理者を個別の作業現場ごとに選任する必要はありません。

また、事業場の業種や規模に関する要件はありませんので、業種・規模に関わらず、上記の要件に該当する事業場は、化学物質管理者を選任する必要があります。

化学物質管理の人数については、特に要件は定められておらず、事業場ごとに最低1名を選任すれば足ります。

なお、主として一般消費者の生活の用に供される製品のみを取り扱う事業場においては、化学物質管理を選任する義務はありません。

選任要件(資格要件)

化学物質管理者は、事業場の種類に応じて、次の資格要件を満たす者を選任する必要があります(労働安全衛生規則第12条の5第3項第二号)。

事業場の種類資格要件
リスクアセスメント対象物を製造している事業場化学物質の管理に関する専門的講習を修了した者
上記以外の事業場必要な能力を有すると認められる者 (資格要件なし)

化学物質管理者の職務内容

化学物質管理者の職務には、大きく分類すると次の2つがあります。

  • 自社製品の譲渡・提供先への危険有害性の情報伝達に関する職務(下記1.)
  • 自社の労働者の安全衛生確保に関する職務(下記2.から6.)

具体的には、次の職務が定められています(労働安全衛生規則第12条の5第1項)。

化学物質管理者の職務の内容

  1. ラベル表示、安全データシート(SDS)の確認
  2. 化学物質に関わるリスクアセスメントの実施管理
  3. リスクアセスメントの結果に基づく、ばく露防止措置の選択および実施管理
  4. リスクアセスメント対象物を原因とする労働災害が発生した場合の対応
  5. リスクアセスメントの結果の記録の作成・保存・周知
  6. リスクアセスメントの結果に基づくばく露防止措置が適切に施されていることの確認、労働者のばく露状況、労働者の作業の記録、ばく露防止措置に関する労働者の意見聴取に関する記録の作成・保存・周知
  7. 1.から4.の事項の管理を実施するに当たっての労働者に対する必要な教育

医師の時間外労働の上限規制【2024(令和6)年4月1日施行】

時間外労働の上限に関する一般原則(一般の業種)

労働基準法の定める法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて働くことを「(法定)時間外労働」といいます。

(法定)時間外労働は、36(さぶろく)協定を締結することにより、原則として月45時間以内・年360時間以内を上限として行うことが認められます。

ただし、臨時的な特別の事情がある場合には、36協定で特別条項を定めることにより、月100時間未満(休日労働を含む)、2~6ヵ月平均で80時間以内(休日労働を含む)、年720時間以内(休日労働を含まない)を上限に働くことが認められます(ただし、月45時間を超えることができるのは、1年のうち6ヵ月まで)。

医師への適用猶予の終了

一般の業種については、大企業は2019(令和元)年4月1日から、中小企業は2020(令和2)年4月1日から、上限規制が適用されていますが、医師については、2024(令和6)年3月31日まで上限規制の適用が猶予されていました。

そして、2024(令和6)年4月1日以降は、医師について、3つの分類に基づく上限規制が適用されます。

原則の上限時間(月45時間以内・年360時間以内)については、一般の業種と同じです。

原則の上限時間を超える場合、一般の勤務医はA水準、地域医療確保のために長時間労働が必要となる医師はB水準、初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医などはC水準とされ、それぞれ次のとおり時間外労働の上限規制が適用されます。

水準対象時間外労働の上限
A水準医業に従事する一般の医師
(診療従事勤務医)
年960時間以内(休日労働含む)
月100時間未満(休日労働含む)
(例外あり)
B水準
(B、連携B)
地域医療確保暫定特例水準
(救急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関)
年1,860時間以内(休日労働含む)
月100時間未満(休日労働含む)
(例外あり)
C水準
(C-1、C-2)
集中的技能向上水準
(初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医や、高度技能獲得を目指すなど短期間で集中的に症例経験を積む必要がある医師)
年1,860時間以内(休日労働含む)
月100時間未満(休日労働含む)
(例外あり)

いずれの水準についても、月の上限時間である100時間を超える場合には、「面接指導」と「就業上の措置」を実施することが義務付けられており、B水準およびC水準では、これに加えて「健康確保措置」を実施することが義務付けられます(A水準では努力義務)。

「健康確保措置」とは、月の上限時間を超えて働く医師に対して、28時間の連続勤務時間制限を設け、さらに勤務間インターバルを9時間確保したうえで、代償休息を付与する措置をいいます。

法改正の詳細は、次の記事をご覧ください。

【2024年法改正】医師の時間外労働の上限規制(36協定)の適用(医師の働き方改革)について解説

建設業の時間外労働の上限規制【2024(令和6)年4月1日施行】

時間外労働の上限規制(前述)について、建設業では2024(令和6)年3月31日までは適用が猶予されていましたが、2024(令和6)年4月1日以降は、建設業においても、一般の業種と同じく上限規制が適用されることとなります。

ただし、建設業のうち「災害の復旧・復興の事業」については、特別条項を定める場合に適用される、「月100時間未満」と、「2~6ヵ月平均80時間以内」の上限を適用しないこととされています。

運送業(自動車運転者)の時間外労働の上限規制【2024(令和6)年4月1日施行】

時間外労働の上限規制(前述)について、運送業では2024(令和6)年3月31日までは適用が猶予されていましたが、2024(令和6)年4月1日以降は、運送業においても、上限規制が適用されることとなります。

ただし、その内容は、一般の業種と比べて次のとおり異なります。

 一般の業種運送業(自動車運転者)
原則・月45時間以内
・年360時間以内
・月45時間以内
・年360時間以内
特別条項・月100時間未満(休日労働を含む)
・2~6ヵ月平均で80時間以内(休日労働を含む)
・年720時間以内(月45時間超は6ヵ月まで)
年960時間以内

運送業の年間の上限時間(960時間)については、一般の業種と異なり、月45時間超の時間外労働を6ヵ月までとする規制は適用されません。

なお、運送業であっても、運行管理者、事務職、整備・技能職、倉庫作業職など、ドライバー以外の業務に従事する従業員は、一般の業種の上限規制に従う必要があります。

法改正の詳細は、次の記事をご覧ください。

【2024年改正】運送・物流業の改善基準告示(タクシー・トラック・バス)の改正と2024年問題について解説

改善基準告示(運送業)の改正【2024(令和6)年4月1日施行】

運送業においては、時間外労働の上限規制の適用と同じ2024(令和6)年4月1日に、改善基準告示が改正されるため、併せて対応が必要となります。

「改善基準告示」とは、正式には「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」として、トラックなどの自動車運転者について、労働時間等の労働条件の向上を図るため、1989(平成元)年に大臣告示として制定された基準をいいます(平成元年労働省告示第7号)。

タクシー・バス・トラックの業態の違いによって基準の内容は異なりますが、共通した改正点としては、拘束時間が短縮され、休息期間が延長されています。

拘束時間(始業から終業までの時間(休憩時間含む))

 法改正前法改正後
トラック・年3,516時間以内
・月293時間以内
・1日原則13時間以内(最大16時間/15時間超は週2回まで)
・年3,300時間以内
・月284時間以内
・1日原則13時間以内(最大15時間/14時間超は週2回まで)
(長距離貨物運送の例外あり)
バス・4週平均で1週65時間以内(年換算すると年3,380時間、月換算すると月281時間)
・1日原則13時間以内(最大16時間/15時間超は週2回まで)
・①②のいずれかを選択
①年3,300時間かつ月281時間以内
②4週で平均1週65時間以内(現行どおり)
・1日原則13時間以内(最大15時間/14時間超は週3回まで)
タクシー(日勤)・月299時間以内
・1日原則13時間以内(最大16時間)
・月288時間以内
・1日原則13時間以内(最大15時間/14時間超は週3回まで)

休息期間(勤務と勤務の間の時間)

 法改正前法改正後
トラック継続8時間以上継続9時間以上(11時間以上与えるよう努める)
(長距離貨物運送の例外あり)
バス継続8時間以上継続9時間以上(11時間以上与えるよう努める)
タクシー(日勤)継続8時間以上継続9時間以上(11時間以上与えるよう努める)

運転時間

 法改正前法改正後
トラック2日平均:1日9時間以内
2週平均:1週44時間以内
現行どおり
バス2日平均:1日9時間以内
4週平均:1週40時間以内(労使協定により、1週44時間まで延長可)
現行どおり
タクシー(日勤)

連続運転時間

 法改正前法改正後
トラック4時間以内
(運転の中断は1回10分以上、合計30分以上の運転離脱)
・現行どおり(ただし、運転の中断は1回が概ね10分以上で、合計30分以上の原則休憩)
・SA・PA等に駐停車できない場合、4時間30分まで延長できる
バス4時間以内
(運転の中断は1回10分以上、合計30分以上)
現行どおり(ただし、高速道路は2時間以内とするように努める)
タクシー(日勤)

トラックの運転中断時間について、改正前は単に運転を離脱していれば、運転以外の作業(荷下ろしなど)や待機などの労働が可能でしたが、改正後は「原則休憩」に変更されました。

一方で、運転中断時間については、「1回10分以上」から「1回が概ね10分以上」の表現に変更されており、10分未満の運転の中断が3回以上連続しないようにする必要があります。

さらに、トラックについては、サービスエリア・パーキングエリアなどに駐停車スペースがなく、やむを得ず連続運転時間が4時間を超えてしまうケースがあることから、運送現場の実情を考慮し、このような場合には連続運転時間を4時間30分まで延長することを認めました。

障害者雇用率の引き上げ・短時間勤務の障害者にかかる実雇用率の算定基準の変更【2024(令和6)年4月1日施行】

障害者雇用率の引き上げ

国、地方公共団体、民間企業は、障害者雇用促進法に基づき、その雇用する従業員について一定の割合(法定雇用率)に相当する数以上の障害者を雇用することが義務付けられています。

2024(令和6)年3月31日までは、民間企業での障害者の法定雇用率は2.3%とされていましたが、2024(令和6)年4月1日以降は、2.5%に引き上げられます(なお、2026(令和8)年7月1日以降は、2.7%に引き上げられる)。

これに伴い、障害者を1人雇用しなければならない事業主の範囲が、2024(令和6)年4月以降は「従業員数40人以上」となります(なお、2026(令和8)年7月以降は、「従業員数37.5人以上」となる)。

短時間勤務の障害者の実雇用率の算定基準の変更

障害者雇用率の算定において、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間勤務の障害者については、1人あたり0.5人としてカウントします。

これまでは、1週間の所定労働時間が20時間未満であれば、障害者雇用率の算定においては雇用人数に含めることができませんでしたが、2024(令和6)年4月1日以降は、1週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満の短時間勤務の障害者(ただし、精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者に限る)についても、実雇用率の算定において雇用人数に含めることができ、算定においては、1人あたり0.5人としてカウントします。

健康保険・厚生年金保険の適用拡大【2024(令和6)年10月1日施行】

2024(令和6)年10月1日施行の法改正により、社会保険の被保険者数が51人以上の会社を対象に、正社員の4分の3に満たない時間働くパート・アルバイトなどであっても、以下の要件を満たす場合には、健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱い、社会保険に加入することが義務付けられます。

短時間労働者の社会保険の加入要件

  1. 特定適用事業所に使用されていること
  2. 報酬が月額88,000円以上であること
  3. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  4. 雇用期間が2ヵ月を超えることが見込まれること
  5. 学生でないこと

1.の要件である「特定適用事業所」とは、2024(令和6)年9月30日までは、社会保険の被保険者数(従業員数ではありません)が常時101人以上の事業所をいい、2024(令和6)年10月1日以降は、社会保険の被保険者数が常時51人以上の事業所が該当することとなります。

高年齢雇用継続給付の支給率の引き下げ【2025(令和7)年4月1日施行】

60歳以上の従業員を再雇用する場合において、一定の要件(60歳時点の賃金額の75%未満)を満たした場合には、雇用保険から「高年齢雇用継続給付」が支給されます。

高年齢雇用継続給付は、法改正前(2025(令和7)年3月31日以前)は、65歳に到達するまでの期間において、60歳以後の各月の賃金の15%が支給されていますが、2025(令和7)年4月1日以降は、この給付率が15%から10%に引き下げられます